スマートファクトリー化が進む中、装置やセンサーなど現場レベルのデータ活用を支えるネットワークの重要性が高まっている。モーション制御に強みを持つ産業用ネットワーク「MECHATROLINK」の普及を推進するMECHATROLINK協会は、「IIFES 2025」で「MECHATROLINK-4」とセンサー通信技術「Σ-LINK II」を活用した新たなデモを通じて、高い同期性能とデータ連携の進化を体感できる展示を行う。
近年の製造現場は、大量生産から多品種少量生産へと移行し、需要の変動や短納期化への対応が急務となっている。
限られた敷地や人員の中で安定した生産を維持するには、既存設備を生かしながら柔軟に工程を組み替えられる仕組みが欠かせない。段取替えの頻度増加や立ち上げ時間の短縮、品質の安定化、予防保全、エネルギー効率の改善など、現場には多面的な生産性向上が求められている。
しかし実際の現場では、装置ごとにデータ形式や接続方法が異なるため、工程全体の可視化や不具合の原因分析などデータの利活用に課題が生じている。さらに、機器の追加や改造を重ねるほど配線が複雑化し、保守性の低下や停止時間の増大を招くこともある。
そうした製造現場の課題解決に貢献するソリューションや製品が一堂に会するのが、制御/計測/情報を軸とした産業オートメーションおよび計測分野の国内最大級の総合展示会「IIFES 2025(Innovative Industry Fair for E×E Solutions)」だ。
IIFESは、もともと別々に開催されていたオートメーション総合展「システム コントロール フェア(SCF)」と、計測および制御の展示会「計測展 TOKYO」が2019年に統合して誕生した。現在はコンポーネントとセンシング、ネットワークの融合を通じて、新たな価値創出と産業発展を目指す場として成長を続けている。
今回は「ものづくりの未来が集う 革新・連携・共創」をテーマに、2025年11月19〜21日、東京ビッグサイトで開催され、製造業や社会インフラを支える制御/計測/情報技術の最前線が集結する。時代の要請に応える多彩なソリューションとともに、制御と情報を“つなぐ”最先端技術が生み出す、次世代のモノづくりの姿が提示される。
IIFES 2025における注目展示の1つが、産業用ネットワーク「MECHATROLINK」の普及を推進するMECHATROLINK協会の展示(東4ホール/ブースNo.4-06)だ。同協会は今回、「つながる力で、モノづくりを進化させる」をテーマに掲げ、スマートファクトリー実現を支える産業用ネットワークの価値を発信する。
MECHATROLINKは、モーション制御を中心に装置やコントローラーを高速・高精度に連携させる産業用ネットワークだ。特に「MECHATROLINK-4」は全二重通信対応などによる性能向上、各機器との制御データの通信に加え、制御通信に影響を与えずにIP通信も可能としている。これにより、生産ライン全体のリアルタイム性と設計自由度を高め、モーション制御と情報処理を両立する次世代ネットワークを実現する。
さらに、センサーネットワーク「Σ-LINK II」は、サーボアンプとサーボモーター間の通信を拡張することで、エンコーダー情報とセンサー信号を同時に伝送できる。既存配線を生かしながらデータを一元的に収集でき、配線の簡素化とデータ収集の同期精度の向上を両立。分析精度の向上や予防保全の高度化に寄与する。
MECHATROLINK協会はIIFES 2025で、MECHATROLINK-4とΣ-LINK IIを組み合わせ、モーションとセンシングの融合を体感できる新たなデモンストレーションなどを披露する。
1つ目は、音板をたたく動作を題材に、モーション制御とセンシングの同期性能を「音」と「データ」の両面から実感できるユニークなデモを紹介する。Σ-LINK IIで複数のセンサー情報を同期収集し、MECHATROLINK-4の高速伝送で上位システムに集約する。音板を押さえる位置を変えると、音の高さと波形データが一致して変化する。モーションとセンシングをリアルタイムに結び付ける仕組みを来場者が直感的に理解できる構成だ。
