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スマート工場で広がる画像認識、ディープラーニングがもたらす可能性とは製造現場向けAI技術

人手不足などに苦しむ製造現場では先進デジタル技術を活用したスマート工場化が加速している。その中で重要な役割を果たすのが画像認識技術だ。従来型の画像認識技術に加え、大きく期待されるのがディープラーニング技術である。製造現場で画像認識とディープラーニングを組み合わせることで得られる価値とはどういうものだろうか。

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 人手不足や製品の高度化、多品種少量化など、製造現場を取り巻く環境は厳しさを増している。こうした中、先進デジタル技術の活用により、人手による負担をできる限り低減しながら、効率的で安定したモノづくりを実現するスマート工場化への取り組みが加速している。

 スマート工場化で特に注目を集めている技術が、画像や映像の活用だ。画像認識技術は、特に検査や位置決めなどの工程において以前から使用されてきたが、ディープラーニングなどAI(人工知能)関連技術などを組み合わせることで大きく進化している。これらを活用することで適用領域が大きく広がり、これまで人に頼っていたプロセスを先端デジタル技術で置き換えることが可能となり、生産工程での人的負担を軽減できるため、大きな期待を集めているのだ。

製造現場で画像認識が果たす「GIGI」をさらに進化

 こうした製造現場向け画像認識技術で大きく成長しているのが、米国・マサチューセッツ州に本社を構えるCognex(コグネックス)である。1981年の設立以来、製造現場向けの画像認識製品を展開し、2021年で40周年を迎えたコグネックスでは、「GIGI」という4つの頭文字で表されるキーワードで画像認識の世界を拡張してきた。

 1つ目の「G」は「GUIDE(ガイド)」で、画像認識技術によりモノの位置を認識し正しい作業が行えるようにすることを示している。この分野はコグネックスが以前から強い領域で、半導体製造分野などさまざまな製造工程で導入が進んでいる。2つ目の「I」は「IDENTIFY (アイデンティファイ)」で、文字やバーコード、2次元コードなどの認識を行うことである。コグネックスではこの領域では「DataMan」というブランドで製品展開を進めており、金属部品などに刻印された2Dコードなど難しい認識を可能としている。3つ目の「G」は「GAUGE(ゲージ)」で、寸法計測を示している。カメラで撮影した工業製品を、画像認識技術を使って寸法を測り、製造上の問題を検出するシステムなどを展開する。4つ目の「I」は「INSPECTION(インスペクション)」で画像検査だ。検査領域での画像認識技術の活用は大きな期待を集めているが、ユーザーにより手法や基準が異なるケースが大半で、技術的には非常に難しい分野となっている。

 コグネックスでは製造現場におけるこれらの「GIGI」でカバーする領域の拡大や高度化に取り組み、さまざまな製品を展開してきた。その中で、より容易に製造現場でこれら画像認識技術を活用できるように、用途別のライブラリなどを用意した画像処理ソフトウェアとして2001年にリリースしたのが「VisionPro」である。

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コグネックス フィールドプロダクトマーケティングマネージャの川田正之氏

 「VisionPro」はPCベースの画像処理ソフトウェアで、使用するカメラなどに関係なく、画像処理アプリケーションを活用できることが特徴だ。2次元から3次元まで多様な画像処理アプリケーションを活用でき、幾何学的な対象物の位置認識や検査、識別、測定、アライメント、さらには半導体やエレクトロニクスアプリケーション向けの機能なども用意している。実際に、半導体や電子部品関連業界で数多く採用されている。また「自動車産業でも部品の3次元形状計測などで採用が広がってきた」とコグネックス フィールドプロダクトマーケティングマネージャの川田正之氏は述べている。

 ただ、20年間製品を展開する中で、ソフトウェアそのものの構成が複雑となってきていた他、先進デジタル技術を取り込む必要なども出てきていた。そこで、20年の間に新しく登場した技術を網羅しリニューアルしたのが「VisionPro10.0」である。

3つの点を強化した「生まれ変わるVisionPro」

 「VisionPro10.0」は、「生まれ変わるVisionPro」をキャッチフレーズに主に3つの点について強化を行った。具体的には「プラットフォームの刷新」「インタフェースの刷新」「ディープラーニングとの融合推進」である。

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新たなシステム構成のイメージ(クリックで拡大)出典:コグネックス

 1つ目の「プラットフォームの刷新」は運用環境の改善を目指したものだ。従来は、ソフトウェアフレームワークとして、マイクロソフトの「.NET Framework」を採用していたが、新たに「.NET Core」に入れ替えた。「.NET Core」は「.NET Framework」の後継に位置付けされているプラットフォームで、メモリを管理するガベージコレクションの効率化が図れるなど、より安定した運用が可能となる。

 さらに今回「.NET Core」も「.NET Framework」も介さずWindowsに直接アクセスできるような環境も用意した。C++言語で直接開発し、用途に応じた柔軟な運用環境を構築できる。「われわれのソフトウェアは生産ラインで使われます。ラインの稼働が不安定になったり、停止したりすると大きな損害につながることもあり、それだけに安定性は重要です。例えば、高速で流れるワークを画像検査し、不具合品をラインからはじくというようなシビアなリアルタイム制御を要求されるような環境では、『.NET Core』で定義される環境でも実現が難しい状況もありました。そこで、メモリの割り当てなどをカスタム開発することで最適な環境を用意できるようになります」と川田氏は述べている。

