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産業界に広がるゲームエンジン活用 デジタルツインでモノづくりのDXを推進クボタ、マツダ、SUBARUも採用

ゲームの統合開発環境として作られたゲームエンジンがDXのカギを握る“デジタルツイン”の実現に活用され始めている。ゲームエンジンが製造業にもたらすインパクトについて、シリコンスタジオに話を聞いた。

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 CG(コンピュータグラフィックス)を活用したアプリケーションやコンテンツの開発に必要とされる3D描画や物理演算、アニメーションといった主要な処理を実行するゲームエンジン。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)ベースで高品質な3Dグラフィックスを比較的簡単に作成できるツールやライブラリなどがそろっていることから、ゲームや映像コンテンツのみならず、自動車業界に代表される製造業や建築業界といった幅広い産業分野でも活用が広がっている。

 産業分野でのゲームエンジン活用を他に先駆けているのがシリコンスタジオだ。CG技術で世界をリードした米Silicon Graphicsの日本法人である日本SGIの関連会社として、リアルタイムグラフィックス関連事業を幅広く展開することを目的に、1999年11月に設立された同社は、主にゲーム&エンターテインメント業界向けに3D CG技術などを提供してきた。近年はこれまで培ってきたリアルタイム3D技術や体制を生かし、製造業をはじめとする非エンターテインメント領域に対してもゲームエンジンを活用したソリューション構築や開発支援を行っている。

ゲームエンジンはモノを取り巻く世界までもリアルに再現できる

 現在、あらゆる産業分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた動きが加速しており、仮想空間でのシミュレーションやレビューなどに効果を発揮するデジタルツインの構築ニーズが高まっている。このデジタルツインの構築において威力を発揮するのが「Unreal Engine」や「Unity」に代表されるゲームエンジンだ。

 デジタルツインの構築にゲームエンジンを活用するメリットについて、シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長の向井亨光氏は「特筆すべきは“モノを取り巻く世界の再現性”です。製品の形状だけを見るのであれば3D CADでも十分ですが、街の中で人に製品を持たせた場合にどのように見えるのか、風景の中で構造物や建物がどのように見えるのかなど、さまざまなシチュエーションの中でのモノの見え方を確認したい場合は、その周りにある空間や背景といった要素が重要になります。3D CADではモノそのものの形しか表現できませんが、ゲームエンジンであればそのモノを取り巻く環境、物理現象までも仮想空間の中でリアルに再現でき、限りなく現実に近い形でシミュレーションやレビューをすることが可能となります」と説明する。

シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長の向井亨光氏
シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長の向井亨光氏

 高度なデジタルツイン環境を容易に構築できる点もゲームエンジン活用の大きな強みだという。シリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏は「3D CGを用いた仮想空間でのシミュレーションやレビュー環境などを一から開発するとなると膨大なコストと時間を要します。しかしゲームエンジンであれば、3Dビジュアライゼーションに必要なツールやライブラリなどが用意されており、非常に効率良く開発を進められます。多くの費用と時間をかけて一から開発するよりも圧倒的に早く、リーズナブルなコストで再現性の高いソリューションを構築できるため、PoC(概念実証)にも適しています」とゲームエンジン活用の効果について語る。

シリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏
シリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏

産業分野でのゲームエンジン活用をけん引する自動車、建築業界

 産業分野におけるゲームエンジン活用をけん引しているのは自動車、建築業界だという。自動車業界では走行/ドライビングシミュレーターやデザインレビュー環境の構築にゲームエンジンを活用する動きが出てきている。デザインレビューでは「静止している状態ではなく、実際にクルマが街中などを走行している様子を見ながらレビューしたいなどニーズが高度化しており、既存のデザインレビューシステムでは対応が難しいことからゲームエンジンの活用に注目が集まっています」(向井氏)。

 建築業界では、工事の進行状況を3Dビジュアライゼーションで確認したいというニーズからゲームエンジン活用への関心が高まっている。BIMデータや点群データなどをゲームエンジンに取り込み、現場の最新状況を3D CGで仮想空間に再現する工事進捗(しんちょく)レビュー環境を実現しようというものだ。

 機械学習による学習/検証においてもゲームエンジンの活用がますます重要な役割を果たしていくという。工場の生産ラインでの外観検査や不良品検知などをAI(人工知能)/画像認識で実現する場合、大量の教師データ(画像)を用意しなければならない。だが不良がめったに起きず教師データを思うように集められないといった課題がある。実写さながらのリアルなCG表現が可能なゲームエンジンを用いれば、少量のサンプル画像から疑似的に大量の不良画像を生成し、教師データとして有効活用できる。

 シリコンスタジオは、ゲームエンジン活用のためのコンサルティングから企画、設計、開発、運用までをワンストップで提供しており、既にさまざまなソリューションを世に送り出している。

