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イノベーションへ導く仕掛けに! ──アラスジャパンが目指すPLMのカタチとは?革新を生み出すPLM【前編】

「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」という革新的なビジネスモデルでPLM市場に新たな波を起こす米国Aras。グローバルで躍進するオープンソースPLMの真価とは何か? また、「イノベーションを導く仕掛け」としてのPLMとはどういうモノなのだろうか? アラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏に話を聞いた。

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グローバルに広がるオープンソースPLM

 2000年創業のPLMベンダーである米国Arasは「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」という特徴的なビジネスモデルを展開する。PLMソフトウェアベンダーであるArasだが、その製品であるAras Innovatorは「無償」で提供し、ソフトウェアをライセンス販売しない。その代わりに、ソフトウェアに掛かるサポート費用やメンテナンス費用をサブスクリプション(定期契約)で提供するビジネスモデルを構築している。またArasには多くのパートナー企業が存在し、Aras Innovatorに関連するコンサルティングやシステムインテグレーションはそれらのパートナーが行うというエコシステムがある。これらを含めたビジネスモデルが独自の特徴となっている。

 では、従来のライセンス型のビジネスモデルに比べて、サブスクリプション型のビジネスモデルは、顧客企業にどのようなメリットをもたらすことができるのだろうか。

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アラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏

 2012年に米国Arasの日本法人として設立されたアラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏は「従来型のモデルに比べて導入のリスクを大幅に低減することができます」と利点について語る。従来型のPLMでは、導入してみると思ったほどのパフォーマンスが得られなかったり、少し使い込んだりすると思ったように動作しないなど、購入前にはあまり気が付かなかった不具合が突然顕在化することがあった。そのため、導入リスクが大きかった。しかし、Arasが取るサブスクリプション型モデルでは、トライアル版ではなく本物のPLMソフトウェアを使用して評価が可能だ。そのため本格導入時に「期待したものと違う」ということが起こりにくい。また、費用をかけずにスモールスタートが可能である点についても評価を得ているという。

 既にグローバルでは高く評価され、これまでに約600社が導入。事業としても6年連続で2桁成長を見せており、2013年度のサブスクリプション売上高は前年度比46%増を記録した。こうした勢いと顧客からのニーズを受け、拠点も2012年に開設した東京オフィスに加え、ミュンヘン、デトロイトへと拡大。オフィス設立後は日本市場でも導入が拡大しており「日本での売上高は倍増を続けています」(久次氏)。国内での導入企業は既に80社を突破したという。

オープンソースの3つの不安を解消

 一般的にオープンソース・ソフトウェアというと、ソフトウェアに対する開発責任元が不明確で、製品の性能や機能の進化、サポートなどへの不安がある。オープンソースPLMである「Aras Innovator」にも同様の不安を抱くユーザーも多いとは思うが、久次氏は「オープンソースの不安点を責任を持ってカバーするのが当社の役割です」と胸を張る。

 同社では、機能拡張などへの顧客のニーズに応じて、“通常のライセンス・ソフトウェア”と同様に、高い頻度でバージョンアップを行っている。2014年1月には、HTML5に対応したマルチブラウザ対応の「Aras Innovator 10」をリリース。さらに、この秋以降にもさまざまな拡張機能やアプリケーションを市場に投入していく予定とし、最新技術を生かした新たな機能を次々に実装している。

 一方、不安として指摘が多いスケーラビリティ(拡張性)の問題にも対応する。同社では、12万5000コンカレントユーザーテストを実施。SQL Server 2012 Enterprise Edition上で動作するAras Innovator 10が、10万を超えるユーザーが同時接続しても最適性能を維持できることを実証したのだ。現在Arasでは多くのユーザーを抱えているが、1つのAras Innovator環境で10万ユーザー以上が同時接続する機会はまだないという。「現時点では1万〜2万ユーザー規模の構築が始まっていますが、将来にわたって最適な拡張性を維持できることをArasでは事前に検証しユーザーが安心して利用できるように準備をしているのです」と久次氏は自信を見せる。