 2つ目の「インタフェースの刷新」では、「VisionPro」のアプリケーション開発で活用する「QuickBuild」などのユーザーインタフェースに対し、先進のデザインや技術を取り入れたものとなる。具体的にはデザインを刷新した他、タブ型のインタフェースを採用し、操作性を高めている。また、画像処理のフローなどもGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)によりコーディングなしで構築できるようにしている。「20年の歴史を刻む中で時代に合わなくなった操作体系などもありました。こうしたものを最新のものとすることで、より開発者が直感的に操作しやすくしています」(川田氏)。

 3つ目の特徴が「ディープラーニングとの融合推進」である。従来のパターン型の画像処理とディープラーニングを組み合わせた開発をより行いやすくしている。その1つとして、「QuickBuild」にディープラーニングのライブラリを融合させた。これによりパターン認識に強い従来型の画像認識システムと、ディープラーニングを同じ開発アプリケーションでコーディングをできる限り少なく開発できるようにしている。「ディープラーニングの用途や種類を選択するだけでプログラミングなく使用することができます」と川田氏は利点について述べている。

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QuickBuildからディープラーニングのライブラリにアクセス可能(クリックで拡大)提供:コグネックス

 さらに、この開発環境による思想を発展させ、製造現場において従来型画像認識とディープラーニングの組み合わせが有効活用できる典型的な利用シーンをイメージし、それに対応した仕組みをパッケージ化して1つのツールとして提供するのが「Smart ツール(スマートツール)」だ。

 「従来型の画像処理は正確にモノの位置を求めることや、計測することには優れています。一方で、ディープラーニングはそこまで正確性はありませんが、学習による検査や分類などの機能で強みがあります。この従来型の画像処理技術と精度に、ディープラーニングの柔軟性を組み合わせて、画像処理のツールとして一括で提供できるようにします。また、ディープラーニングでは、計算処理能力が必要となりGPU(Graphics Processing Units)が用いられるケースが多く、現場で使用するためには難しさもありましたが、スマートツールでは一括開発により、プログラムのコンパクト化も実現しているため、GPU不要で学習や実行が行えます」と川田氏は意義について語る。

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「Smart ツール」で狙う従来型の画像処理とディープラーニングを組み合わせた領域(クリックで拡大)提供:コグネックス

第1段として直線の種類を分類する「Smart Lineツール」の提供開始

 この第1弾として今回「VisionPro10.0」に採用したのが「Smart Lineツール」だ。これは従来技術だけでは画像認識が難しい複数の直線成分がある環境の位置決めを、ディープラーニングを組み合わせることにより、高精度で認識できるようにしたものだ。

 例えば、スマートフォン端末の製造工程の場合、画像で見るとフレーム端も直線となり、貼られているフィルムの端も直線成分となる。人が判断すれば簡単なものだが、これを機械で自動認識させる設定が非常に難しかった。「Smart Lineツール」では、従来型の画像認識技術で正確に位置を認識し、ディープラーニングの特徴を生かして直線成分の分類を行った。直線の分類などが的確である一方、位置計測も正確に行えるようになったという。そのため「既に先行ユーザーからは高い関心が寄せられており、反響も大きくいただいています。半導体や電子部品関連の組み立て、加工工程で威力を発揮すると考えています」と川田氏は述べている。

 コグネックスでは、今後はこの「Smart Lineツール」の他、新たな「スマートツール」の開発を推進し「VisionPro10.0」に採用していく方針だ。「ユーザーにヒアリングしながら従来型の画像処理ではパラメータの調整が難しいというものを優先してスマートツールとして出していく」(川田氏)。

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「Smart Lineツール」の活用イメージ(クリックで拡大)提供:コグネックス

ディープラーニングにより理想のスマート工場実現へ

 コグネックスでは、「VisionPro10.0」を通じてディープラーニングと画像認識技術を組み合わせることで、理想のスマート工場実現への支援を強化していく方針だ。

 例えば、工場の溶接工程の画像検査では、従来は溶接の検査結果を良品と不良品を分け、良品だと次の工程に送り、不良品だと廃棄するという運用がほとんどで「不良品を次工程に送らないためだけ」で終わっていた。しかし、ディープラーニングにより学習を生かした形で分類を行えるようになると「不良がピット(開口欠陥)によるものか、サイズの大小なのか、焦げがあるなどの欠陥なのかを判別できるようになります。すると欠陥の種類によって、それがピットによるものであれば、ピットの原因である水分の混入対策を行うなど『不良をそもそも出さない』ための工程改善につなげられます」と川田氏は価値について強調する。さらに、不良と工程の因果関係が定義できれば「うまくいけばこれらのフィードバック制御が自動で行えるようになるかもしれません」(川田氏)。

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スマートファクトリーでの溶接工程での活用イメージ(クリックで拡大)提供:コグネックス

 コグネックスでは、真のスマート工場は「完全なヒューマンレス」だと位置付けており「製造現場から上位システムまでデジタルプラットフォームが階層に関係なく接続、連携し、生産工程が自動的に管理され実行される環境」(川田氏)としている。こうした理想を実現するまでの道のりはまだまだ長いが、そのカギを握るのがディープラーニングを組み合わせた画像認識技術であることは間違いない。

 「VisionPro10.0」のようにディープラーニングと画像認識技術を組み合わせることで、理想の姿の実現可能性は高まっており「今後もマシンビジョンによる産業DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームを提供し、顧客の工場を真のスマート工場へと導けるようにしていきます。その中心となる製品の1つとして『VisionPro10.0』を今後もさらに進化させていきます」と川田氏は今後の方向性を示している。

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提供:コグネックス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年9月23日

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