遠隔監視に朗報! 狭帯域な無線環境で画像伝送を可能にするニューゾーンのソリューション:Embedded Technology 2013【特別企画】
高度なLSI技術を武器に、既成概念にとらわれないシーズ先行型開発を推し進めるニューゾーン。アミューズメント機器向けグラフィックスLSIで知られるアクセルの100%子会社として誕生した同社が“無線通信環境での画像伝送”を実現すべく開発した2つのLSI製品とは? その狙いと「Embedded Technology 2013/組込み総合技術展」で披露する展示デモの概要について紹介する。
アミューズメント機器向けグラフィックスLSIで知られるアクセルが、新たな領域の製品開発を目指して、2010年12月1日に設立した子会社がニューゾーンだ。ニューゾーンは、狭帯域での伝送に有用な画像圧縮伸長LSIと、デジタル簡易無線LSIの開発を手掛け、2013年11月20〜22日に開催される「Embedded Technology 2013/組込み総合技術展(ET2013)」のアクセルグループブースにおいて、それらを用いた応用アプリケーションに関する展示デモを披露する。
本稿ではET2013の開催に先立ち、ニューゾーンの代表取締役社長であり、アクセルの取締役会長でもある佐々木譲氏に、2つのLSI製品の特長とその狙いについてお話を伺った。
“既成概念にとらわれない”シーズ先行型開発で生まれた2つのLSI
「アクセルはグラフィックスに特化し、アミューズメント分野を中心としたビジネス展開を続けていますが、新しい領域に対するチャレンジも怠ってはいません。アクセルとは独立した組織で、そして、既成概念にとらわれない形で製品開発をしていこうと立ち上げたのがニューゾーンです。高度なLSI技術を武器に、新市場を創出し、顧客に対して新たな価値を提供することがニューゾーンのミッションです」と佐々木氏。
アクセルの100%子会社として誕生したニューゾーンが、“今までの概念にとらわれないシーズ先行型製品”として手掛けているのが、このほど完成した低ビットレート伝送路向け画像圧縮伸長グラフィックスLSI「NZ101」と、2013年度中に開発完了予定のデジタル簡易無線用LSI「NZ201」の2つだ。実はこの2つのLSI製品は、製品の企画段階から“チップセットで使われること”を想定して開発したものだという。果たしてどういうことなのだろうか。
ブロックノイズが発生しにくい「NZ101」の高圧縮コーデック技術
「NZ101」の最大の特長は“高圧縮コーデック技術”にある。一般的にJPEG画像を高圧縮するとまるで白黒画像のように劣化してしまったり、ブロックノイズが目立ったりするが、「NZ101」であれば高圧縮してもブロックノイズが発生しにくく、画像内容をきちんと視認できる。圧縮のレベルにもよるが、VGAサイズ(640×480ピクセル)の画像程度であれば、例えば6〜15Kバイトくらいまでサイズを小さくすることが可能だ。そのため、これまで画像のやりとりが困難だった狭帯域な無線通信環境でも画像伝送が実現できる。「『NZ101』は、画像のキャプチャーから圧縮/伸長、表示までを、全て1チップで行えるように開発したLSI製品です。今回のET2013では、このLSIをベースとした画像圧縮伸長ボード『NZ103B』と、それをケーシングしてユニット化にした『NZ103U』を展示します」(佐々木氏)。
中距離を年額500円でカバーできるデジタル簡易無線LSI「NZ201」
そして、デジタル簡易無線機をターゲットとしたLSI製品が「NZ201」だ。「現在も鋭意開発中で、間もなくエンジニアリングサンプルが完成する予定です。2014年には、このLSIを使った名刺サイズのモジュール製品『NZ211M』をリリースする計画となっています。この『NZ211M』で従来より手軽にデジタル簡易無線機が実現できれば普及の後押しだけでなく、新たな領域での展開にもつながるでしょう」と佐々木氏は説明する。
デジタル簡易無線は伝送速度が遅い(3kbps程度)代わりに、携帯電話通信網(3G/LTE)のように月額のランニングコストは掛からず(年間500円の電波使用料)、見通しが良ければ数km、ビル街でも数百m〜1km程度の通信距離を実現する。イメージ的には、広範囲をカバーする携帯電話通信網と、近距離をカバーするWi-Fiとの間、“中距離”を補える無線通信といったところだ。そのため、業務用無線などの利用にとどまらず、新たな使い方を含めた多くの応用展開が考えられる。
攻めるは、狭帯域な無線通信環境での画像伝送! 応用例をET2013で提案
低ビットレートでの伝送に適した画像圧縮伸長グラフィックスボード(NZ103B)/ユニット(NZ103U)と、デジタル簡易無線機(NZ211M)をセットで使うことで、手軽に画像伝送無線ネットワークシステムが構築できる。「NZ201」を使ったデジタル簡易無線機「NZ211M」にはマイコンが搭載されており、通信チャンネルの選択やキャリアセンス、特定IDのユニットにだけ同報通信するといった多数の便利なコマンドが備わっており、インテリジェントな動作を実現できる点も見逃せない。
このセットを使ったアプリケーション例として、アクセルとニューゾーンはET2013のブースにおいて、温度や日照などのデータを収集・管理するフィールドサーバを披露する。これは、十数棟程度のビニールハウスを持つ農場での利用を想定したもので、そのような規模感ではデータ収集に携帯電話通信網を使うと月々の通信コストが大きくなってしまうし、Wi-Fiでは広大な農場をカバーし切れない。フィールドサーバでやりとりされるデータのサイズはさほど大きくないため、通信距離が最大数kmの範囲をカバーでき、通信コストが掛からないデジタル簡易無線が最適といえる。さらに、センサーデータだけではなく、監視カメラによる画像の伝送も「NZ103B/NZ103U」を利用すれば問題なく行える。
一方、アクセルは組み込み機器向けグラフィックスLSI「AG902」を搭載した「災害対応型デジタルサイネージ機能搭載自動販売機」をET2013で展示する。大型ディスプレイに表示された飲料をタッチ操作で選択・購入したり、天気予報などの情報を表示させたりするデモの他、災害時を想定し、内蔵カメラで撮影した画像を無線伝送するデモを実演する(ここにニューゾーンの技術が生かされている)。
さらに、最大4チャネル同時に映像信号を出力できる「マルチディスプレイ(多画面表示)機能」を備えたアクセルのグラフィックスLSI「AG10」を搭載したボードを3枚用い、高精細な4K映像を、42インチから70インチまでの計12枚のディスプレイに展開表示させる大迫力のデモも披露する。ちなみにアクセルは現在、AG-9シリーズの後継チップを開発中で、もしかすると展示会場で後継チップに関する最新情報も見聞きできるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社アクセル
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2013年11月23日