2D−3D−BIMをワンプラットフォームで .dwg互換CAD「BricsCAD」がもたらす価値:BricsCADカンファレンス レポート
デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが加速し、業務改革が急務となっている製造業、建築・土木業界において、今選ばれているのが.dwg互換CADの「BricsCAD」だ。2019年11月27日開催の「“挑進化CAD”BricsCADカンファレンス 〜BricsCAD V20 新機能発表〜」から、BricsCADの強みを象徴する“ワンプラットフォーム”がもたらす価値、そして最新のユーザー活用事例を取り上げ、BricsCADの魅力をお伝えする。
図研アルファテックは、年次ユーザーイベント「“挑進化CAD”BricsCADカンファレンス 〜BricsCAD V20 新機能発表〜」(2019年11月27日)を開催。2019年10月に世界同時リリースしたばかりの「BricsCAD V20」の新機能の紹介や、製造業、建築・土木業界を代表する「BricsCAD」ユーザーによる最新事例の発表、さらにはBricsCADを採用するパートナー企業による展示デモの数々が披露され、多くの来場者の関心を集めていた。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進む昨今、汎用(はんよう).dwg互換CADであるBricsCADは、市場競争が激化する製造業、建築・土木業界を中心に採用が広がっている。低コスト化や開発期間の短縮が強く求められるこれら業界において、低価格でありながら豊富かつハイパフォーマンスな機能の数々を提供してくれる永久ライセンスのBricsCADへの期待は大きく、また、開発元のHexagonグループであるベルギーのBricsys社への信頼性はゆるぎない。事実、BricsCADの採用は年々拡大しており、間もなく、累計4万ライセンス(新規)を突破する勢いだという(2019年時点)。
なぜ、BricsCADが製造業、建築・土木業界を中心に選ばれ続けているのか? 以降で紹介するBricsCADカンファレンスの講演内容から、その魅力をぜひ感じ取っていただきたい。
「BricsCAD」の“ワンプラットフォーム”がもたらす3つの価値
まずは、2次元設計から3次元設計、そしてBIMまでを一気通貫で使用できる、BricsCADの代名詞“ワンプラットフォーム”について解説した、図研アルファテックの講演「BricsCADの2D-3D-BIM活用事例」を紹介する。
実は“ワンプラットフォーム”の「ワン(One)」は、BricsCADの特長そのものを表しており、大きく“3つのOne”からBricsCADの強み、優位性を示すことができるという。
1つ目は「One Application」だ。BricsCADという1つのアプリケーションの中に、2D CAD、3D CAD、BIMの機能が共存しており、ユーザーはそれらをシームレスに連携させて利用できる。もちろん、ユーザーインタフェース(UI)も統一されており、利用したい機能ごとにアプリケーションを切り替える必要もない。「従来は、2D CAD、3D CAD、BIMと、個別にアプリケーションを用意する必要があり、それぞれの作業も分断されてしまいがちで連携に課題があった。しかし、BricsCADであれば統合された1つのアプリケーション内で、2次元設計、3次元設計、BIMが活用・連携できるため、作業やコミュニケーションの分断が生じず、業務効率化が図れる」(同社)。
2つ目は「One File」である。これは、1つの.dwgファイルを仲介させることで、2次元設計から3次元設計、BIMまでのデータ共存が可能になることを示している。.dwgファイルを活用することにより、既存の運用を大きく変えることなく、過去蓄積してきたデータ資産を生かすことが可能だ。また、.dwgファイルであれば、2D CAD、3D CAD、BIM、それぞれのデータフォーマットを変更する必要がなく、格納するデータ容量も抑えられるため、データ管理の負担も大幅に軽減できる。
そして、3つ目が「One License」だ。これは文字通り、1ライセンスの中に2D CAD、3D CAD、BIMの使用権が含まれることを意味する。繰り返しになるが、それぞれのアプリケーションを個別に購入する必要がなく、BricsCADさえあれば、全てを賄うことができる。しかも、ライセンス費用も低価格で、永久ライセンスを採用する。「BricsCADは、長く使い続けるほどコストメリットが高まる。ライセンス費用と管理費用といった側面で、他のアプリケーションと比較して大幅なコストダウンが見込める」(同社)。
