「あの予備品どこ、前の修理は誰」「復旧対応また出張…」三菱電機の新提案が解決:生産設備の保全/保守をスマート化
人手不足や熟練者の退職が進む中、製造現場では設備保全/保守業務の属人化や情報分断が大きな課題となっている。こうした状況に対し、三菱電機はFA領域のデジタルサービス群FAデジタルソリューションの一環として「スマート保全サービス」と「遠隔保守サポートサービス」の提供を開始した。工場内の設備/部品情報や保全作業記録、装置メーカーが把握する納入後の装置データを活用することで、「止まらない工場」の実現と装置メーカーのアフターサービス高度化を支援する。
製造業では深刻な人手不足に加え、熟練技術者の退職に伴う技能継承に課題が生じている。現場には異なるメーカーや新旧の設備が混在し、制御プログラムや稼働データが工程ごとに分断、サイロ化しているケースも多い。さらに製品のコモディティ化が進む中で、顧客のニーズはFA機器単体の性能向上から、製造ライン全体の効率化や工場運営の高度化へと広がっている。
こうした現状に対し、三菱電機は従来のFA機器提供にとどまらず、設計から製造、保守に至る業務プロセス全体のデータを循環させるSaaS型の「FAデジタルソリューション」を展開している。
FA領域で培ってきた現場ナレッジにデジタル技術やAI(人工知能)を掛け合わせ、同社のデジタル基盤「Serendie」を活用することで、オープンなデータ連携を実現。その上で、課題探索からDX(デジタルトランスフォーメーション)ロードマップの作成、現場導入、運用定着まで一貫して伴走し、自律的に経営課題を解決できる生産現場への変革を支援する。
その取り組みの一環として、三菱電機は2026年5月に「スマート保全サービス」と「遠隔保守サポートサービス」の提供を開始した。いずれも保全/保守領域を対象とし、前者は工場内の設備保全や予備品管理を支援し、後者は装置メーカーの装置納入後のアフターサービスを支援する。
予備品管理から定期保全までを支援――スマート保全サービス
スマート保全サービスは、工場の保全業務向けの設備/部品管理クラウドサービスだ。保全対象の設備を軸に、使用部品や予備品、保全作業の記録、図面、マニュアルなどを一元管理し、必要な情報を現場ですぐに活用できる環境を提供する。
保全業務の現場では、予備品の所在不明や欠品、図面/設備マニュアルの散在、トラブル対応の属人化といった課題が根強い。特に予備品管理はいまだ紙やExcelで運用している企業も多く、独自システムを構築していてもサーバの更新や維持管理が負担になりやすい。
三菱電機 横断事業推進プロジェクトグループ 統合ソリューション開発センターの妹尾拓実氏は「既存の保全管理サービスでメンテナンスや定期点検の記録を残していても、部品管理まで細かく対応できていないケースがあります。そのため、どの作業でどの部品を使ったのかをひも付けて、修繕費や設備のランニングコストを把握したいというニーズも寄せられています」と説明する。
一元管理で予備品探しを時短、設備カルテでトラブル早期復旧
スマート保全サービスの主な活用シーンは「予備品管理」「トラブル対応」「定期保全」の3つだ。
予備品管理では、設備の部品とその予備品、保管場所をそれぞれひも付けることで、緊急時に「何が、どこに、何台あるのか」をすぐに確認できる。拠点ごとに個別管理されがちな予備品情報もクラウド上で一元的に扱えるため、他拠点の在庫状況も把握しやすい。
三菱電機製品に加え、他社品を含むFA機器の生産中止情報や代替機種情報もサービス上で随時更新、確認できるため、故障時に部品を発注しようとして初めて生産中止に気付く、といったリスクも抑えられる。扱う製品情報は、現場への影響が大きい機種を優先しながら今後も拡充する。
日々の運用では、入荷した予備品や棚などに対応したQRコードを発行し、スマートフォンやタブレット端末から入出庫情報を登録できる。QRコードの活用は必須ではなく、CSVで取り込んだ台帳データを検索できるため、現場の運用に合わせて活用できる。
トラブル対応では、図面やマニュアル、過去トラブル、交換履歴などを設備ごとの“カルテ”として蓄積し、必要な情報にすぐアクセスできる。紙資料もPDF化して設備情報と連携させることで、現場で必要な情報を探しやすくし、復旧対応の迅速化を支援する。製造現場の作業者が設備のQRコードを読み取り、異常画面の写真などを添えてトラブル情報を共有できるため、保全部門は状況を把握した上で対応に入れる。
定期保全では、点検や部品交換などの計画を登録し、作業者ごとのタスク分担や進捗ステータスを可視化できる。計画と実績を一元的に管理することで、点検や交換作業の抜け漏れを防ぎ、保全活動の標準化を支援する。
こうしたサービスを現場で定着させるには、操作性や運用面での柔軟性も重要になる。妹尾氏は「現場作業者の使いやすさを重視しながら開発を進めています。お客さまごとに既存の運用があるため、使い方を一方的に押し付けるのではなく、今の運用を自然に置き換えられる余地を残すことも意識しています」と強調する。
加えて、今後はAIの活用も進めていく。現時点では、データ入力の補助や蓄積データの検索、簡易分析などが中心だが、将来的には適正在庫の算出支援や、過去のトラブル履歴を基にした対応支援などにも活用範囲を広げていく。「保全情報をより実務に生かしやすい形へ発展させることで、後手に回りがちな保全作業をトラブル対応から計画対応中心へと移行させ、“止まらない工場”の実現を支援します」(妹尾氏)。
