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北国のライフライン「灯油」を見守るIoT、2日間でシステム構築できた理由とはsakura.io採用事例

IoTに対する期待は多方面で高まっているが、システム構築や運用に費やす多大なコストや工数から採算が合わず、断念せざるを得ないケースが少なくない。そこに一石を投じたのが、さくらインターネットのIoTプラットフォームサービス「sakura.io」だ。ベンチャー企業・ゼロスペックの「灯油タンク残量計測サービス」の立ち上げでも、その実力を遺憾なく発揮した。

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寒冷地では「灯油」がライフライン

 都市部に暮らしているとライフラインと聞いて思い浮かぶのは、電気、ガス、水道といったところだが、寒冷地では少し事情が異なる。暖房や給湯、融雪などのために大量の熱量が必要で、そこには一般的に灯油が使われているのだ。各家庭に大容量の灯油タンクが設置され、消費状況を見ながら近隣のガソリンスタンドなどの事業者から随時配送が行われている。万が一にも灯油タンクが空になってしまうと生活が立ち行かなくなり、最悪の場合には生命の危機にもつながるだけに、こうした灯油の配送体制は住民にとってまさにライフラインとなっている。

 だが、この重要なライフラインを担っている事業者にとって、経営を支える盤石な基盤は必ずしも確保できていないのが実情だ。広域に点在する各戸をタンクローリーなどの配送車でくまなく巡回したにもかかわらず、結果的に給油量が少なければ採算が取れなくなってしまう。

 そこに着目したのが、情報通信ソリューションベンチャーのゼロスペックである。同社の最高技術責任者である金子惠一氏は、「IoTの仕組みを導入し、各家庭の灯油残量を正確に計測して遠隔地から把握できるようにすれば、わざわざ全戸の灯油タンクを確認して回る必要はなくなります。そして、給油のタイミングを考慮した効率的な配送が可能になると考えました」と語る。

 ただ、この構想を実現するためには、乗り越えなければならないハードルがある。コストの問題だ。過疎地を含めた広域をサポート可能な通信サービスの現実的な選択肢はLTEになる。大手キャリアにも話を持ち掛けたのだが、約2万円の通信モジュールに加え、月額通信料約5000円のコストが発生することが明らかになった。「事業者の皆さまにコストメリットを感じていただけるビジネスモデルを構築するのは不可能。全く検討の余地がありませんでした」と金子氏は振り返る。

モノから発生した電気信号をそのままデータセンターに延伸する

 もっと安価なコストでサービスを提供できる手段はないか――。諦めずに探し求めていた金子氏が出会ったのが、さくらインターネットのIoTプラットフォーム「sakura.io」である。それは2016年10月のことで、当時はまだα版やβ版での試験的な提供だったのだが、通信モジュールを8000円で提供するとともに、通信料金についても月額100円以下(※正式サービスは月額60円)に抑えることが基本方針として示されており、「これならいける」と金子氏は直感したという。

 なぜ、このような低コストでIoTサービスを提供することが可能なのか。さくらインターネット IoT事業推進室の室長を務める山口亮介氏は、次のように説明する。「既存の通信サービスでは、サービス提供者がモノやクラウドに対して通信の仕組みを個々にインテグレーションする必要がありました。一方sakura.ioは、遠隔地のモノから発生した電気信号をそのままデータセンターまで延伸し、JSON(JavaScript Object Notation)に変換して読み取ることをコンセプトとしています。このシンプルな仕組みにより、業界の常識を超える低コスト化を実現することができました」(山口氏)。

 sakura.ioのメリットは安さだけでない。「セキュリティ対策を始めとしたIoT導入時の障壁とされる基本機能の運用部分を全てわれわれに任せ、お客さまは本当にやりたいことだけに専念していただけます」と山口氏は強調する。

IoTデバイスとクラウドの間を電子回路で直結
「sakura.io」はIoTデバイスで用いられる電気信号とクラウド向けのJSONフォーマットを相互変換するプラットフォームだ。IoTデバイスとクラウドの間を電子回路で直結していると言い換えることもできる

ファームウェアからアプリケーションまで開発に要した期間はわずか2日間

 実際、ゼロスペックはsakura.ioを活用することで、翌月の11月から灯油タンク残量計測サービスの開発を開始するという迅速なスピードで計画を次のステップに移すことができた。センサーを使って灯油の残量を算出する装置をモニター家庭のタンクに取り付け、実際の配送業務に役立つかどうかをテストできたのである。

「灯油タンク残量計測サービス」の実証実験に用いられているIoTデバイス
「灯油タンク残量計測サービス」の実証実験に用いられているIoTデバイス。左側にあるのがIoTデバイスの本体で、右側はIoTデバイスに被せるケースだ。デバイスの構成としては、灯油タンクの蓋の内側にセンサーが組み込まれており、蓋の外側にマイコンボードやsakura.io対応の通信モジュール、アンテナなどを設置している。正式サービス開始時にはアンテナをフィルム型にするなどして小型化を図る。通信回数を抑える(残量が少ない場合などの緊急時の通信も行う)などして、ボタン型のリチウム1次電池で約5年間の動作が可能になるという

 「セキュリティ対策を含めたIoTの基本的な仕組みは8割がたsakura.ioで実現されているため、われわれは工数を最小限に抑えることができました。具体的に開発したのは、通信モジュールを制御するマイコン側のファームウェアと、データセンター側でJSONフォーマットに変換されたデータを読み取ってWebに表示するアプリケーションのみで、その2つに関して言えば開発は2日で完了しました」と金子氏は語る。

 そして、狙い通りの手応えを得た成果を踏まえ、ゼロスペックはサブスクリプション型での商用サービスの展開に乗りだす計画だ。

「北海道のような寒冷地に限らず日本全国どこにでも、当社のビジネスモデルの需要があることが見えてきました」と金子氏は、先を見据えている。

 順調にサービスが広がっていけば、大量に蓄積されたIoTデータをもとに、各家庭や地域ごとの灯油消費のパターンを分析し、ユーザーに対してより効率的な配送のタイミングやルートをアドバイスするなど、さらなる高付加価値化も可能となる。灯油タンク残量計測サービスの今後の展開に、ますます期待が高まるところだ。

ゼロスペック 最高技術責任者の金子惠一氏とさくらインターネット IoT事業推進室 室長の山口亮介氏
ゼロスペック 最高技術責任者の金子惠一氏(左)とさくらインターネット IoT事業推進室 室長の山口亮介氏(右)

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提供:さくらインターネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月19日

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