3D CADユーザーがどこでも設計業務を行うための“武器”には何が必要か:検証レポート
コロナ禍で広がったリモートワークの動きが設計業務にも広がり続けている。ただ、高いコンピューティング能力が必要な設計やシミュレーションなどの作業が「本当にリモートワークで可能なのか」について、多くの設計者は不安に感じていることだろう。そこで本稿では、設計者向けモバイルワークステーションとして日本HPが2023年春にリリースした「HP ZBook Power 15.6 inch G10」を現役の3D CADエンジニアが検証した。
設計者に自由な環境を――。働き方改革やコロナ禍によって設計者のハイブリッドワーク化が進んでいる。オフィス内でも、会議室でデザインレビューを行うといったように設計者にも機動力が必要なシーンが増えている。マシンスペックや機密情報保持の問題から、従来は設計者の業務環境は固定され、決まった場所、決まったマシンで行うのが当たり前だった。これらの状況を変えられるようになった要因の一つとして、モバイルワークステーションの進化がある。
ただ、多くの設計者は「本当に設計業務に問題なく使えるのか」という点を懸念していることだろう。そこで本稿では、ソリッドワークス・ジャパン・ユーザー会(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーを務める土橋美博氏(プレマテックの技術部 専任部長)に、日本HPが2023年春に投入したモバイルワークステーション「HP ZBook Power 15.6 inch G10」を使ってもらい、設計業務におけるリアルな検証を行った。
HP ZBook Power 15.6 inch G10は開発設計環境にふさわしいのか
HP ZBook Power 15.6 inch G10は、1台で高負荷業務までこなせる性能を実現したモバイルワークステーションだ。同製品はHP ZBook G10シリーズの中でも特に製造業での3D CAD、AEC(建築、エンジニアリング、建設)での利用を想定しており、多くのユーザーを獲得している。
今回、土橋氏には約2週間にわたり実運用評価やベンチマークテストなど各方面からレビューしてもらった。土橋氏は「3D設計/製造ソリューション『SOLIDWORKS』の年次ユーザーイベント『3DEXPERIENCE World 2023』などを見ても、設計環境の機動性を高めるテーマが数多く紹介されていました。クラウドなども組み合わせていつでも、どこでも、どんなデバイスでも使用できる環境が求められています」と述べる。
ただ、マシンスペックの問題などもあって従来の設計環境は“自由”を求めるのが難しかった。「設計者にとってワークステーションは常に一緒にあり、業務を行う“武器”のようなものです。描画能力や高速処理などの性能面はもちろんですが、安定性や信頼性なども重要です」と土橋氏はポイントを説明する。
そこで、まずHP ZBook Power 15.6 inch G10が開発設計業務に堪えるかをベンチマークテストで確認した。テストにはSOLIDWORKSの評価ツール「SOLIDWORKS Rx」を使用し、「図面を開く」「3Dモデルの再構築」「(3モデルの)回転と拡大表示」「レンダリング」「拡大表示とパニング」「シミュレーション」でパフォーマンスを確認した。
その結果、十分なパフォーマンスを有していることが証明された。土橋氏は「この数値だけを見てもパフォーマンスは十分だと言えます。実際に使用した感覚としても、さまざまな作業がサクサクと動き、パフォーマンスに問題を感じる状況はありませんでした」と語る。
移動中もワーケーションスペースでも問題なく使用可能
さらに、最新版の「SOLIDWORKS 2023 SP3.0」を用いたアセンブリモデルからの3DビュワーデータやeDrawingsファイルの作成、「PhotoView 360」によるレンダリング、製品性能目標を満たす理想的なジオメトリの適合を自動的に行いトポロジー最適化を行うために静解析を繰り返す「トポロジースタディ」、プラットフォームでの実運用評価をモバイル環境で実施。ワーケーション施設、列車内、オフィス内などさまざま環境下で開発設計作業を試みた。「モバイルワークステーションを使うことを考えると、パフォーマンスはもちろんですが機動性も重要になってきます」(土橋氏)
実機レビューを終えて、土橋氏は「さまざまな場所で設計、ビュワーデータ作成、レンダリング、シミュレーションといった開発設計環境における実運用を行いましたが、特に問題を感じませんでした。どんな場所でも設計や解析作業を快適に行えました。設計以外の事務作業やWeb会議への参加など、一般的なモバイルPCとしての機能も問題なく使えたことも魅力に感じました。デスクトップワークステーションと比べても遜色なく、場所を選ばずに働きたいという人間にとってはありがたい環境になってきました」と評価した。
