複雑化が進む製品開発において、CAEを活用した解析業務の果たす役割はますます大きくなっている。CAEの利用頻度が上がるだけでなく、解析処理のさらなる高速化や大規模モデルへの対応、よりメッシュ数の多い高精細な解析など、その要求も高まっていくことが予想される。また、ニューノーマル時代に向けてリモートワークに対応した環境整備も求められる。果たして、現在の解析環境のままで業務のさらなる効率化・高度化を実現できるだろうか。あらためて、HPCという選択肢について考えたい。
製品開発を取り巻く環境は大きく変化し、年々その複雑さが増している。同時に、さらなる開発期間の短縮やコストダウンも要求され、これまで以上に効率的なモノづくりが求められている。また、品質の観点からも、限られた開発期間やコストの中で品質を担保する必要がある他、近年では省電力化に伴うCO2削減や環境負荷の少ない材料を製品に使用するなど、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みも強く求められている。
こうした数々の厳しい要求を突き付けられている製造業企業にとって、救いの手となるのがデジタルの活用だ。特に、時代の変化とともに製品の複雑さが増したことで、要求仕様通りの性能をきちんと満たすことができるのか、あるいは品質や安全性を十分に確保できるのか、といった解析・検証の重要性が増しており、製品開発において、CAEを用いたシミュレーションの活用がますます欠かせないものとなっている。
製品開発の初期段階でCAEを活用することで、設計上の不具合や問題を早期に発見し、品質を高めて手戻り回数を低減したり、多大なコストや時間を要する試作の回数を大幅に削減したりすることが可能となる。実際、デル・テクノロジーズが昨年(2020年)、CAEユーザー96人を対象に実施したアンケート調査の結果でも、「開発期間の短縮」「コスト削減」「品質の向上」が“CAEを活用するメリット”のトップ3となっている。
このように、現代のモノづくりにとって不可欠といえるCAE活用だが、より高精度なシミュレーションを実施するには、コンピュータの膨大な計算リソースが求められる。特に、衝突解析、非線形構造解析、流体解析といった大規模計算が要求される高度なシミュレーションを実施するとなると、十分かつ最適なコンピュータ資源がなくてはならない。なぜなら、計算対象によっては解析結果を得るまでに1日から数日、長いもので数週間になるケースもあるからだ。また、近年では高機能化・複雑化する製品開発を背景に、例えば流体/構造、あるいは電気/熱/構造など、同時発生し得る複数の事象をまとめてシミュレーションするマルチフィジックス解析(連成解析)に対する要求も増している。
大規模計算を必要とする解析ニーズは、今後ますます増えていくことが予想される。高度な解析を効率的に実施するには、設計・解析担当者が普段使用しているワークステーション単体の力だけでは到底実現できないほどの高いパフォーマンスが要求されるため、より強力で、高い拡張性や柔軟性を備えた環境が求められる。
そこで注目すべきなのが、複数の高性能サーバなどをつなげ、多くのCPUを並列化させて高効率に計算処理を実行できるPCクラスタ環境、すなわち、HPC(High Performance Computing)の活用だ。膨大なデータに対して複雑な演算処理を高速に並列実行できるHPC環境は、AI(人工知能)や金融、気象予報の他、材料開発、創薬などの分野でも広く活用されている。もちろん、CAEを用いた解析分野でも高い効果を発揮し、解析処理のさらなる高速化や大規模モデルへの対応、よりメッシュ数の多い高精細な解析などの実現を可能にする。
だが、このような解析環境の改革を単独で成し遂げることは非常に難しい。実現には、ハードウェア/ソフトウェアに関する高度な専門スキルや技術、HPCに関する豊富な知見、数多くの導入実績を有するパートナーの存在が欠かせない。また、解析業務での活用となると、各種CAEツールの特性なども熟知した上で適切なシステム構成を選定してくれることが望まれる。
こうした解析現場の要求に対し、用途に適した強力なサーバ製品の提供はもちろんのこと、的確なシステム構成の選定から将来の活用までも見据えた満足度の高い提案、着実な導入支援活動を行っているのが、デル・テクノロジーズだ。
デル・テクノロジーズは、1990年代後半から汎用(はんよう)サーバ製品を用いたHPCクラスタの構築などに長らく取り組んでおり、その実績は20年以上にもなる。特に、2016年以降の躍進は著しく、年々市場シェアを拡大し、2020年第3四半期にはワールドワイドで20%以上のシェアを獲得している。
この成長の背景には、デル・テクノロジーズがこれまで推進してきたスーパーコンピュータ領域参入に向けた体制整備の取り組みが挙げられる。2015年、同社は米国と欧州にて大型HPC案件の獲得に向けた体制強化とHPCに特化した要員の強化に努め、米国にてベンチマーク環境を拡充した。そして、2017年には米国のベンチマーク環境を刷新し、「HPC & AI Innovation Lab」を設立。ここでは大規模ベンチマークシステムとして、スーパーコンピュータ処理性能ランキングとして知られるTOP500にランクインした実績のある「Zenith」と、大規模GPUクラスタ「Rattler」を配備した。翌2018年に日本国内においてもHPC体制の整備と要員の拡充を強化し、同時に、日本サイドからもHPC & AI Innovation Labを利活用する取り組みをスタートさせている。さらに、2019年にはHPC & AI Innovation LabにAMDプロセッサーを搭載した大規模クラスタ「Minerva」を追加するなど、HPC領域における積極的な投資を継続している。
また、デル・テクノロジーズは、直近では、2020年5月に国際標準化団体であるObject Management Group(OMG)が設立したDigital Twin Consortiumの創設メンバーに加わっている。物理空間のデータをデジタルデータ化し、サイバー空間でCAEやHPCの技術を基にモデリング/分析/予測を可能にする「デジタルツイン」の領域でも、今後システムの上流から標準化を進めていこうとする同社の動きが見て取れる。
