かつてない自律性能で清掃を省人化 最先端床洗浄ロボットはどこまでできる?:サービスロボット
人手不足が叫ばれる清掃業界の救世主として、ケルヒャーが2023年4月16日に同社初の床洗浄ロボット「KIRA B 50」をリリースした。他とは一線を画す高い「自律化」を掲げるこのマシンの新技術やユーザーメリットを聞いた。
少子高齢化や人口減少に伴う労働力不足にさまざまな業界が直面しており、清掃業界でも深刻さが増している。清掃業界は、体力的負担の大きさなどからも敬遠される傾向にあり、慢性的な人手不足に陥っている。それに加え、賃金水準の上昇に伴う施設メンテナンス会社への外注コスト増大によって清掃を内製化したいというニーズが高まっている。働き方改革の加速や清潔さ、衛生に対する透明性の担保など、企業姿勢の変化も起き始めている。
清掃業界におけるこれらの課題の解決策として期待が寄せられているのが、ロボットによる清掃の自動化だ。「自律移動」「自律走行」可能なロボットが人間の代わりに清掃することで、人間はより高度で複雑な業務に集中できる。ロボットを採用することで教育などの人事労務の低減、清掃品質の標準化や向上、事故や破損の減少なども図れる。生産性の向上やコスト低減、企業イメージや従業員満足度の向上など、企業側にとってもメリットが多い。
これらの社会情勢や企業経営の課題を背景に、ケルヒャーは同社初のロボット床洗浄機「KIRA B 50」を2023年4月16日リリースした。同社が得意とする床洗浄機能と最先端のロボット機能を搭載し、他とは一線を画す高い「自律化」を掲げるこのマシンに搭載されている新技術やユーザーメリットについて聞いた。
「顧客中心主義」を経営理念に、ニーズに合わせた機器を開発
ケルヒャーはドイツで生まれた世界最大手の清掃機器メーカーだ。1935年にアルフレッド・ケルヒャー氏が創立して以来成長を続け、現在では世界73カ国に130の拠点、約1万5000人の従業員を擁している。
売上高は近年右肩上がりで推移しており、2020年にはグローバルで約4000億円の売り上げを記録した。ドイツをはじめ英国やフランスなどの国々では「高圧洗浄機で洗うこと」の同義語として「ケルヒャー」が辞書にも登録されており、日常的に口語としても使用されているほど知名度は高い。
ケルヒャーは顧客中心主義を経営理念とし、市場のニーズに合わせて革新的な技術開発を続けてきた。製品の開発サイクルも速く、2020年だけで43の新製品を世に送り出した。現在は高圧洗浄機をはじめ床洗浄機、スイーパー、乾湿両用バキュームクリーナー、スチームクリーナーなど3000種類の清掃機器と清掃機器に関わる640の特許を有している。特に業務用商材は「人々の日常業務をより楽に、より良く、より持続可能なものに」をスローガンに掲げて開発を進めている。
高度な自律性能で他と一線を画す「KIRA B 50」
そんなケルヒャーが世に送り出した床洗浄ロボットがKIRA B 50だ。
水を使ってローラーブラシでこすり洗いして汚水を回収するタイプの床洗浄ロボットで、2000m2以上の中・大面積を効率的に清掃できる。外形寸法は奥行き1062×幅760×高さ1161mmとコンパクトながら、タンク量は浄水、汚水ともに55リットル、最大稼働時間は3.5時間、自動運転時の最大洗浄面積は2365m2/hと非常にパワフルだ。
オプションのドッキングステーションは、本体との自動接続によって浄水の給水と汚水の排水、充電、汚水タンク内の洗浄を行う。このステーションを複数設置することにより、1台でもステーションを経由しながら広範囲の清掃が可能だ。
KIRA B 50の最大の特徴はかつてないレベルの自律性能を持つことだ。従来の床洗浄ロボットは作業中に起きたエラーに対応する人員を用意する必要があるなど、手離れが悪いケースも散見された。
ケルヒャー ジャパンのマーケティング&プロダクト本部 業務用プロダクト部 エキスパートの齋藤幹夫氏は「われわれは、ロボットがロボットとしてきちんと動作する“自律領域”を100%に近づけるよう技術開発を重ねてきました。KIRA B 50はお客さまの手間をより少なくして清掃していただける最高レベルのオートメーションを実現しています」と語る。
この「自律性」を実現するため、KIRA B 50には多くの最先端機能と技術が搭載されている。
視野についてはLiDAR(Light Detection And Ranging)、超音波、3Dカメラセンサーという3種のセンサーを搭載し、瞬時に360度ビューを作成する。対象物および自位置を補足でき、ガラスや突出した障害物なども容易に判断できる。LiDARは本体の前後と上部に搭載しており、斜め下方をチェックする。通常であれば「壁」と認識されてしまう最大6%の斜度があるエリアも清掃できるなど、より広い稼働エリアを実現した。
