【事例で学ぶ!製造業成功の秘訣】全拠点を巻き込んだグローバルSCM改革が競争力強化のカギに!:NEC
製造業にとってグローバルレベルでの最適生産・供給体制の実現は必須事項だ。それには、従来の個別最適化から脱却し、全拠点を巻き込んだ企業グループ全体での最適化を実現するグローバルSCM改革が不可欠となる。それでは、成功した企業にはどういうポイントがあったのか? グローバルSCM改革の成功事例を通して、改革に必要なポイントについて考える。
全体最適を実現するグローバルSCM改革を
消費者のニーズの多様化が進む中、製造業にはニーズに合った商品をより迅速に市場へと供給することが求められている。その一方、拠点のグローバル化が加速する中、サプライチェーンは海外へも大きく広がり、複雑さを増している。
この流れの中、多くの製造業が新しい問題に直面することになっている。その典型例が「どこの国(地域)にどれだけのモノがあるのか分からない」といった課題だ。拠点がグローバルに広がり、そのシステムが分散しているため、各拠点の情報を総合的に捉えて判断することができない。その結果、消費者の欲する時にタイムリーに製品を供給できず販売チャンスを逃したり、流通コストが膨れあがったりといった事態を引き起こしているのである。
これらの問題を解消する上でのカギとなるのが、グローバルレベルでの最適生産・供給体制の実現だ。それには、従来の拠点ごとや地域子会社ごとなどの個別最適化から脱却し、企業グループ全体の活動を最適化するという視点が必要になる。またこれを支える仕組みとして、各現地法人が最適な調達と生産を行えるグローバルSCM改革は不可欠なものだ。
しかし、効果的なグローバルSCM改革は、口で言うほど簡単なことではない。実際、日本の商習慣をベースにした成功事例や他社のベストプラクティスをベースにした改革がうまくいかず、思ったほどの効果が出ないケースも多く発生している。
業務プロセス改革とITシステムの構築がカギ
それでは、グローバルSCM改革を成功させるには、何が必要なのだろうか。まず重要となるのが、業務プロセスの標準化だ。業務が標準化されていなければ、全社一体となったモノの流れを実現することはできないからだ。
次に、企業戦略を踏まえた人やモノの流れを見える化できるITシステムの構築も不可欠となる。その際には「地域事情を考慮した改革ロードマップの策定」や「異文化の組織・個人が持つ特性を考慮したプロジェクトの推進」も必要だ。
つまり、業務とシステムの両面にわたった改革を長期的かつ全体的な視点で行うことこそが、グローバルSCM改革を成功させる条件となるわけである。
ただし、これらを自社だけで行うことは多くの企業にとっては難しい。そこで、このような条件を満たすための取り組みをサポートするベンダーが存在する。
その中でも、高い評価を受けているのがNECである。NECでは、全体最適の観点から、物流を含めたサプライチェーン上の需給調整・在庫最適化を支援。海外を含めた拠点ごとの需給計画や生販在計画を可視化するグローバルSCMに関わるトータルソリューションを提供。既に、数多くの企業がそれを活用したグローバルSCM改革を実践し、さまざまな成果を残している。
コンカレントエンジニアリングを実現した中西金属工業
そうした企業の1つが、自動車製造のための搬送設備などを、主にBTO(Build To Order)によって提供している中西金属工業だ。同社の輸送機事業部は、現在では、米国をはじめとして世界13カ国に営業拠点を展開。事業部全体の売上に占める海外比率は実に80%を超えているという。
世界中に分散した拠点を抱えていた上、各拠点や部門において個別にシステムを構築・運用していたことから、同社では、見積もりや設計、製造などに関わる各種情報が各システムに散在している状況だった。
「そのため、案件ごとの設計の進捗状況や製品ごとの部材調達状況、製造の進捗状況などを把握するのに多くの時間と労力を費やさねばなりませんでした。また事業部全体の観点から案件のステータスを捉える方法もなかったため、状況に応じたタイムリーな経営上の意思決定も困難な状況でした」と中西金属工業 執行役員 輸送機事業部 戦略企画室 室長 兼 企画部 部長の豊田泰正氏は語る。
こうした課題を解消するため、同社では各システムに散在する情報を同一基盤上に統合することを決断。PLMソリューション「Obbligato III」、ERPソフトウェア「IFS Applications」、さらにはIFSのクラウドサービスを順次導入することで、見積もりから受注、設計、製造、出荷に至る一連のプロセスに関わる情報を統合・見える化することに成功した。
これにより、これまでスムーズに進まなかった部門間の連携が円滑化し、コンカレントエンジニアリング(企画・設計、開発から製造・販売といった製品ライフサイクルに関連する部門が、製品の企画・設計、開発など、それぞれの段階に参加・協業すること)を実現している。
また、事業部全体の大幅な生産性の向上、業務のスピードアップにも成功。「例えば、設計担当者が1つのプロジェクトに費やす時間について、30%程度の削減を達成できた。また、海外支援要員の出張が50%削減された他、国内の月次決算処理も2〜3日程度早まるといった効果も得られています」と豊田氏はその成果を紹介する。
さらに、クラウド上に各製造拠点の情報が収集・集約され、一元化されたデータとして管理されているため「どこでどの製品を作るのが最適なのか」といった、状況に即した経営的な意思決定を迅速に行える体制も整いつつあるという。
生産管理の高度化で柔軟な生産調整を実現したアデランス
