設計者の手を止めない シギヤ精機製作所に学ぶ設計環境の刷新:日本HPワークステーション導入事例
円筒研削盤メーカーのシギヤ精機製作所は、3D CADデータの読み込み時間や操作レスポンスの改善を目的にワークステーションのリプレースに踏み切った。同社は日本HPの体験型ショールーム「HP Customer Welcome Center Tokyo(CWC)」を活用し、業務で使用している設計データを用いて複数のワークステーションを比較検証した。同社が重視した評価ポイントとCWC活用のメリットを紹介する。
設計データの大規模化/高度化が進む中、それを支える設計環境、とりわけワークステーションの性能は、設計業務の効率を左右する重要な要素となっている。こうした背景から設計環境の見直しに取り組んだのが、円筒研削盤メーカーのシギヤ精機製作所だ。
複雑化する3D設計、既存ワークステーションの限界
シギヤ精機製作所は、1911年に織機メーカーとして広島県福山市で創業し、1958年に工作機械メーカーへ事業転換した。現在は円筒研削盤の専業メーカーとして製品開発/製造を手掛けている。
同社の設計現場では長らく2D CADを運用してきたが、設計データとEBOMの管理が分断されていた。そのため設計者が手作業で情報を突き合わせる場面も多く、業務負荷が大きいという課題があった。そこで2000年代後半からミッドレンジCADの調査を開始し、大塚商会の支援の下、2011年に3D CAD「Autodesk Inventor」(以下、Inventor)を導入した。
導入後は設計データの3D化を段階的に進め、新規開発案件では3D設計を基本とする体制を構築。既存機種の設計資産の3Dモデル化や運用ルールの整備も進め、設計現場での活用を広げてきた。開発案件は2014年ごろから100%3D設計で進めており、既存機種のカスタマイズ設計も現在90%以上が3D設計となっている。さらにEBOMからMBOMへの連携も進み、設計から製造につながるデータ活用の基盤も整いつつある。
こうして設計の3D化が進むにつれ、扱う設計データの規模も拡大していった。それに伴い、設計環境の性能が業務効率に与える影響も無視できないものとなっていた。加えて、同社が7年前に導入したワークステーションの保守切れの懸念もあり、これを機にリプレースを決断した。
処理速度とコストパフォーマンスのバランスを重視
ワークステーションの選定に当たり、シギヤ精機製作所が重視したのはInventorの処理速度と操作レスポンスである。同社の設計では、部品点数で2000〜3000点、全体では1万点弱に及ぶ大規模なアセンブリデータを扱うこともある。
同社 技術部 開発課 主任の小谷拓也氏は「特に2D CADを使っていたメンバーからは『ファイルを開くのが遅い』という声が多くありました。測定したところ従来環境では、ファイルを開くまでに最大40数秒かかり、作業効率の低下につながっていました。編集時のレスポンスも十分とはいえず、設計作業を妨げてしまう状況でした」と振り返る。
さらに同社 技術部 開発課 課長の松本耕氏は、ワークステーション選定ではコストパフォーマンスも重要な判断基準だったと説明する。
「近年、ワークステーションの価格は上昇しており、今回は数十台というまとまった投資になります。工作機械メーカーは景気の影響を受けやすい業界でもあり、設備投資には慎重にならざるを得ません。そのため、性能とコストのバランスも重要です」(松本氏)
体験型ショールーム「CWC」で4機種を比較検討
こうした条件を踏まえ、シギヤ精機製作所は候補となる複数のワークステーションのパフォーマンスを比較検証することにした。その場として活用したのが、日本HPの体験型ショールーム「HP Customer Welcome Center Tokyo」(以下、CWC)である。
CWCは日本HP本社(東京・品川)に併設された体験型ショールームだ。業務データやアプリケーションを持ち込み、実利用に近い環境でワークステーションの性能を確認したり、最適な構成を具体的に検討したりできる。
今回、同社の要望を受けて、日本HPが候補となるワークステーション(4機種)を用意した。小谷氏がCWCを訪問し、日常業務で使用している3D CADデータを用いて、読み込み時間や操作レスポンスなどを検証した。旧環境および候補機種の主な構成は図1の通りである。
これらの機種を候補に選定した理由について、日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーションビジネス開発部 部長の若宮明日香氏は「それまでタワー型の『HP Z2 Tower Workstation』を利用されていたため、その後継モデルを中心に選定しました。最新のインテル(R) CoreTM Ultraプロセッサーシリーズを搭載したモデルに加え、上位機種も用意しました。また、モバイルワークステーションや小型デスクトップモデルもそろえ、用途の異なる構成を比較できるようにしました」と説明する。
