現役東大生設計者がプロトラブズで見積もってみた!:面談不要の加工・成形屋さん(11)
「ユカイなモノづくり」を目指すロボティクス企業 ユカイ工学は、人材発掘もユカイ? 今回登場するのは、現役東大生のメカ設計者の安住仁史氏。同氏が、前回登場した先輩・小島拓也氏のデザイン画を基に、機構設計を進めていくことになった。今回は、そのほんの一部を紹介する。
第9回は、プロダクトデザイナーの小島拓也氏による製品開発を紹介した。ロボティクスベンチャー ユカイ工学のフィジカルコンピューティングツール「konashi」を楽しく活用するためのホルダーの試作から量産の計画までを取り上げた。
今回登場するのは、小島氏の後輩設計者である、 東京大学工学系研究科機械工学専攻の修士1年の安住仁史氏だ。現在、学業の傍らで、ユカイ工学でメカ設計に携わっている。「アルバイトという立場ながら、社員並みの働きぶり!」と同社代表の青木俊介氏も高評価だ。
ひょんなことから“現役東大生設計者”の安住氏が、先輩である小島氏がデザインしたユニークなカメラスタンドの機構設計を進めていくことになった。ソニーの“レンズだけカメラ”「DSC-QX10」に取り付けて使うものだ。
小島氏は、キャタピラーやジャッキ、アームなど、重機風デザインが得意。美大在学中から重機風オブジェやマシンを製作してきた。そんな同氏によるデザイン画と3次元モデルが、以下だ。
デザイン画では重機風な3本脚が付いている(3次元モデルの原案では4本脚だった)。まるで、ロボットアニメに登場しそうな雰囲気だ。詳細寸法はまだ決められていない。
「果たして売れるのか」――量産するかどうか、現時点では不明だ。ひとまず各部品を設計して試作品を1点作成してみて、さまざまな人に見てもらって評価を受け、ユカイ工学の皆で今後の計画を検討する流れとなる。試作品では切削加工で対応できるが、以後のことを考えて射出成形の見積もりも取っておき、金型コストのおおよそのあたりを付けておくことにした。3次元データのみで、企画の初期段階で試作や量産コストまで把握できることで、メイカーズでもコンカレントエンジニアリングができる。
安住氏は、小島氏のデザインとコンセプトに従って機構設計を始めることにした。今回、いかにも歩き出しそうな3本脚は、可動してカメラアングルを調節できることを目指す。カメラの主要な寸法データは、ソニーのサイトで調べて、モデリングしておいた。
小島氏のデザイン画や3次元モデルだと、一見はシンプルそうな形状だが、「結構、複雑な設計になりそう」と安住氏。部品点数は、「20数点にはなるかも……」ということだ。こちらはまだ設計に時間がかかりそうだ。
そういうわけで今回、ひとまず詳細に作り上げたのは、3本脚の要となる筐体だ(外形寸法:80×61×15mm)。
こちらを使って、プロトラブズの見積もりを体験してみた。手始めに「Firstcut」(切削加工)の見積もりを依頼してみると、1時間ほどで返答が。このスピードにまずは驚きだ。
費用は、1点で1万8388円。加工性については特に問題なし。通常は3営業日で出荷だが、さらに納期を早めたい場合は、プルダウンメニューから選択できるようだ。既に射出成形を念頭においたCADデータを送っているので、同時に射出成形の見積もり依頼ができる便利さも、この上ない魅力である。
以下は、「Protomold」(射出成形)に出してみた見積もりだ。こちらは、製造性の解析結果として、要設計変更箇所がいろいろと出てきた。
費用は、サンプルパーツ25個と金型と合わせて50万2825円。筐体の内側(可動側)は、低コスト仕上げにしてみた。しかし、このままではちょっと高いので、何とかならないか……。この筐体設計そのものを見直したり、3本脚のパーツ設計を見直したりして、コストを抑えるように再度設計検討を進めたいところだ。
特に、以下の赤紫色の穴形状はアンダーカットになっており、金型に横スライドを2カ所も追加する必要がある。このポイントこそ、まさにコストアップの主要因となるので、何とかアンダーカットを回避できるよう要検討だ。
また、「抜き勾配0°」の部分があったのも、「注意点」のタブから見られる。以下の図、4カ所の取り付けボス部の円筒側面だ。
4つの円筒はテ―パが全くなく、真っすぐになっている。「射出成形なら抜き勾配は入れなくてはいけない」と分かってはいても、急いでいるとつい忘れてしまう……。うっかり抜けてしまう部分も、余すところなく洗い出してくれるプロトラブズは頼もしい。「こんなことも分からないのか!」と叱られることもないので……、気楽だ。
ひとまず試作品を製作するのは切削加工だが、ついでに今回出た射出成形の課題を解消しておくことにした。
便利なプロトラブズとマイアカウント
「2次元図面を用意しなくても、3次元モデルさえあれば見積もりから発注まで行えるのは、すごく助かります」(安住氏)。
今回、初めてプロトラブズを体験してみた安住氏だが、好感触だったようだ。「もちろん、それぞれの設計に関して多少考慮する項目が異なりますが、切削と射出成形を同じ感覚で並行にネットで見積もりが取れる点がいいですね。何より見積もり画面が優秀だと思います! 設計の注意点などが簡潔にまとめられている点、納期対コストが見積もり画面で分かりやすい点などです。また短納期なのもうれしいですね」(安住氏)。
これまでの見積もり履歴が管理できる「マイアカウント」オンライン・サービスだが、今後、カメラスタンドの設計が進んでいく過程で活躍しそうだ。
マイアカウントでは、過去に見積もった案件やパーツなどを全て1カ所で並べて見ることができ、アップロードするだけで常に最新バージョンの3次元データに更新されるので、プロジェクトの進捗管理にも便利だ。設計変更が中途であっても、その段階でアップロードすれば、コスト変化を比較できる。もちろん見積もりは何度でも無料だ。「アセンブリごとで見積もりを取りたいときや、過去の履歴を一括管理できるところが便利そうです」(安住氏)。
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今回は、筐体設計のごく一部を紹介したのみとなったが、以後もカメラスタンドの設計検討は進んでいく予定だ。果たして、konashiホルダーのように、ユカイ工学の新製品として昇格できるのか。今後に期待!
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提供:プロトラブズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月16日