総合毛髪関連事業で知られるアデランスも、NECのグローバルSCMソリューションの活用により成果を上げている企業の1つだ。
同社では、グローバル規模での生産管理業務プロセスの標準化や海外生産拠点に対するガバナンス強化を念頭に、フィリピン工場における生産管理システムを刷新。IFS Applicationsをベースにしたシステム構築により、生産管理の高度化を実現している。
「その結果、オーダー品が『いま、どこのセクションの、どの工程に仕掛かっているか』といった情報が見える化され、これにより、予定通りに作業が着手されているか、納期に遅れがないかといったことを詳細に確認できるような仕組みを実現できました。その結果、生産プロセスの適正な管理が可能となっています」とアデランス 情報システム部長 廣瀬拓生氏は語る。
現在は、状況に応じた海外生産拠点間での生産調整や、需要変動にも迅速に対応できる体制の整備を推進しているという。
NEC自らが課題を克服する中で蓄積したノウハウ
どうしてNECが、このようなさまざまな企業に対するサポートができるのか。それは、同社自身がこのような課題を解決することで、ノウハウを蓄積してきたからだ。
NECでも従来は生産管理領域の業務プロセスや生産管理システムなどが事業部門ごとに異なっていたという。そのため需要変動の影響を大きく受け、さらに在庫コストが膨らむ状況になっていたという。
そこで同社では、「業務プロセス」および「システム」の標準化をベースとしたグローバルSCM改革を実施。製品、工場ごとの多種多様な生産形態を、「見込み生産で対応するもの」「受注組立生産(BTO:Build To Order)型のもの」さらに「受注してから設計して生産するというプロジェクト型で行うもの」など、I類からIV類までに大別し、これらのグループごとの標準モデルの作成を進めていった。
まず、業務プロセスの標準化に当たっては、生産業務の要素を機能別に「標準製造BOM」−「マスター管理」−「受注」−「所要計画」……など、14個のプロセスブロックに定義し、それぞれに固有の標準プロセスを作成。これをI類からIV類まで大別した生産形態に当てはめて検討していくことで、多種多様な生産形態の違いを吸収し、全社共通の生産業務プロセスを策定したという。こうした業務プロセスの標準化で似通った業務パターンをシンプルにしたおかげで、業務パターンの大幅な削減を実現することができるのである。
自社導入したシステムから得た改革のポイント
一方、システム領域における標準化については、IFS ApplicationsとObbligato IIIの導入をベースとした改革を進めている(関連記事:NEC、自社のグローバル生産管理システムを刷新――2016年3月期までに全社導入を目指す)。その主要な改革ポイントは次の通りだ。
改革ポイント1 営業と工場をつなぐ仕組み
NECでは、製品在庫を持たずに顧客の要求納期に合わせて製造するプル型生産方式に対応するため、営業と工場をシームレスにつなぐ仕組みを構築した。具体的には、営業側で入力した受注情報に対し、生産管理側で作成した「生産枠」情報に基づくリアルタイムな納期回答を実現している。
生産枠とは、製品やキーパーツとなるモジュール、部品に対して、資材の調達状況や在庫情報を考慮して設定されるもの。外部システムから随時受け取る所要情報によって立案される所要計画、あるいは所要計画から立案される生産計画に基づいて生産枠情報が作成される。それが納期回答システムに日次で送信され、営業の納期回答がなされるという流れだ。
「これにより、製品やキーパーツの生産リードタイムや所要の変化に即した正確な納期回答を顧客に対して行えるようになっているわけです」とNEC 生産本部 シニアマネージャー 澤永正行氏は語る。
改革ポイント2 「MES」と「かんばんシステム」の連携
次に、顧客基点のモノづくりの実現という観点で、「MES」と「かんばんシステム」の連携を行っている。具体的には、1日単位での生産の管理を生産管理システム側で賄い、時単位、分単位の管理についてはMESで行うという切り分けを行っている。
その上で、まずBTO品の場合には、現場の生産をコントロールするMES側で搬入確定情報を基に指示を出して製造を実施。これに対し生産管理側では、MESから製造指示情報や作業実績を受け取る。一方、BTO品以外の場合には、生産管理システム側から「製造指示かんばん」を発行。現場では製造指示かんばんに沿って製造を行い、MESから完了数量が実績として生産管理システムに報告される仕組みとなっている。
改革ポイント3 生産管理システムに連携する設計・製造インタフェース
NECでは従来、設計品目情報(PDM)、販売品目情報にひもづけられる製造部品表(BOM)が拠点ごとに異なり、生産の流動化が困難であるという問題を抱えていた。
「これに関しては、全社標準のデータ構造による基本構成BOMを設定。この基本構成BOMに対して、各拠点が製造で必要な情報を付加して拠点別の製造BOMとして展開し、生産管理システムに連携するという仕組みをObbligato IIIにより構築しました」と澤永氏。これにより、設計に関わる変更を生産工程に迅速かつ柔軟に反映することが可能となり、グローバルな最適生産への対応が実現されている。
以上のような自社での取り組みにおいて蓄積したノウハウをベースに、NECでは顧客のグローバルSCM改革を強力に支援。さらに今後は、業種業態にもとづいたビジネスモデル化などを進めるなど、さらにソリューションを強化していく方針だ。もし、グローバルSCMについて悩む企業があれば、有力な選択肢の1つとなるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月17日