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ソフトウェアオリエンテッドな組み込み開発で卓越した成果を上げるにはIAR×ルネサス対談

VUCAの時代を迎える中で、組み込み機器の開発では、よりソフトウェアを重視するソフトウェアオリエンテッドな開発への移行が進みつつある。そこで、IARシステムズの原部和久氏とルネサス エレクトロニクスの伊藤栄氏に、ソフトウェアオリエンテッドな組み込み開発をテーマに語ってもらった。

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 VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代といわれる中で、組み込み機器の開発も大きな変革が迫られつつある。例えば、マイコンなどのハードウェアに最適化する形でのソフトウェア開発から、よりソフトウェアを重視するソフトウェアオリエンテッドな開発への移行が進みつつある。

 そこで、統合開発環境「IAR Embedded Workbench」で知られるIARシステムズ株式会社(以下、IAR) 代表取締役社長の原部和久氏と、大手マイコンベンダーであるルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス) IoT・インフラ事業本部 IoTプラットフォーム事業部 事業部長の伊藤栄氏のお二人に、ソフトウェアオリエンテッドな組み込み開発をテーマに語ってもらった。

20年を超えるIARとルネサスの関係性

IARシステムズ株式会社 代表取締役社長の原部和久氏
IARシステムズ株式会社 代表取締役社長の原部和久氏

原部氏 ルネサスとの関係は20年を超える長きにわたります。IARはCコンパイラやデバッガを提供するという立場で、ルネサス製品をグローバルにサポートしていますが、最近ではローカル、つまり日本国内での協業が随分増えております。実はIARの日本法人は19期連続で増収を達成しているのですが、ルネサスとの協業がこの増収に大きく貢献していると考えています。

伊藤氏 私は1984年に三菱電機に入社してからずっとマイコン畑におります。IARと最初にお付き合いしたのは、確か16ビットの「7700シリーズ」だったかと記憶していますが、それ以来ずっとパートナー関係を結んで一緒に成長させていただきました。当初より、われわれが開発したマイコンのサポートを二つ返事で全てサポートするなど、非常にポジティブなスタンスで対応していただけるのが、ここまで長い期間協業関係を築けている理由かと思っています。

 もともとルネサスは、大手ベンダーとして最後まで独自のCPUコアにこだわっていました。ただ昨今は、CPUコアそのものよりも周辺回路やソフトウェアを含めたソリューションなどの総合力での争いになってきています。もはや、CPUコアは部品の一つであり、お客さまの好みで選べばよいという状況ですね。ルネサスも、もう独自CPUコアに拘らず、Armコアを使って周辺回路やソフトウェア、ソリューションなどで差別化を図る方向に舵を切りました。そこで、IARが引き続きルネサス製品をサポートしてくれたことが、この戦略転換の成功要因の一つになったと確信しています。

プラットフォームが採用基準に

原部氏 以前は、組み込み=マイコンでしたが、最近ではマイコンとMPUの区別が非常に難しくなってきました。これと同時にマルチコアやマルチOS、あるいは機能安全などのニーズも出てくるようになりました。新たにRISC-Vにも注目が集まるなど、さまざまな要素が加わって非常に複雑化しています。

 その結果、お客さまの採用基準も、特定の製品開発にしか使用できないような最適化されすぎたハードウェアや開発ツールではなく、どちらかというと高いスケーラビリティを確保したプラットフォーム、つまりハードウェアとソフトウェア、ツールチェーンを柔軟に組み合わせたものに移りつつあります。組み込み製品開発において、その採用基準が目の前の開発プロジェクトから、先々起こり得る半導体変更や機能拡張といった未来のプロジェクトまで見据えるようになったのは、重要な転換であると感じています。とはいえ、既存のハードウェアや開発環境から新たなプラットフォームに移行するのは容易ではないのですが、昨今の半導体需要の急増に伴い「抜本的に変えなければならない」ということで、さまざまな相談を受けるようになっています。

 ツールチェーンを採用する際に、未来を基準として考えた場合、「IARを使えばどんなプラットフォームでも利用できる」というのはお客さまにとって安心材料であり、IARにとって最大のバリューとなります。その意味では、ルネサスがArmベースの「RA」をラインアップしたことは大きな意味がありました。最近では、「RL78」や「RX」を使っていたお客さまがArmマイコンに移行してからまた戻る、なんていうこともあるわけですが、この際に半導体まで置き替えるのはいろいろな意味で大変です。ところが今は、ルネサスがRAを提供しているので置き替えが楽になったと思いますし、IARもお客さまがソフト開発や移植に関して悩みを持っていれば積極的にサポートします。これはルネサスが2022年内に投入を予定しているRISC-Vについても同じことだと考えています。

ルネサス エレクトロニクス株式会社 IoT・インフラ事業本部 IoTプラットフォーム事業部 事業部長の伊藤栄氏
ルネサス エレクトロニクス株式会社 IoT・インフラ事業本部 IoTプラットフォーム事業部 事業部長の伊藤栄氏

伊藤氏 お客さまにとってCPUのコアを変えるというハードルは随分下がってきていると思います。もはやアセンブラを使ってプログラムを書くという時代でもないですし、むしろマイコンを変えてもツールを変えたくないという要望の方が強いのではないでしょうか。

 それから、今は情報が全部ネット経由で集められる時代ですので、昔のようにお客さまに呼ばれて対面で情報をお伝えするという状況ではない。逆に言えば、今はネット経由でどれだけ情報を用意できるかということも比較対象になっています。特にここ2年ほどは、コロナ禍の影響もあって対面での打ち合わせの機会は激減しました。そこで、ルネサスもネットコンテンツの増強に努めています。