モバイルながら必要なパワーを持ちB2Bでの信頼性を発揮
この結果について日本HP パーソナルシステムズ事業本部バリュービジネス部 部長の大橋秀樹氏は「設計環境の変化に合わせて進化したモバイルワークステーションの可能性を十分に評価いただけた」と手応えを語る。
「今回評価いただいたHP ZBook Power 15.6 inch G10は、GPUにNVIDIAの最新のNVIDIA RTX 2000 Ada generationを、CPUに第13世代のインテルCore i7プロセッサを搭載しており、部品点数の多いアセンブリ設計やレンダリングなどのパワーが必要な作業にもしっかり対応できます。これまでノート型は動作中の熱処理が課題だといわれてきましたが、より効率的な冷却機構の開発などにより、業務用途で安定したパフォーマンスを発揮できるようになっています」(大橋氏)。米国国防総省が制定した品質基準「MIL規格」に準拠し、モバイルワークステーションに求められる高い堅牢(けんろう)性と信頼性も確保している。
モバイル環境ではデータ漏えいなどセキュリティ面の懸念もあるが、HP ZBook Power 15.6 inch G10はHP独自のエンドポイントセキュリティソリューション「HP Wolf Security for Business」を標準搭載している。複雑な設定や登録は不要で、電源を入れた瞬間からバックグラウンドで稼働し、システム基盤、アプリケーション、外部システムといったOSの上、中、下の各層を保護する。その中の「HP Sure Click」は、アプリケーションで使用するファイルを全てマイクロ仮想マシン内で実行するため、マルウェアが侵入したとしてもタスク終了と同時に仮想マシンごと消滅させられる。HP Sure Clickは全世界で100億以上のマイクロ仮想マシンを生成しているが、被害報告は1件も寄せられていないという信頼性の高さだ。
HPは40年以上にわたりワークステーション専門の事業部で開発から設計まで行っているため、ワークステーション専用設計を採用していることが強みだ。設計業務で使用するCADやCAEなどのソフトウェアベンダーとの関係性を構築できているため、これらのベンダーと協力して「設計者に最適なワークステーション」を構築できる。SOLIDWORKSを含む各CADベンダーの認定も取得しており、「現在でも情報交換しながらソフトウェアのパフォーマンスの部分にまで踏み込んで安定した稼働を担保しています」と大橋氏は訴える。
設計環境の働き方に合わせたハードウェアとソフトウェアを用意
設計環境でこのような「働き方改革」を実施するためには、ワークステーションの選定だけでなくさまざまなシステムや制度などの変革が必要だ。こうした動きをトータルでサポートしているのが大塚商会だ。
製造業の数多くの設計環境を支援してきた大塚商会は、顧客のニーズに合わせてハードウェアからCADなどのソフトウェア、回線、セキュリティまで、設計環境に関わるソリューションを提供している。大塚商会 マーケティング本部 CADプロモーション部 製造プロモーション課 係長の山内僚介氏は「コロナ禍以降、設計者も場所にとらわれずに働けるようにしようとする企業が増えています。ただ、それに伴ってさまざまな製品やソリューションが出てきており、どれを選ぶべきか悩ましいという声も聞きます。その中で大塚商会は『オフィスまるごと大塚商会』というキャッチコピーの通り、オフィスに必要なハードやソフトをお客様に合わせてご提供しています」と語る。
大塚商会は日本HPを含む豊富なワークステーション製品を扱う他、SOLIDWORKSの国内正規販売店として27年連続で販売数1位となっている。「大塚商会はワークステーションの知見だけでなく、SOLIDWORKSなどのCADの豊富な知見も備えています。SOLIDWORKSがバージョンアップした際に、それに見合うスペックのワークステーションを併せて提案することも可能です。こうした動きは両方に精通する大塚商会ならではの特徴だと考えています」と山内氏は述べる。
コロナ禍を経て、設計者の働き方も転換期を迎えている。設計環境を見直し、「設計者に自由な働き方」を提供しようとする製造業にとって、豊富なモバイルワークステーションをそろえている日本HPとそれを踏まえた商材提供やアドバイスをしてくれる大塚商会のコラボレーションは、実に頼もしい存在だと言えるだろう。
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提供:株式会社日本HP、株式会社大塚商会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年12月12日