検証では、日常業務で使用している約9000部品規模のアセンブリデータを用い、ファイルを開くまでの時間やアセンブリ編集時のレスポンスを確認。CPUやGPU、メモリ構成の違いによる性能差を比較した。
検証結果と予算面を踏まえ、最終的に採用したのが従来機の後継モデル「HP Z2 Tower G1i Workstation」だ。3D CADではアセンブリの読み込みや形状編集など、単一スレッド性能の影響が大きい処理も多い。同機はCPUにインテル(R) CoreTM Ultra 7 プロセッサー 265(最大5.3GHz/20コア/30MB/6400MHz)を搭載し、高い単一スレッド性能を備える。
検証結果について小谷氏は「ファイルオープンにかかる時間は従来環境と比べ、およそ半分まで短縮できることが分かりました。一方、メモリは容量を増やせば必ずしも性能が向上するわけではなく、設計データの規模や利用状況に応じた適切な構成を選ぶことが重要だと実感しました。コストと機能のバランスを考慮した構成を選定し、この機種に決めました」と述べる。
性能に加え、信頼性の高さも選定の決め手に
今回採用したHP Z2 Tower G1i Workstationを含め、HPのワークステーションは性能だけでなく信頼性の高さも定評がある。シギヤ精機製作所では現在、HPのワークステーションを約50台運用しているが、7年程度使用している機種でも大きな故障はほとんど発生していないという。
「そのため、リプレースの候補もHPのワークステーション一択でした。メモリ交換のために従来機の筐体を開けた際、内部にホコリがほとんどたまっていませんでした。こうした面からも信頼性の高さを感じています」(小谷氏)
HPではワークステーション専任の開発部門を設け、一般的なPCとは別の体制で製品を設計しているという。若宮氏は「設計者の業務を止めないことを最も重視し、『止まらない環境を作る』というコンセプトの下、部品選定から設計思想までワークステーション専用の基準で開発しています。この体制はグローバルでも共通しており、長年利用している顧客の声も開発に反映しています」と説明する。
検証比較の数値化に役立つ CWC(体験型ショールーム)の活用
CWCを活用するメリットについて、若宮氏は担当者が実際に体験しながら導入判断を行える点にあると強調する。
「ワークステーションの選定では既存機種の後継モデルをそのまま導入するケースも少なくありません。しかし本来は業務内容やユーザーによって必要なスペックは異なります。CWCでは複数の機種を実際の業務データで比較し、性能を数値として確認できます。その結果を投資対効果(ROI)の説明に活用するなど、社内の意思決定材料としても役立てることができます。また、CWCまで来られないお客さま向けには、当社が訪問して同様の体験を提供いたします(HP Workstation Touch&Try)」(若宮氏)
実際にシギヤ精機製作所でも、CWCでの検証結果が経営層への説明に役立ったという。
「機種選定から発注までスムーズに進めることができました。CWCでの検証結果という客観的な根拠を示せたことが、上層部の理解につながったと感じています」(松本氏)
同社では現在、Inventorの「iLogic」を活用し設計業務の自動化を進めている。設計のルール化やパラメーター変更など定型化できる作業をシステム化することで設計者の負担を減らし、業務効率の向上につなげる狙いだ。今後は新たなワークステーションの性能も生かしながら、さらなる効率化を図っていく考えである。
設計データの大規模化が進む中、設計者の作業効率を左右する基盤としてワークステーションの重要性は今後より一層高まっていく。
こうした設計環境の高度化を支える日本HPの取り組みについて、若宮氏は「ISVベンダーや販売代理店とも連携しながら、新しいソフトウェア機能やワークロードに必要なスペックの検証を進め、お客さまの業務に適した設計環境や情報を提供していきたいと考えています。近年は製造業でも、社内の機密データを外部に出さずAI(人工知能)を活用したいというニーズが高まっています。HPでは、独自の画像圧縮技術で定評のあるリモートグラフィックスソフトウェア(RGS)やGPUのリソースを組織内で柔軟に分配する仕組み(HP Z Boost)でAIや開発環境の処理向上を実現するソフトウェアなど、ハード/ソフトの両面から設計者の手を止めない環境づくりを支援していきます」とアピールする。
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提供:株式会社日本HP
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年5月20日