 このようにArasでは、オープンソース・ソフトウェアに対して持たれていた3つの不安要素である「サポート」「製品の機能拡張」「性能」の全てを克服しているのだ。

99.5%という高い更新率

 これらへの満足度が、ワールドワイドでの99.5%という高いサブスクリプション更新率に表れているといえる。

 ライセンス型のビジネスモデルは、一度契約すれば開発費用に見合う収入を得ることができるが、サブスクリプション型のビジネスモデルでは、顧客企業が契約を継続してくれなければ途端に収入を失うことになる。そのため更新率が大きな経営指標となる。一方で更新率の高さは、顧客からの支持率が高いということになる。

 「サブスクリプション型のビジネスモデルは、気軽にスモールスタートできるだけでなく『必要ない』と思ったらやめられるのもユーザー側のメリットです。そのため、いかにお客さまに満足していただけるか、それを続けられるか、ということが非常に重要になってきます。そのため、われわれも機能向上や性能向上、品質向上など、常に努力を続けています」と久次氏は語る。

PLMとPDMを切り離して考えなければいけない理由

 実はPLMベンダーとしてのArasの特徴は、そのビジネスモデル以上に、PLMに対する“理念”にあるともいえる。同社ではPLMを「イノベーションに導く仕掛け」にしようとしているのだ。

 例えば、フィーチャーフォン端末からスマートフォン端末へと大きく変化した時を考えてみよう。SCMの視点であればいかに販売台数当たりのコストを削減するかを考えれば十分だ。しかし実際に市場を見てみると、スマートフォン端末がもたらした破壊的イノベーションにより、SCMの観点だけでは把握しきれない事態が発生した。またPDMの視点で考えてもこの変化には対応できない。なぜなら、PDMはCADを中心としたデータモデルであり、メカ、電気、ソフトとそれぞれの開発ソフトによって、バラバラにデータが管理されているからだ。

 「PDMというのはCADを中心としたデータモデルであり、利用者もメカニカル、電気、ソフトウェアに分かれて情報が管理されています。一方のPLMは製品情報を中心としたデータモデルなので、製品開発に関わる関係者全てが利用者となり、データもメカニカル、電気、ソフトウェアを全て統合して扱います。例えば、開発過程で電気回路に対する変更があった際にはメカニカルな機構やソフトウェアの内容も変更が必要で、部門を越えた製品軸の情報共有の実現が求められます。そこをつないでいけるのが本当のPLMと言えます」(久次氏)。

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PDMの抱える課題。製品として仕様を変更すると、メカ、電気、ソフトのそれぞれを変更しないといけないが、それぞれのデータの流れでしか管理されていないため、手間やムダが発生する。(クリックで拡大)

イノベーションを支援するPLM

 現在のモノづくりに関わるデータは複雑化する一方だ。その中でイノベーションを生み出すには、さまざまなデータを連携させることはもちろん、関わる多くの人に情報を自由に届け、自発的な気付きを生み出すことが必要になる。

 「PLMの視点では、変化に対応しイノベーション引き起こすための仕掛けをシステムに内在できなければいけないと考えます。本来PLMというのは、イノベーションへと導いていくための支援をするツールであり、われわれはそうした考え方に沿って製品を開発・提供しているからです」と久次氏は強調する。

 イノベーションを達成するには数多くの試行錯誤による検証が必要となる。多くの人びとが関わり、トライアル&エラーを繰り返しながら情報が淘汰されてはじめて、成功へとたどり着けるのだ。製品開発においても、多くの人々がフィードバックを受けられるような環境が大切であり、そうしたデータが蓄積されることでさらにデータの精度が上がっていくことになるのである。

 「PDMの効果はオペレーション効率を向上することにあり、そこだけを見てもROIを出すことは難しい。しかし、PLMは製品開発プロセスの改善を導くため、設計効率を向上することで、ROIの向上をもたらす効果を生み出すことができます。PDMなのかPLMなのか。きちんと自社の目的を見据えて導入しないと失敗に陥ることになります」と久次氏は安易なソフトウェアの選択に警鐘を鳴らす。

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PLMとPDMの違い。PDMは個々のオペレーションを改善する効果は生み出せるが、製品としての総合的な価値を高めることにはならない。(クリックで拡大)

 このように、CADデータだけでなく、製品情報に関するあらゆるデータを組織横断的につなぎ、最終的にイノベーションへと導いていくというのがArasのPLMなのだ。この理念に基づくさまざまな新製品が、今後も次々に登場する予定となっている。次回は、同社が目指すPLMを実現するための製品ロードマップを見ていくことにしよう。

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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