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中国でも高まるTSNへの期待感、「CC-Link IE TSN」が“智能制造”にもたらすもの中国国際工業博覧会2019特別企画(CC-Link協会)

世界1位の製造国を目指して“智能制造(スマートファクトリー)”を推進する中国。ただ、中国の工場でも課題となっているのが、さまざまな通信プロトコルが乱立する環境での製造データ連携だ。この課題を解決する技術として「TSN」に注目が集まるが、産業用オープンネットワークとしていち早く「TSN」技術を採用した「CC-Link IE TSN」への期待感が高まっている。中国・上海で開催された「中国国際工業博覧会」での「CC-Link IE TSN」の動向についてお伝えする。

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 “世界の工場”としての役割を強める中国。人件費の高騰は進むものの、これらに対応するために自動化などを含む生産技術や、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用した新たな製造方式の開発に力を注いでいる。その中でも特に、製造各社が力を入れるのが“智能制造(スマートファクトリー)”への取り組みである。

 ただ、日本と同様に、中国の工場でもさまざまなメーカーの製造装置による通信プロトコルが乱立している環境があり、これらの“異なる通信環境”におけるデータの収集や活用に苦慮しているのが現実だ。こうした環境におけるデータ活用を可能とする技術として大きな注目を集めているのが「TSN(Time Sensitive Networking)」である。「TSN」は時分割通信方式により、複数の通信プロトコルを同一配線で混在させることが可能となる。工場などでも、異なる通信プロトコルのデータを「TSN」を通して一元的に集めることなどが可能となるわけである。

 この「TSN」を産業用ネットワーク規格にいち早く取り込んだのが、CC-Link協会(CLPA)が2018年11月に発表し普及に取り組む「CC-Link IE TSN」である。対応製品も順次投入が進み、2019年5月からは中国市場でも「CC-Link IE TSN」対応製品が発売されており、中国国内での期待感が高まっている。

 中国における製造技術の展示会「中国国際工業博覧会(CIIF)」(2019年9月17〜21日、上海・国家会展中心)に出展し、「CC-Link IE TSN」を中心に訴求したCLPAに、中国市場での取り組みと手応えについて聞いた。

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「CC-Link IE TSN」を前面に押し出したCLPAブース(クリックで拡大)

期待の「TSN」にいち早く対応したCC-Link IE TSN

 日本発&初のフィールドネットワーク「CC-Linkファミリー」の普及・促進活動を推進するCLPAでは、2007年に業界で初めて1Gbpsイーサネットをベースとした産業用オープンネットワーク「CC-Link IE」を展開。工場のネットワークプラットフォームとして、中国市場をはじめとするアジア地域を中心に普及を進め、存在感を築いてきた。ただ、新たにリリースした「CC-Link IE TSN」についてはこれまでにないほどの良い感触を得ているという。

 中国製造業の抱える課題について、CLPA-Chinaのディレクターである張蓉(Zhang Rong)氏は「中国でもスマートファクトリーへの取り組みは大きな注目を集めており、各社が取り組みを強化している状況です。その中で、製造現場の機器やさまざまな通信プロトコルが乱立し、一元的にデータを取得できないという点は大きな課題として見られています。これらを解決するものとして『TSN』に期待が集まっています」と語っている。

 特に、中国では大企業の自社工場だけでなく、個人事業主による生産委託工場なども数多く存在しているが、「これらの企業が自社だけで機器を入れ替えて通信プロトコルを統一するのは容易なことではありません。異なる通信プロトコルをそのまま維持しつつ、データはまとめて収集できるような仕組みが求められているといえるでしょう」(張氏)。

 こうした中で、産業用ネットワークとしていち早く「TSN」対応を打ち出したことから中国市場における「CC-Link IE TSN」への注目度が急速に高まり、好反響を得ているというのだ。

 張氏は「産業用ネットワークで最初に『TSN』対応を発表したことから、『CC-Link IE TSN』への期待感は非常に大きいといえます。政府関係者なども含めて多くのセミナー依頼などがあり、実機でのデモなどの要望も多く来ています。中国は国内の競争も激しく、中国企業には新しい技術などをいち早く採用し競争力強化につなげていきたいという考えが根付いています。そうした意味で『最初に発表した』ということが何よりも大きかったと感じています」と手応えについて語っている。

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「CC-Link IE TSN」のデモ展示(クリックで拡大)

 加えて、「CC-Link IE TSN」への注目度がCC-Linkファミリー全体への評価にもつながっているという。例えば、「CC-Link IE」は1Gbpsの大容量通信を特徴としているが、従来は高速大容量である点を生かす用途が限定的で、利用がそれほど広がらなかった。

 しかし「スマートファクトリー化が進む中でさまざまなデータが取り扱えるようになり、ビッグデータ分析が求められるようになる中で、大容量通信の価値があらためて見直されるようにもなっています。特に『CC-Link IE TSN』により、ネットワークカメラなどの動画情報と各種機器の制御情報を同一配線上で流すことが可能となります。ただ、動画情報は多くの通信容量を使用するため、こうしたことを実現するには大容量通信が必要となり、当初から大容量化を訴えていた『CC-Link IE』を再評価する動きが高まっています」と張氏は語っている。