シリコンスタジオが誇る3つの強み

 ゲームエンジンを活用した受託開発やソリューションを提供する企業は他にもあるが、シリコンスタジオには他の追随を許さない3つの強みがある。

 1つ目は、3D CGに関する豊富な実績と知見だ。シリコンスタジオは3D CG技術のエキスパートとしてゲーム会社や3Dアニメーション、映画などのコンテンツ制作会社に技術提供や開発支援を行ってきた。特にゲーム業界に展開してきた各種ミドルウェアは、数多くの著名なゲームタイトルに採用された実績がある。「前身の日本SGI時代からCAEシステムの構築などを通じて製造業と深く関わってきたこともあり、業務プロセスなども熟知しています。このようなバックグラウンドを持っている点も当社の強みだと言えます」(向井氏)

 2つ目は、ゲームエンジンを熟知した開発力だ。既存の3D CADやデザインレビューツールの3Dデータ資産をゲームエンジンに取り込む際、「マテリアルのデータが引き継がれない」「一部の情報が欠損して正しく再現できない」といった問題が起こり得る。向井氏は「ゲームエンジンが標準で提供しているデータ変換ツールを独自に拡張し、3Dデータ取り込み時の情報の欠損を最小限に抑えています。同時に、ゲームエンジンのマテリアルライブラリを独自に整備することで取り込み時の色の欠損をなくし、高い再現性とクオリティーを担保しています。こうした拡張や踏み込んだカスタマイズが可能なところも、ゲームエンジンの奥深くまで知り尽くしている当社の強みです」と説明する。

データ変換ソリューションについて
図1 データ変換ソリューションについて[クリックで拡大] 提供:シリコンスタジオ

 3つ目は、ゲームエンジンの技術面に造詣が深い、「テクニカルアーティスト」と呼ばれるデザイナーが在籍していることだ。「このようなデザイナーが在籍している企業は他にはないと自負しています。当社は使い勝手に直結するパフォーマンスまで考慮したソリューション提案が可能です」と神鳥氏は強調する。

クボタ、マツダ、SUBARUも採用するシリコンスタジオのソリューション

 日本を代表する大手製造業がシリコンスタジオのソリューションを続々と採用している。

 シリコンスタジオは2022年2月、クボタ向けに製品検査に使用する機械学習用CG画像合成ツールを「Unreal Engine 4」を用いて開発した。3Dの不良種画像と2Dの背景画像を合成して学習用CG画像を生成することで、不良品の現物を用意することなく製品検査用AIの機械学習を短期間で完了させた。

クボタが採用した製品検査向け機械学習用CG画像合成ツールの画面イメージ
図2 クボタが採用した製品検査向け機械学習用CG画像合成ツールの画面イメージ[クリックで拡大] 提供:シリコンスタジオ

 2022年6月には、マツダ向けに自動運転技術開発用合成データ生成/編集ツールを開発した。環境認識/認知領域における深層学習アルゴリズム検証用の教師データ作成を支援するもので、道路や線路などのインフラ構造物を主体とする「ベースデータ」、建物や樹木、遠景からなる「背景データ」、車両や信号機、標識などの「アセットデータ」を合成して景観データを生成した。「自動運転の実現のためにはあらゆる環境下での膨大な走行データを集める必要があります。大雪の東京の街並みや倒木といった、現実に発生させることが困難なレアケースを仮想空間でリアルに再現し、その走行データを教師データとすることで自動運転のロジック強化に貢献しています」(向井氏)

 2023年1月にはアルゴグラフィックスとの協業により、SUBARU向けに走行デザインレビューシステムを開発した。Unreal Engine 4を使用して開発したシステムにSUBARUの3D車両モデルデータを取り込むと、走行状態を再現可能なデータに変換。実車がワインディングロードなどを実際に走行しているシーンをリアルタイム3D CGで描画する。SUBARUのリクエストに応え、引き続き「Unreal Engine 5」を活用したさらなる高品質化、車両挙動のリアリティーの追求、悪路の走行における砂利や粉じんなどのエフェクト追加といった、デザインレビューの幅を広げる取り組みを継続して進めている。

アルゴグラフィックスとの協業でSUBARU向けに開発した走行デザインレビューシステムの活用イメージ
図3 アルゴグラフィックスとの協業でSUBARU向けに開発した走行デザインレビューシステムの活用イメージ[クリックで拡大] 提供:シリコンスタジオ

 製造業からの引き合いも増えている。「製品を使用したユーザーの体験(UX)をデジタルツインで検証したいといった要望もあります。モノからコトへのシフトが叫ばれる中、製品を使った際の反応などを広い意味でシミュレーションしたいといったケースにも当社のソリューションが活用されています」と神鳥氏は説明する。

 DXに取り組む顧客ニーズの広がりとともに、今後も産業分野におけるゲームエンジン活用が進むことは間違いない。このときシリコンスタジオのソリューションが大きな力になるはずだ。「『ゲームエンジンで何ができるのか?』『どういう見せ方ができるのか?』などやりたいことがまだ明確ではない段階でもぜひご相談ください。当社には漠然としたニーズを具現化する力があります。お客さまが一番実現したいことを明らかにした上で、それに応えるソリューションをご提案致します」(向井氏)

左からシリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏、同社 テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長の向井亨光氏
左からシリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏、同社 テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長の向井亨光氏

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提供:シリコンスタジオ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年3月23日

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