CO2排出量17%、アラーム発生時間9割削減を実現、大和ハウスのIoT活用による「見せる化」:Intelligent Dashboard採用事例
大和ハウス工業(以下、大和ハウス)は、富士通及び富士通アドバンストエンジニアリングと共同で、富士通の見せる化ソリューション“Intelligent Dashboard”及びIoTを活用し、大和ハウスの工場向けエネルギー管理システム「D's FEMS」を開発。「D's FEMS」は、一般的なFEMSとは違い、エネルギー管理だけでなく、防災環境、労務環境、生産性までを監視対象とすることで、工場全体で活用しており、多くの活用事例が生まれている。省エネモデル事業所の九州工場では、D's FEMS導入前の2013年度に対し、2016年度では工場売上高当たりのCO2排出量を17%削減。また監視対象設備のアラーム発生時間の9割削減や、熱中症の発症も防止できた。リスクを低減することで生産効率の向上にもつながっている。
大和ハウス工業(以下、大和ハウス)は、環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”を制定し、地球温暖化防止を最重点テーマとして活動を行っている。自社工場でも、2005年から省エネ活動を長年推進してきたが、省エネ改善が行き詰まるなか、更なる省エネ活動を推進して行くために、IoTの積極的な活用として富士通及び富士通アドバンストエンジニアリングと共同で富士通の見せる化ソリューション“Intelligent Dashboard”をベースに「D's FEMS」を開発し自社工場へ順次導入している。
「D's FEMS」開発の背景
大和ハウスは、省エネ活動を推進するうえで、各部門ごとに省エネモデル事業所を選定し重点的に活動を行っている。工場部門では九州工場(福岡県鞍手郡)を選定し、省エネ活動を全国工場へ展開している。九州工場では、工場と開発部門による改善によって2007年度の売上原単位CO2排出量を2005年度比で47%削減を実現。そして2008年度からは、さらなら改善を図るために電力量計などのセンサーを設置し「見える化」に取り組んできた。しかし、計測データを活用したのは環境担当者の知見の範囲に限られていたため、部分最適でしかなく、効果も少ない状況となっていた。
そこで、それまでの『見える化』を、工場全体に分かりやすく情報を共有することで、様々な立場の人々の知見を結集して問題解決や改善活動の最適化ができる『見せる化』に進化させる取り組みを始め、「D's FEMS」を開発した。
「D's FEMS」に富士通の「Intelligent Dashboard」を採用
D's FEMSの検討段階では、エネルギー、防災環境、労務環境、生産性を対象とし、カスタマイズにも対応できる商品がなかった。そこで様々なニーズを満たすソリューションが、富士通の「Intelligent Dashboard」だった。Intelligent Dashboardは「見せる化」を目的としており、工場全体の状態をグラフィカルに把握できるユーザーインタフェースや、そこから工場の見たい場所に向かって直感的にドリルダウンしていけることを特徴としている。多数のグラフを大画面に同時に表示して、比較やその相関性を検討することもできる。また予め想定された機能をパッケージ化した商品と違い、基本構成は標準化されているが、様々な顧客ニーズにも対応できる柔軟なカスタマイズ性もある。つまり、ゼロから開発を行うより安価で安定したシステムを短納期に構築することが可能となっている。
例えば、「D's FEMS」の場合、画面フレームは標準化しているが、表示する工場全景や表示するグラフは、大和ハウスのニーズに応じてカスタマイズしている。メニューや集計機能なども同様である。
大和ハウスでは、タッチパネル式の大画面ディスプレイを使って、より多くの人達に工場やラインを俯瞰して情報共有〜対策検討ができるようにしており、部門担当者がパーソナルに適宜見たいものを監視する場面では、PC用画面で見せる構成にしている。
「Intelligent Dashboard」を採用した「D's FEMS」の機能と効果
「D's FEMS」は、一般的なFEMSが対象にする「省エネ」の他、「防災環境」「労働安全」「生産性」に対応する機能を備える。
「省エネ」では、契約電力量を下げてコスト削減につなげる「最大電力量(デマンド)の予測と制御」と、実際の電気使用量を削減する「エネルギー監視」が可能だ。「デマンド予測と制御」では天気や生産量などの条件をもとにデマンドを1週間先まで予測できる。「エネルギー監視」は、エネルギー消費状況を原単位でグラフ化し、しきい値を超えた場合、電力使用量オーバーや待機電力発生状況をアラームで知らせてくれる。更に、データ分析のノウハウが無くても改善が出来るように、システムが計測データを分析し省エネ対策を教えてくれる「省エネヒント機能」も備えている。
「防災環境」は自然災害と設備故障に対応するものだ。自然災害では、昨今の異常気象は天気予報だけでは現地の状況との乖離があり、実際の状況を把握する必要性が出てきている。その為、過去の被害状況を踏まえて豪雨による浸水や、突風による被害に即応するために雨量計や水位計や風速計を設置しアラームを発報させる。また、無人設備や重要設備の異常の発見遅れによる災害を抑制するため、即座にアラームを発報(担当者には個別メールも発信)し、迅速な対応と再発防止策を実施ことが出来る。またライブカメラを工場に設置することで、異常が起こった現場を即座に確認することも出来る。
「労働安全」では、全館空調が難しい広大な空間を持つ工場建屋内における作業員の熱中症監視が主な機能になる。従来は、天気予報を基にした一律的な管理を行ってきたが、「D's FEMS」では工場内各所の温度と湿度のデータを基に、リアルタイムかつ製造ラインごとに熱中症の危険度を監視できる。
「生産性」は、工場の生産状況を一目で見られる機能だ。各製造ラインの生産状況を示すグラフでは、計画、基準値、リアルタイムな実績を重ねて見る事ができ、進捗遅れが一目で把握出来る様になっている。また、これら一連のグラフにはしきい値が設けられており、しきい値を下回るとアラーム発報し、迅速な対応を促すことが出来る。
これら4つの機能の他に柔軟なカスタマイズも可能だ。例えば、太陽光発電の発電量や工場の行事を表示する掲示板の機能も設けた。
「D's FEMS」では、センサー情報などIoT(モノのインターネット)の活用を実現しているが、新たにセンサーを追加する際には既存設備に外付け可能なことを強く意識している。これは、生産設備の本体に大きく手を加えるようなIoT活用だと、設備投資が莫大になることや、生産設備の担当者に受けいれられないことが多いためだ。
省エネモデル事業所の九州工場での導入効果は、D's FEMSを導入し、新たな“気付き”から省エネ改善やリスク低減活動を実施したことで、導入前の2013年度に対し、2016年度では工場売上高当たりのCO2排出量を17%削減。監視対象設備のアラーム発生時間を約9割削減し、熱中症の発症を防止できた。リスクを低減することで生産効率の向上にもつながっている。
D's FEMSの活用の幅を広げると共に、更に進化させてゆく
大和ハウスでは、これら約5年間に及ぶ自社工場での運用ノウハウを盛り込んだ「D' FEMS」を環境配慮型工場「D's SMART FACTORY」の商品力強化の一つのアイテム提案として2017年10月に販売を開始した。工場の新築・移転・増改築を検討されている製造業のお客様に対して工場建屋だけでなく、ものづくり活動の最適化をフォローアップするICTサービスも合わせて提供することで、競合他社との差別化を図り、更なるビジネスの強化に繋げてゆく考えだ。
また、IoTを使った技術を進化させて行きながら、AI(人工知能)の導入や他工場への横展開など、今後も富士通とさらなる連携を強化してゆき、「D's FEMS」を進化させ社内外に広げて行きたい考えだ。
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月28日