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CC-Linkファミリーの展示(クリックで拡大)

中国市場におけるCLPAの取り組み

 これらの好反響を受けてCLPAでは中国市場で特に開発パートナーの拡充に力を入れているという。特に中国独自の取り組みとして既に大きな反応を得ているのが「融プログラム」という開発支援プログラムである。

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CLPAブースにおける「融プログラム」の紹介(クリックで拡大)

 「融プログラム」は、中国国内における「CC-Link IE TSN」関連の開発ツールや関連製品の開発を支援するものだ。具体的には、期間内にパートナー企業がCLPAへ同プログラムに申請し認証を受けた場合、CLPAが開発費の一部補助を行う。加えて、CLPAのグローバルサポート体制を活用し、中国国内外への製品プロモーション支援を行う。現在は、納博特南京科技(inexbot)、南京實点電子科技(iDot)、浙江禾川科技(HCFA)、上海斯達普實業、四川零点自動化系統(odot)、天津市森特奈電子(SENTINEL)の6社が既に参加しており、今後は「12社くらいまでは増やしたい」(張氏)としている。

 張氏は「製造立国を目指している中国には既に数多くの産業機械ベンダーや、産業制御ベンダーなどが生まれてきています。これらの企業に『CC-Link IE TSN』を組み込んだ機器開発を行ってもらう必要があります。そうした中で開発ツールや関連機器の開発は大きなポイントになり、ローカルパートナーとの関係性強化が何よりも重要だと考えています。一方で、中国のローカルパートナーには、中国国内だけではなくグローバルに打って出たいと考えている企業も多くあります。こうした状況をふまえ中国国内外での支援を目的として本プログラムを作りましたがおかげさまで好評を得ています。引き続き中国だけでなくグローバルで製造業をより進歩させるということを目指したいと考えています」と「融プログラム」についての考えを述べている。

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「融プログラム」参加企業および中国内外のパートナー企業における「CC-Link IE TSN」関連製品。既にプロトタイプを含め開発が進んでいる(クリックで拡大)

機器実装環境を拡張、異なる産業用ネットワークとの相互接続も強化

 さらに「融プログラム」以外でも、「CC-Link IE TSN」対応製品の開発加速とラインアップ拡張もアピールする。台湾のMOXAが「CC-Link IE TSN」対応のTSNスイッチのラインアップを検討している他、ソフトサーボシステムズが産業用PC上で稼働するソフトモーションの開発を進めている。

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MOXAによる「CC-Link IE TSN」対応TSNスイッチとソフトサーボシステムズによるソフトモーションの、半導体製造装置への導入イメージ図(クリックで拡大)

 CLPA事務局長の川副真生氏は「産業用PC上でコントローラーを稼働させるソフトモーションなどを含め、機器開発に柔軟性を持たせることができるソフトウェアでの実装ニーズが高まってきています。従来の規格ではハードウェア実装が必要でしたが、『CC-Link IE TSN』ではソフトウェア実装を実現したことで、ニーズに応じた開発を可能としています。従来なかったソフトウェアプロトコルスタックの開発環境が広がることで、その価値を実際に発揮できるようになります」と実装環境の広がりを強調している。

 また、産業用ネットワーク間の相互接続なども必要に応じて示していくとしている。「中国ではさまざまな産業用ネットワークが使用されています。各ネットワークが『TSN』に対応していけば、それぞれが相互に影響を与えることなく乗り入れるような形が可能となり、ユーザーにとってのメリットは非常に大きくなると考えます。既にCLPAとPROFIBUS & PROFINET International(PI)では『CC-Link IE』と『PROFINET』のネットワーク間の相互接続性を実現する共同仕様書の策定を行っていますが、その他の産業用ネットワークにおいても同様の相互接続の動きを示していきたいと考えています」と張氏は語っている。

ローカルパートナーを拡充しリアルな成果を訴求

 今後に向けては、より具体的な成果をアピールする考えである。日本のみならず中国でも2019年5月から順次、三菱電機製の「CC-Link IE TSN」対応FA製品群が販売開始している。この他にも徐々に機器投入が広がると見られており、今後は実際の対応製品やアプリケーションにひも付いた「CC-Link IE TSN」導入価値を打ち出していく狙いだ。

 張氏は「『CC-Link IE TSN』の仕様公開による市場の期待感は非常に高いため、今後はその期待に応える対応製品群やそれらによる成果を示していくことが重要だと考えています。ただそのためには、ローカルパートナーによる開発ツールや開発環境の充実が欠かせません。『融プログラム』なども含めて、具体的に価値が生み出せる環境を早期に構築していきたいと考えています」と抱負を述べている。

 CLPAではこうした中国での取り組みを強化するとともに、グローバルでの相互協力も強化する方針だ。CLPA-Chinaでの事例などをグローバル展開するとともに「海外での事例なども積極的に共有し、グローバルで『CC-Link IE TSN』の普及を盛り上げていく」(川副氏)としている。

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CLPA-Chinaの主要メンバー。右から3番目がCLPA-Chinaディレクターの張氏。右端がCLPA事務局長の川副氏(クリックで拡大)

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提供:一般社団法人CC-Link協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年11月15日

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