家庭用のロボット掃除機とは異なり、業務用のロボット洗浄機はどのルートをどういう手順で掃除するのかをあらかじめインプットするマッピング工程が必要だ。KIRA B 50のマッピング方法にはターンが多い通路向けに手動洗浄で動きを教える「ティーチング機能」と障害物が少ない広いエリア向けに囲ったエリアの中を自動的に穴埋めする「スマートフィル機能」の2つがあり、適した方法を選んでマッピングできる。大画面のタッチパネルを備えており、直感的な操作で洗剤の有無や立入禁止区域の設定などの変更が可能だ。
本体後ろ側にもセンサーを搭載しており、状況に応じてバックして障害物を回避できる。
ケルヒャー ジャパン マーケティング&プロダクト本部 業務用プロダクト部 エキスパートの小島博氏は「障害物に進路がふさがれた際、通常のロボットではお手上げになってしまいます。KIRA B 50は自分と相手のサイズ感を測って止まり、バックして回避ルートを自ら作ることができます。これが非常に大きなポイントで、うっかり物を置いたまま清掃させてしまった場合や突然のレイアウト変更にも対応できます」と説明する。
ケルヒャーが培った信頼性の高い床洗浄機能
洗浄機能については、ケルヒャーが培ってきた自動床洗浄機に関する技術を結集している。ローラーブラシのスイープ機能によって除じん作業と洗浄作業を同時に行えるので、洗浄前の除じん作業を低減できる。壁際のほこりはサイドブラシで回収する。自動運転時の壁からの最短距離は100mmと、かなり際の部分まで清掃可能だ。
床洗浄ロボットの中には既存の床洗浄機を流用し、CPUなどを後付けしてロボットと銘打つものも多かった。しかし、KIRA B 50はロボット専用の開発を行っており、それによってコンパクトで小さな半回転径を実現している。洗浄ユニットと汚水の回収ユニットの距離を縮めることで小さい回転半径でも汚水の残水を少なくし、仕上げの手作業を低減した。メンテナンスフリーで高寿命、高性能なリチウムイオンバッテリーを搭載しており、充電器を内蔵しながらもコンパクトボディーを実現している。
自社開発のOSを搭載、発表を遅らせ安全性を向上
KIRA B 50に搭載されているOS(Operating System)は、ケルヒャーが自社開発している。
これについてケルヒャー ジャパン サービス本部 テクニカルサポート&ビジネスディベロップメント マネージャーの柴田克之氏は「別の会社が作ったOSをロボットに搭載する場合は、トラブル時に機械側の問題なのかOS側の問題なのかの切り分けから始める必要があり、修理するまでの時間が長くなります。われわれは本社のサポートセンターとダイレクトにつながっており、何かあった場合は本社の解析を含めて早い段階でお客さまに回答をお出しできます」と強調した。
齋藤氏は「KIRA B 50にはLiDERという自動車の自動運転にも用いられる技術が搭載されているのですが、この5年間でその技術が格段に進化しました。高性能なCPUを搭載するなど、この5年間のアップデートによってさらにスペックを高めて市場に参入しています」と説明する。KIRA B 50は国際ロボット安全規格認証も取得済みだ。
3つのアフターサービスパッケージ
KIRA B 50は、ロボット本体とアフターサービスを併せて契約するビジネスモデルとなっている。購入方式は買い取り、リース、レンタルから選択可能だ。アフターサービスは「KIRA Basic」「KIRA Care」「KIRA Care Plus」の3種類があり、安全点検/整備の回数や代替機器の有無にその違いがある。
KIRA Care Plusでは「KIRAサクセスマネジメント」も提供される。これは清掃場所に応じた最適な清掃ルートや清掃手順などのコンサルティング、ソフトウェアアップデートのトレーニングなどをケルヒャーのグローバルな知見を生かして行うものだ。
「自律型」清掃ロボットの導入で日本に変化を
KIRA B 50は既に欧州を中心に販売を開始しており、多くの現場で稼働している。そして、“よいロボットの日”をかけた2023年“4月16日”から日本向けの展開を開始した。齋藤氏は「日本での展開はチャレンジだと思っています。ロボット導入に伴う賃金の在り方や労働力の効率的な配置方法も併せて変えない限り、業界を問わず日本ではロボットの普及が大きく進まないと見ています。どんな企業にとっても不可欠な“掃除”を担うロボットを普及させることで、日本という国の土台に変化を起こせると考えています」と期待を寄せた。
人口減少が進む日本では、どの業界でもさらなる人手不足が進むことは間違いない。清掃業界でも、これまで人が担ってきた役割をロボットが肩代わりすることが期待されている。自律的な清掃ロボットのニーズはますます増していくことだろう。実用的かつコンパクトな中・大型サイズの床洗浄ロボットの導入を検討しているのであれば、清掃機器専門メーカーの知見と高度なロボット技術が搭載されたケルヒャーのKIRA B 50は、有力な選択肢になるはずだ。
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提供:ケルヒャー ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年5月11日