装置メーカーのアフターサービス高度化――遠隔保守サポートサービス
遠隔保守サポートサービスは、生産ラインの設備を製造、納入する装置メーカーのアフターサービス業務を支援するクラウドサービスだ。現場導入後の装置の状態監視やトラブル対応、消耗品交換の提案などを遠隔でできるようにする。
生産設備は一度納入されると長期間使われることが多く、装置メーカーは年数が経過した既設装置も含めてアフターサポートを担い続けている。
三菱電機 FAシステム事業本部 FA Serendie事業開発センターの枡田圭祐氏は「サポート対象となる装置の種類や台数は増え、装置自体も高度化しています。一方で、労働人口の減少などにより、対応できるリソースは限られています。今と同じ品質のアフターサポートを維持していくには、業務の効率化が欠かせません」と指摘する。
遠隔保守サポートサービスでは、納入後の装置の稼働状況やアラーム、消耗品の状態などをダッシュボードやレポートで可視化できる。保全カレンダーや装置リストなどの機能も備え、装置メーカーのアフターサービス高度化を支援する。主な活用シーンは「装置の復旧支援」と「予防保全」だ。
リモート接続で早期復旧支援、突発停止もリスク低減
装置の復旧支援では、トラブル発生時にメールで異常を通知し、ダッシュボードでアラームや稼働状況、過去の保守履歴を確認する。必要に応じて装置へリモート接続し、遠隔で復旧できる場合はリモート接続したまま対応する。
従来は、電話やメールで問い合わせを受けても装置の状態を正確に把握しにくく、現地確認後に部品や作業内容を準備して再訪問するなど、多くの工数がかかる場合があった。
枡田氏は「現地対応が必要な場合でも、事前に装置の状態を把握できれば、必要な部品や作業内容を準備した上で現場に向かえます。装置メーカーにとっては移動やコミュニケーションにかかる負荷を減らせますし、エンドユーザーにとっても装置のダウンタイム短縮や生産性向上につながります」と説明する。
予防保全では、装置内の消耗品の状態をデータとして収集し、定期的にレポートとしてエンドユーザーへ配信することで、交換が必要なタイミングを定量的に提案できる。突発停止のリスク低減につながるだけでなく、代替品の使用が原因で発生する装置トラブルを抑え、純正消耗品の継続的な提供やアフターサービスの価値向上にもつなげる。
自主ブランド展開で装置メーカーの新たな収益源にも
遠隔保守サポートサービスの強みは、三菱電機自身が装置メーカーとして遠隔保守に取り組んできた知見を、他の装置メーカーが活用できる形でパッケージ化している点にある。
三菱電機は2016年から、自社のレーザー加工機や放電加工機向けにリモートサービス「iQ Care Remote4U」を展開しており、その運用ノウハウが遠隔保守サポートサービスにも反映されている。
装置メーカーが同様の仕組みを自社開発しようとすれば、開発費や期間、運用負荷が大きくなりやすい。同サービスであれば、三菱電機が実際の遠隔保守で培ってきた仕組みを活用しながら、まず社内で小さく試し、エンドユーザーと検証した上で本格運用へと広げられる。
さらに最終ステップとして、装置メーカーが自社ブランドのアフターサービスとして外販し、装置メーカーの新たな収益源へと育てる展開も見据える。
ログイン画面やロゴ、メールアドレス、URLなどを装置メーカー独自のブランドに合わせて変更でき、自社のアフターサービスとしてエンドユーザーに提供しやすい。装置メーカーとエンドユーザーの間でデータを共有することを前提に、アクセス権限や開示範囲も双方で細かく設定できる。
現場のリアルな課題に寄り添い、顧客とともにエコシステムを築く
三菱電機は今後、現場課題を解決するFAデジタルソリューションのラインアップをさらに拡充する。次の段階では、OT層のデータとITシステムの連携を深め、マルチベンダー環境下でのデータ統合を加速させる。さらに、OTセキュリティ技術なども融合し、安全でオープンな製造エコシステムの確立を目指す。
今回提供を開始した2つのサービスは、こうした構想を保全/保守領域から具体化するものだ。スマート保全サービスは、現場に蓄積されてきた保全の知見をデータとして活用し、継続的な改善につなげる役割を担う。「クラウドサービスの強みは、リリースして終わりではなく、お客さまと一緒に育てていけることです。現場の“泥くさい課題”と向き合い、実際の運用に即した、本質的に価値ある機能を実現したいです」(妹尾氏)。
他方、遠隔保守サポートサービスは、納入後の装置データを活用し、装置メーカーがデータに基づく価値提供へ踏み出すための基盤となる。「循環型デジタルエンジニアリングは、三菱電機だけが実現すればよいものではありません。日本の製造業全体が強くなるためには、装置メーカーの皆さまもデータを蓄積し、データに基づいた価値提供や経営判断につなげていくことが重要です。遠隔保守サポートサービスは、そのための基盤として活用していただけます」(枡田氏)。
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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年7月28日







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