同講演の後半では“ワンプラットフォーム”の特長を示す、BricsCADの活用事例も紹介した。その1つが、工場のレイアウト図から簡単に工場内のベルトコンベヤーの3Dモデルを作成し、BIMデータや製造向けデータを作成できるというものだ。
新たに製造した機器や装置を、建物内に配置してレイアウトや干渉を確認するなど、製造と建築という業種の垣根を超えた“横断的な設計業務”が求められる現場に対して、共通する1つの.dwgで、2D、3D、BIMまでを一気通貫で設計できることを示したこのデモンストレーションは、“ワンプラットフォーム”によるメリットを分かりやすく示すものであった。
では、実際にユーザーはどのようにしてBricsCADを活用し、その効果を最大限に発揮しているのだろうか。ユーザー講演に登壇した、日鉄テックスエンジ 機械事業本部による講演を2つ続けて紹介しよう。
ライセンス管理の負担を減らしてコストダウン、「BricsCAD」拡大効果
日鉄テックスエンジは、日本製鉄グループの総合エンジニアリング企業として知られ、機械、電気計装、システム開発、建築・土木、製鉄と多岐にわたる事業を展開。企画から営業、設計、製作、工事、メンテナンスまで幅広く対応する「総合力」と、さまざまな分野を手掛ける「複合力」とのシナジーにより強みを発揮する。
まずは「BricsCAD 利用拡大事例」をテーマに登壇した、日鉄テックスエンジ 機械事業本部 エンジニアリング事業部 機械エンジ2部 大分プラントエンジグループ/技術部 技術開発グループ 原竜彦氏による講演内容から見ていこう。
これまで日鉄テックスエンジでは、2D CAD/3D CADで複数のCADシステムを保有していた。しかし、統合各社でライセンス管理の方針や考え方がバラバラで、購入窓口なども統一されておらず非効率な状態に陥っており、統合各社の業務に対して、最適なライセンス数を把握し切れていなかったという。
こうした現状を打破すべく、適切かつ効率的なライセンス管理、ライセンス使用状況の見える化などを実現し、最適なライセンス数を明確にしようという動きが活発化。「社内標準CADを全社で統一する方向に舵を切った」(原氏)。
具体的には、【1】本社でのCADライセンス一括管理の実施、【2】社内ネットワークライセンス化、【3】一括契約による業務効率化、【4】ライセンス使用状況の見える化の4つの視点で対策を検討。社内標準CADに求められる各種要件を満たし、かつランニングコストを抑えられるアプリケーションとして、全社のCADをBricsCADに統一し、2019年度から「BricsCAD Classic」での運用をスタートさせた。
BricsCADに統一した背景について、原氏は「BricsCADであれば、コストパフォーマンスが高く、社内ネットワークでの運用管理も可能だ。また、.dwg互換CADの強みを発揮してAutoCAD LTからの移行もスムーズで、2D、3D、BIM連携も容易だ」と説明する。
BricsCADを社内標準CADにする取り組みとともに、社内普及にも注力。日鉄テックスエンジでは、BricsCADが社内標準CADであるという意識付け、CAD操作や図面作成方法の早期習得、配属後のスムーズな業務遂行などを目的に、新入社員向けにBricsCADの操作講習を実施してきた。「年間数十人ほどが受講しており、過去4年間で数百人が操作講習を受けてから現場配属されている。今後もこのような地道な積み重ねにより、社内にBricsCADを普及、浸透させていきたい」(原氏)。
日鉄テックスエンジでは今後の展望として、3D CADをフル活用した“プラント設計の近代化”を掲げる。その実現に向けて、鋼材や部品の3Dパーツを直接配置可能にする3Dモデリングの簡易化(JIS規格3Dパーツの充実)、3Dモデルからの2次元図面化(2次元図面の自動作成機能)、点群データ上での設計(点群データの取り組み機能)などが不可欠だとし、BricsCADのさらなる進化に期待を寄せる。
業界を大変革する可能性を秘めた「バーチャルエンジニアリング」
続いて、日鉄テックスエンジ 機械事業本部 技術部 技術開発グループ グループ長の村山亨氏が登壇し、「三次元計測とヴァーチャルリアリティがもたらす近未来」をテーマに、日鉄テックスエンジによる3次元計測とVR(仮想現実)システムの活用について紹介した。