デル・テクノロジーズのCAEやHPCに関するワールドワイドの取り組みは市場からも高く評価され、日本国内においても学術研究や官公庁系、さらには製造業企業を中心に、導入実績を着実に伸ばしている。例えば、学術研究分野であれば、2020年末から国内の主要大学で、物性研究や基礎物理学研究用途に同社のサーバを大量に使用したスーパーコンピュータが導入されている。また、製造業向けとしては、自動車、重工業、半導体、船舶、製薬、電気、精密機器といった各業界に対して、主に解析用途向けの大規模HPCクラスタシステムを導入している。同社のサーバ「Dell EMC PowerEdge」は、インテルやAMDの高性能な最新の第3世代プロセッサーにも対応し、AI対応も可能なGPU搭載機も含め、製品ラインアップが豊富であり、多種多様なCAE/HPCニーズに応えることができることも、国内外の多数の導入実績につながっている。
HPC & AI Innovation Labを設立して以来、ベンチマーク環境の拡充にも努めるデル・テクノロジーズ。前述の通り、現在HPC & AI Innovation Labのベンチマーク環境は、インテル系のZenithとRattler、そしてAMD系のMinervaの3つのクラスタから構成されており、顧客企業はこれらを無償で利用できる。
Zenithは、TOP500にランクインするほどの大規模クラスタシステムで、インターコネクトにMellanox製InfiniBand HDR100を採用し、CPUはインテルの第2世代Xeonスケーラブル・プロセッサー(Cascade Lake)、第3世代Xeonスケーラブル・プロセッサー(Ice Lake)を準備している。同じくインテル系CPUを搭載したRattlerは計算サーバのクラスタで、インターコネクトはMellanox製InfiniBand HDR100を採用し、GPUにNVIDIA A100を搭載する。そして、2019年に新たに追加されたMinervaは、合計約80ノードから構成されるAMD系のクラスタで、第2世代EPYCプロセッサー(Rome)、第3世代EPYCプロセッサー(Milan)の各種CPUを取りそろえているのが特徴だ。
これらHPC & AI Innovation Labのベンチマーク環境を活用することで、適切なシステム構成を検討できるわけだが、その際に重要となるのが市販のISV(Independent Software Vendor)アプリケーションを用いて、解析内容の特性や顧客要求に応じた検証まで踏み込んで行えるかどうかである。
HPC & AI Innovation Labでは、市販の主要ISVアプリケーションを常時整備しており、例えば、流体解析であれば「Ansys Fluent」「Simcenter STAR-CCM+」、衝突解析であれば「LS-DYNA」や「Abaqus/Explicit」、構造解析であれば「Ansys Mechanical」「Nastran」、電磁界解析であれば「Ansys HFSS」などを利用できる(利用の際は、顧客自身でISVからライセンス借用手続きを取る必要がある)。
さらに、利用可能なISVアプリケーションの中には、標準モデルでのベンチマーク結果が無償公開されているものも多数あり、例えば、インテルの最新CPUである第3世代Xeonスケーラブル・プロセッサー環境でのSimcenter STAR-CCM+のパフォーマンス情報などを、いち早く入手することができる。各種ベンチマーク結果については、デル・テクノロジーズのWebサイトにある[デジタル製造]セクションの情報をご覧いただきたい。
また、HPC & AI Innovation Labが共有システムであるのに対して、顧客ニーズに合わせたカスタムシステムによるベンチマーク環境を提供する用意もある。例えば、HPC & AI Innovation LabにはないSKUを準備することが可能で、大容量メモリやNVMeの利用といった要望に応じて、顧客個別仕様に合わせたベンチマーク環境を提供することが可能だ。
目的の解析分野によって、プログラム実行性能に影響するハードウェアリソースや求められるシステム構成は大きく異なる。デル・テクノロジーズであれば、長年HPCに携わってきた豊富な経験とノウハウ、そして、主要ISVアプリケーションが整備されたHPC & AI Innovation Labのベンチマーク環境を最大限に活用することで、解析分野別の性能傾向を踏まえた最適なシステム構成を顧客企業へ提案することができる。
デル・テクノロジーズは、CAE活用に関する顧客要望に対して、ワークステーションからサーバまで、幅広いニーズや用途に対応できるITインフラソリューションを豊富に取りそろえている。例えば、CAEを活用した解析業務のテレワーク対応に向けて、GPUを搭載したvGPUサーバの提供も可能だ。また、CAE環境で高いパフォーマンスを発揮するAMDプロセッサー搭載サーバも幅広く取りそろえているため、解析分野に応じた最適なシステムを提案することができる。
さらに、CAE活用の次のステップとして必須なAIサーバへのニーズにも多種多様なラインアップで応える。サポートにおいても、ワークステーションからCAE解析/HPC用サーバに至るまで、宮崎県に設置しているカスタマーセンターと首都圏に設置しているグローバルコマンドセンターを起点に、国内の専門のサポートスタッフが受付からトラブル解決まで一貫して対応できる。これにより、障害発生時にも、ワンストップで迅速に問題を解決できるのが魅力だ。CAE向けITインフラの構築を検討される際は、ぜひデル・テクノロジーズに問い合わせいただきたい。また、検討の際には無償公開しているISVアプリケーションのベンチマーク結果([デジタル製造]セクションより)の情報も活用してほしい。
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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年10月26日