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クラウドを活用したエンジニアリングシミュレーションが製品開発を革新するANSYSのクラウド戦略とは

大手CAEシミュレーションソフトウェア ベンダーのANSYSは、クラウドを活用したシミュレーションの展開に注力している。従量制サービスも始める方針で、ますます複雑化する製品開発の中で、エンジニアのニーズに応えるクラウド戦略を展開していくという。

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複雑化する製品開発に求められるエンジニアリングシミュレーション

 製品開発の複雑化が進んでいる。IoT(モノのインターネット)をはじめとするさまざまな機能が求められる一方で、短期間かつ高い信頼性を実現しなければならない。そこで、より重視されるようになっているのがエンジニアリングシミュレーションである。今やシミュレーションは、流体、構造、エレクトロニクス、システムといった物理現象だけでなく、それらを組み合わせたマルチフィジックスに拡大している。

 これら各種物理モデルをカバーするシミュレーションソフトウェアを展開しているのがANSYSだ。シミュレーションソフトウェアに加えて、統合操作環境「ANSYS Workbench」やWebベースのデータプロセス管理ツール「ANSYS EKM」といった製品も提供している。

シミュレーションに関する全ての業務をクラウド上で

 大規模で複雑なシミュレーションを効率よく実施するためには、現実世界の動作条件を広範囲にモデル化できる高性能のコンピュータ、HPCが必要である。そして、製品開発の複雑化に対応するにはHPCをスケールアップしなければならないが、これまで一般的だったオンプレミスのHPCでは投資コストの増大という課題が出てくる。また、中小企業にとっては、独自のHPC環境を構築する社内ITの専門知識を持たず、大規模シミュレーションを利用できないという課題を抱えている。

 これらの課題に対応するための有力選択肢になっているのが、製品開発のためのシミュレーションの全てをクラウド上で行うことである。クラウドであれば、オンプレミスのような投資を行わずに、必要なときに必要な規模だけ利用することができる。そして、これまで導入の上でのハードルになっていた通信速度やセキュリティの問題はその大部分が解決されつつある。

 エンジニアリングシミュレーションのリーディング企業であるANSYSも、クラウド上でシミュレーションを効率よく行うためのさまざまなソリューションを展開している。それらの中核に位置しているのが、シミュレーションに関する全ての業務プロセス(エンド・ツー・エンド)をクラウド上のセキュアな環境で提供する「ANSYS Enterprise Cloud」だ。ANSYS Enterprise Cloudは、パブリッククラウド上にあるシングルテナント型のシミュレーションプラットフォームで、場所や時間を問わないWebベースでアクセスできる。

「ANSYS Enterprise Cloud」の利用イメージ
「ANSYS Enterprise Cloud」の利用イメージ

柔軟なANSYS製品のライセンス体系

 現在、アマゾン ウェブ サービス(AWS)でのみ使用できるANSYS Enterprise Cloudは、自社のITインフラストラクチャとリソースを拡張すると同時に、パブリッククラウドの利点を活用できるよう設計されている。また、ANSYSのユーザーは、オンプレミス利用からクラウドへ移行する際に、追加のライセンスを購入する必要はない。ライセンスをオンプレミスからクラウドに変更するだけで良いのだ。

 ANSYS Enterprise Cloudは、従来のオンプレミスのライセンスをクラウドで活用するための仕組みともいえる。ただしクラウド上でシミュレーションを行うと言えば、使いたいときに使いたい分だけ使える従量制のサービスに対する需要も大きい。

 ANSYSは2016年3月、待望されていた従量制のサービス「ANSYS Elastic Licensing(エラスティック ライセンシング)」を導入する方針を発表した。同社が提供する流体、構造、電磁界、回路/システム、パワー/ノイズ、信頼性といった全ての分野のシミュレーションソフトウェアを利用できる。

ANSYSのバイスプレジデントでエンタープライズソリューションズ&クラウド担当のRay Milhem氏
ANSYSのバイスプレジデントでエンタープライズソリューションズ&クラウド担当のRay Milhem氏

 ANSYSのバイスプレジデントでエンタープライズソリューションズ&クラウド担当のRay Milhem氏は「エラスティック ライセンシングのメリットは大まかに分けて5つある」と説明する。1つ目は資産の最適化だ。従量制であれば、シミュレーションを利用した分だけお金を払いたいという考えに対応できる。2つ目はポートフォリオの柔軟性である。ANSYSが提供する製品ライセンスのうち、どのような製品がどれだけ必要になるかを予測することは難しい。従量制であれば、機構解析でも熱流体解析にも展開できる。

 3つ目は開発部門ごとのコスト割り当ての容易さになる。従量制であれば、まさに使った分を簡単に把握できるわけだ。そして4つ目は、シミュレーション未使用者へのアクセス性の高さだ。従来のライセンス形態では、ほとんどシミュレーションを利用しない技術者が急に必要になっても、すぐに利用できなかった。従量制であればそういった問題を解決できる。そして5つ目が、開発ピーク時に必要になるシミュレーションツールのライセンス数を容易に追加できることだ。「固定ライセンスでは一時的にライセンスを追加することはできないが、従量制であれば簡単に追加できる」(Milhem氏)という。

ANSYSクラウド戦略の利点

 現時点でANSYSのクラウドシミュレーションを利用できるのはパブリッククラウドのAWSだけだが、ANSYSは「ANSYS Open Cloud Strategy(TM)」に基づき、複数のクラウドプラットフォームパートナーでも利用できるようにしていく方針だ。AWS以外のパブリッククラウドや世界各地域で展開するクラウドホスティングパートナー、顧客が持つプライベートクラウドの利用も視野に入れている。

アンシスのオープンクラウド戦略
アンシスのオープンクラウド戦略。パブリッククラウド、クラウドホスティングパートナー、プライベートクラウドで同社のシミュレーションツールを利用できるようにしていく

 Milhem氏は、「ANSYSはクラウドやHPCといったハードウェアを提供する企業ではない。エンジニアリングシミュレーションを行うソフトウェアのベンダーだ。クラウド上でのシミュレーションの展開では、シミュレーションソフトウェアを提供する企業として、ハードウェアに依存しないサービス提供が念頭にある」と述べている。

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提供:アンシス・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年8月5日

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