MECHATROLINKの特長の1つにある、活線挿抜(ホットプラグ)とIP通信をテーマにしたデモ機では、ボール搬送を通じて、稼働を止めずにラインの拡張や保守が行える柔軟なネットワーク構成を実演する。ボール搬送を行うメインユニットに対して、搬送効率を高めるためにオプションユニットが行う協調動作に注目だ。さらに、IP通信による遠隔監視/制御やNearFiカプラーを用いた非接触通信を紹介し、“止めない生産ライン”を支えるスマートメンテナンスの仕組みを示す。
さらに、ネットワーク設計の柔軟性と拡張性を紹介する。コントローラー、ソフトモーションコントローラー、サーボドライブ、I/O機器、HMIなど異なるベンダーの機器を、カスケード接続やスター接続など多様なトポロジーで可視化する他、IP通信による効率的な稼働監視を実演。マルチベンダー環境でも高い自由度を発揮するMECHATROLINKの強みを訴求する。
ブース内では会員企業による個別展示も行われる。
認証を得た新製品をはじめ、MECHATROLINK対応のMDevice、SDeviceによるモーション制御と各社の製品を採用した事例紹介など、実機を直接目にすることができる。出展企業は、安川電機、神港テクノス、システック、モベンシス、オリエンタルモーター、横河電機の6社となっている。
MECHATROLINK協会 事務局代表の平沼麻美子氏は「MECHATROLINKは、モーション制御に特化した高い同期性と信頼性を備えた産業用ネットワークです。通信エラーを自動で検出し再送信するリトライ機能により堅ろうな通信を実現し、多数のSDeviceを高精度に同期制御することで、生産現場の柔軟性と拡張性を支えています。今回の展示では、単なる数値やスペックの紹介にとどまらず、MECHATROLINKが実際にどのような特性を持ち、現場の課題解決にどのように貢献できるかをお伝えしたいと考えています」と強調する。
MECHATROLINK協会は、産業用オープンネットワーク「MECHATROLINK」の普及を目的に2003年に発足した。
設立当初は国内中心の活動だったが、モーション制御に特化した高い同期性と信頼性が評価され、生産設備や制御機器メーカーの支持を得て着実に拡大。現在では、日本をはじめドイツ、米国、韓国、中国(上海、瀋陽)、台湾、インド、ASEAN(シンガポール)の8拠点で活動している。会員数は世界で3693社、対応製品数は607(いずれも2025年3月末時点)となり、標準化団体や会員企業と連携しながら、国や業界を越えてオープンネットワークの普及と技術向上を推進している。
2025年に事務局代表に就任した平沼氏は、「MECHATROLINKは、現場のニーズに応じて進化を重ねてきました。特にMECHATROLINK-IIIとMECHATROLINK-4はまったくの別物ではなく、MECHATROLINK-IIIが備える高い同期性能と精度を基盤に、MECHATROLINK-4においては通信方式やデータ容量を拡張することでスマートファクトリー時代の要求に応えています。OTとITの融合が進む中、モーション制御に特化した高い同期性と信頼性というMECHATROLINKならではの強みを生かし、製品ラインアップの拡充やベンダーとの連携を通じて、より多くの現場課題の解決に貢献していきます」と語る。
近年は、MECHATROLINK-4およびΣ-LINK IIの国際規格化(IEC採択)や、海外展示会での情報発信など、グローバル展開を強化。ラインアップ拡充に向けては、MECHATROLINK-IIIおよびMECHATROLINK-4対応製品の開発支援、ベンダー企業との定期的な技術交流などを通じて開発環境を整備してきた。また、ソフトウェアプロトコルスタックの提供による開発手段の拡張にも取り組み、幅広いメーカーが柔軟に対応製品を開発できる体制を構築している。
「現場ごとに異なる課題に対して、MECHATROLINKだからこそできるモノづくりへの支援を、IIFES 2025の展示を通じて発信したいと考えています。単なる最新技術の展示にとどまらず、来場者が実際に展示をご覧いただき、説明員との対話の中で、来場者の皆さまが“新しい発見”や“新たな気付き”を得られるきっかけとしていただければと思います」(平沼氏)
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提供:MECHATROLINK協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年12月6日