日鉄テックスエンジでは、設計の一部において3D CADによる設計を取り入れてきたが、3次元活用のさらなる効果を得るために、レーザー計測器で3次元計測を行って点群データを取得し、3D CADデータと併せて活用していく取り組みをスタートさせた。
村山氏は3次元計測を行うメリットとして、「いつでも(好きなタイミングで計測できる)」「どこでも(現場に行かなくてもよく、大型設備や高所なども対応可能)」「図面化も(平面図へ出力したり、3D CADモデルを作成したりできる)」の3つを挙げる。
大きな設備や高所などを計測する場合、非常に危険な作業が伴うこともある。「しかし、レーザー計測器であれば、測定対象の点群データを一気に取得でき、PCの中でいつでも好きな箇所を計測することが可能だ。これであれば計測を行う作業者の身の安全も確保できる」(村山氏)。
また、既存設備を含む点群データと、新規に設計する設備の3D CADデータを組み合わせることで、事前の干渉チェックも行える。例えば、設計中の3Dモデルを実際の装置のように動作させれば、可動部が既存設備と干渉しないかどうかを動的に確認することも可能だ。
さらに、日鉄テックスエンジではVRシステムの活用も積極的に進めている。村山氏は「点群データや3Dモデルをディスプレイ越しに見たり、寸法値を確認したりするだけでは不具合を撲滅するには不十分だ。従来方式だとどうしても人の体感で評価する部分が欠けてしまう」と指摘する。ここでいう体感で評価する部分とは、「狭くて通りづらい」「ぶつかりそう」といったものだ。日鉄テックスエンジでは、こうした感覚的な部分の確認や気付きをVR空間に没入することで体感できるようにした。
他にも、労働中の災害防止を目的としたVRシステムの活用にも取り組む。前述の通り、日鉄テックスエンジの現場では危険な場所での作業が伴うこともある。そうした現場では、特に経験年数の浅い作業者が災害に見舞われやすい。そこで、災害の恐怖を疑似的に体験できるVRコンテンツを用意し、現場作業員の安全教育に役立てているという。
日鉄テックスエンジが推進する、3D CAD、3次元計測、VRの技術を融合させた「バーチャルエンジニアリング」の実践は、「まだ、ほんの一部分だ」と村山氏は述べる。それにもかかわらず、日鉄テックスエンジでは既に大きな成果に結び付いているとのことだ。この成果を踏まえ、村山氏は「製造業や建設業の各社が、バーチャルエンジニアリングに真剣に取り組めば、業界そのものを大きく変えるほどのインパクトがあるのではないか」と訴え掛けた。
さらなる進化を遂げた「BricsCAD V20」、DMS2020でも披露
BricsCADカンファレンスでは、リリースされたばかりのBricsCAD V20の新機能についても披露した。V20では、BricsCADランチャー表示やプロパティツールバーの折り畳みなどに対応。UIのテーマカラー変更も可能だ。また、コマンドオプションはコマンドラインから選択できるようになった。その他、XYZで位置合わせした最短距離測定、コピーガイド、ブロック化など、多数の新機能が盛り込まれた。
一方、3Dモデリングの機能では、寸法記入でダイナミックUCSに対応。3Dソリッドモデルに寸法記入が簡単に行えるようになった。BIMではV19で実装されたプロパゲート機能を改良した他、階段作成の専用コマンドを追加。機械設計ツールの「BricsCAD Mechanical」は、アセンブリの分解ビューが3軸まで対応し、分解表示の際の各パーツにトレース線表示が可能となった。さらに「BricsCAD Pro」では地形モデルのインポートに対応。その機能として、点群データの取り込みもサポートする。
2D−3D−BIMの“ワンプラットフォーム”で業務改革を提唱
今回のセミナーで伝えられた“ワンプラットフォーム”がもたらす価値について、その理解を深めることができた多くの来場者は、業務改革のヒントや新たな気付きが得られた様子だった。常に革新的であり続け、“挑進化”を突き進むBricsCADの今後に期待が膨らむばかりだ。
図研アルファテックは、2020年2月26〜28日に幕張メッセで開催する「第31回 設計・製造ソリューション展(DMS)」に出展し、BricsCAD V20を披露する。製品の特長について詳しく聞ける機会となっているので、ぜひチェックしてほしい。
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提供:図研アルファテック株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2020年2月13日