 それと、ルネサスはこれまで組み込み分野でのセキュリティ対応に注力してきましたが、以前はお客さまが興味を示しつつも「どう使っていいのか分からない」という反応でした。最近は、お客さまの製品にどのようにセキュリティをあてはめるのかという具体的な相談を受けることが多くなってきました。これは組み込み機器でコネクティビティが必要になってきたことが一つの理由だと思います。そういう背景もあって、現在ルネサスの汎用マイコンのほとんどの製品にセキュリティIPが搭載されています。

 ちょうど3〜4年前のセキュリティと同じ位置付けにあるのがAI(人工知能)ですね。今はお客さまが興味は示されているのですが、具体的に組み込みアプリケーションとしてどう活用するのかを試行錯誤されているという状況です。ただこれも、数年後には花咲くのではないかと。

 RISC-Vの採用は、先ほども言った通り、CPUコアはお客さまの要望に合わせていろいろなものを提供するという戦略転換に沿ったものです。まずは特定用途向けのASSPという形で提供する予定です。

複雑化する組み込みシステムへの対応には経営層の理解が必須

原部氏 先ほど、現在のトレンドとしてのスケーラビリティに触れましたが、まだ実際の開発の現場では最小のメモリ構成でプログラムは最初からフル最適化というケースは少なくありません。こういう状況でCPUコアやプラットフォームの変更は至難の業です。最近はルネサスをはじめ半導体ベンダーがさまざまなプラットフォームを用意していますが、既存の資産が足かせになって移行できないという課題があります。

 また、お客さまの中でも現場エンジニアよりも上位の経営層に近い方々に、この組み込みシステム向けのプラットフォームというものを正しく認識していただく必要があります。既存の開発現場に、新しくプラットフォームを導入するには、相応のコストやリソースが必要になります。今後も組み込み開発で競争力を維持していくためには、セキュリティ対応も含めて、このコストが不可避であることを納得してもらえなければなかなか移行が進まないことになります。

伊藤氏 昔の組み込みエンジニアは、メカ制御とそのクリティカルパスの最適化などに注力していましたが、今はそれらに加えてセキュリティや通信、UI(ユーザーインタフェース)の制御なども入ってきています。われわれは、組み込みエンジニアがやるべき最もクリティカルな業務にいかに集中できるようにするか、言い換えれば、他の部分の負荷をどれだけ減らせるかに向けてソリューションを提供する必要があります。

 そのソリューションの一つにリアルタイムOS(RTOS)があります。やはりクラウドとコネクティビティを考えると、もうベアメタルでの開発からRTOSの利用への移行が必須です。実際に、2021年12月に「Azure RTOS」のセミナーをIAR、マイクロソフトと共同で開催させていただきましたが大変好評でした。

組み込みシステムの多様化に対する打ち手

原部氏 多様化する組み込みシステムに対しては、IARのコアバリューである、幅広いデバイス、幅広いコアのサポートを継続的に強化していかなければならないと感じています。ルネサス製品については、8/16ビットの時代からサポートしていますが、ここ10年で32ビットが主流になり、全ての製品をサポートしています。つまり、お客さまがどんなコアを選んでも同一の開発環境を提供できるので、アーキテクチャやチップの変更が容易というのが、組み込みシステムの多様化に対する打ち手の1つ目になります。

 2つ目が、次第に増えているマルチOS/マルチコアというニーズへの対応です。組み込みシステムである以上、タイミングクリティカルな制御がなくなることはまずあり得ませんが、そういった場合にマルチコアで片方をベアメタル、片方をRTOSで動かし、制御はベアメタル、通信やセキュリティ、UIはRTOS側でという役割分担があります。こういうシステムでは、開発ツールが安定していることが非常に重要で、お客さまに貢献できます。

 3つ目がセキュリティですね。IARのグループ企業であるSecureThingzが提供するセキュリティツールはIARの開発環境に統合可能で、お客さまがご自身では取り組むのが難しいセキュリティ実装の部分をカバーできると考えています。

 最後に、既にご紹介いただきましたが、セミナーについては、好評であったAzure RTOSをはじめ、IARではコロナ禍から実施を始めたハンズオン、セキュリティ、RISC-Vなど、今後もさまざまなテーマでセミナーを検討しています。

伊藤氏 ルネサス製品は、家電や産業向けのモーター制御などにもともとのは強みがありますのでそこは維持しつつ、今後はセキュリティやAIをはじめとした新しい要素をコアテクノロジーとして組み込んでいきます。これは、ハードウェアだけでなくソフトウェアも含んでの話です。

 また、ICパッケージのピン配置を後から自由に変えられる「Smart Configurator」というツールを提供しており。これが好評です。お客さまごとに必要になる周辺機器は全く異なりますが、マイコンそのものに全ての周辺機器をカバーできるだけのピン数はありません。そこで、お客さまが使いたい周辺機器に合わせてピン配置を選択できるようにしたものですが、IAR Embedded Workbenchときちんと連携する形で設定できるようになっています。

 今後もルネサスはさまざまな製品展開を予定していますが、基本的には全製品をIARにサポートしていただきたいと考えております。セミナーなどもより密に共同で実施して行ければと思います。

ルネサスの伊藤栄氏(左)とIARの原部和久氏(右)
ルネサスの伊藤栄氏(左)とIARの原部和久氏(右)。ソフトウェアオリエンテッドな組み込み開発に向けた提案を協力して進めていく[クリックで拡大]

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提供:アイエーアール・システムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年7月20日

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