AI×IoTは製造業に何を生むのか、KDDIとソラコムが描く「つながる世界」の先:SFの世界がいよいよ現実に
製造業にとって、遠隔監視やエッジデータ取得などIoTの活用は定着してきた。そのデータを価値に変えるために今、大いに期待されているのがAIとの組み合わせだ。KDDIグループとソラコムは、米国Gartnerの「マネージドIoTコネクティビティサービス(ワールドワイド)部門のMagic Quadrant」にてSoracom-KDDIとしてリーダーの1社として評価された(※1)。両社のキーパーソンに、次の「つながる世界」が製造業にどういう価値を生むのか、話を聞いた。
非構造データを現場で生かす、生成AIが広げるIoTの可能性
製造業にとってIoT(モノのインターネット)を取り巻く環境は、この10年で大きく変化した。ドイツの「インダストリー4.0」などを契機に、モノづくりにおけるデジタルデータの取得や活用が大きな注目を集めた。しかし、当時はモノをネットワークにつなぎ、データを取ること自体が大きな挑戦だった。設備や製品からデータを取得しようとしても、センサーや通信機器、データを蓄積するストレージ、処理をするデータ基盤などを個別に用意する必要があり、導入には高いコストと専門知識が求められた。
しかし、10年がたち、これらを実現するための技術やサービスが低価格化し、手軽で身近なものになってきた。工場での活用が進むだけでなく、自動車のコネクテッド化のように新たなビジネス領域として定着したものも多い。KDDI ビジネスグロース事業本部 グロース事業開発本部 副本部長の野口一宙氏は「世界的にIoT回線の接続数は伸び続けています。通信手段もLPWAやセルラー通信、衛星通信などへと広がり、つながる場所や用途はさらに拡大しています」と述べる。
その広がりに伴い、扱うデータも変化した。当初は、スマートメーターなど多数の端末から少量のデータを集める「Massive IoT」が中心だった。その後、コロナ禍を機に、遠隔保守をはじめとする「現場に行くことの代替」としての活用が進んだ。さらに現在は、カメラやドローンから送られる画像や映像をAIで分析する用途が増え、通信量も大幅に増加している。
ただし、データを「取る」ことと「活用する」ことは別の話だ。ソラコム 代表取締役社長 CEOの玉川憲氏は「PoCを繰り返しても技術やコストなど、さまざまな面でハードルが高く、本格導入に至らないこともかつては多くありましたが、技術やサービスがそろい、データの取得は当たり前にできるようになりました。ただ、そのデータを分析し、活用するという点においては、まだまだこれからだと感じています」と指摘する。そのギャップを埋めるラストピースとして両氏が挙げるのが、AIの存在だ。
IoTで集めたデータには、画像や映像、音声といった非構造データも多く含まれる。従来は、そうしたデータを分析可能な形に整えるために大きな負荷がかかっていた。しかし、2022年のChatGPT登場を皮切りに、生成AIをデータのインタフェースとして使用する動きが広がり、非構造データを業務で使える形に整理しやすくなった。さらに検索性も高まり、自然言語で問いかけるだけで、必要な答えを引き出せるようになったことも大きい。
そして、その先にあるのが、AIがロボットやドローンなどを自律的に動かすフィジカルAIの世界だ。野口氏は「日本の製造業は、これまでも自動化に力を入れてきました。今後はフィジカルAIによって、設備を通信経由でアップデートしながら、より高度に、場合によっては自律的に判断して動かせる世界が来ます。こうした技術をいかに取り入れ、競争力につなげていくかが大きなポイントとなります」と考えを述べる。こうした一連の領域を、それぞれ異なる強みから支えるのがKDDIとソラコムだ。
「つなぐ」の先へ、IoTデータを価値に変える両社の取り組み
KDDIは25年にわたり、自動車や社会インフラなど、高い信頼性が求められる領域で安定したIoTコネクティビティを提供してきた。通信規格やセキュリティ、顧客ニーズの変化に合わせ、国や地域をまたいで最適な通信に自動で接続する「グローバル通信プラットフォーム」を進化させてきた。現在は世界86の国と地域で展開し、同社のIoT累計回線数は6300万を超える(2026年6月末時点)。
KDDIが目指すのは、この膨大な接点をAI時代の価値創出基盤へと発展させることだ。IoTデータを構造化してAIが読み込みやすい「AI-Ready」な状態にし、業務効率化やサービス高度化といった成果に結び付けるまで伴走する。
その実効性を支えるのが、現実世界でサービスを動かしてきた経験だ。ドローンの遠隔運航や、自動運転車両の遠隔監視を行う「モビリティコントロールセンター」、Starlinkを活用した衛星通信サービスなど、KDDIは通信を「つなぐ」だけでなく、現場でさまざまなシステムを運用してきた。フィジカルAIの時代には、この経験が重みを増す。野口氏は「AIの素晴らしい能力を生かすうえでも、運用まで含めた最後の『現実世界への実装力』が、他にない資産として生きていくと考えています」と述べる。こうした実装力を強みとしながら、AI、セキュリティ、BPOなど周辺領域も含め、IoTで収集したデータをAI活用につなげるための総合的な支援体制を提供していく考えだ。
一方のソラコムは、通信コアネットワークをクラウド上に実装し、機能をソフトウェアとして迅速に開発、更新できるクラウドネイティブな設計に強みを持つ。2014年の設立以来、「IoTの民主化」を掲げ、高度な専門知識や大規模な初期投資がなくてもIoTを始められる環境を整えてきた。1回線から利用できるセルフサービス型で、コンソールやAPIを通じて回線やデバイスを柔軟に管理できるため、小さく始めて試行錯誤しながら事業を拡大しやすい。こうしたアプローチは国内外を問わず幅広い企業に支持され、その回線数は1000万を超える。
近年は、IoTデータと生成AI、外部サービスを組み合わせる「SORACOM Flux」や、各種データからAIボットを構築できる「Wisora(ウィソラ)」を展開する。デバイスからクラウド、AIまでをつなぎ、データの流れや処理を制御する「オーケストレーションレイヤー」へと役割を広げている。
2017年にソラコムがKDDIグループに参画して以来、両社は先進技術を共同で実装し、5G向けMVNOやIoT通信/管理基盤などを開発してきた。その成果の一つが、KDDIのネットワークとソラコムのIoTプラットフォームを組み合わせた「KDDI IoT アクセス」だ。玉川氏は「KDDIとソラコムの協力プロジェクトは、いわば『出島』のような役割を担っています。新しいテクノロジーをいち早く取り込み、まず自分たちで試して動く形にし、その成果をサービスや事業へ広げていく。それが私たちの役目だと考えています」と説明する。
ミッションクリティカルな領域まで含めた大規模で安定した運用と社会実装を担うKDDIと、先進技術を素早く使いやすい形で提供するソラコム。ソラコムがプラットフォームを進化させることで、KDDIのサービスにもその成果を継続的に取り込める。このグループポートフォリオが、KDDIグループのIoT×AIにおける価値の核となっている。
Gartnerの「マネージドIoTコネクティビティサービス(ワールドワイド)部門のMagic Quadrant」でリーダーの1社と評価
両社が積み重ねてきた取り組みは、第三者機関からの評価にもつながった。KDDIとソラコムは「Soracom-KDDI」として、2026年5月、米国Gartnerの「マネージドIoTコネクティビティサービス(ワールドワイド)部門のMagic Quadrant」でリーダーの1社と評価された。同部門で日本に本社を置く企業がリーダーの1社に位置付けられるのは初となる。評価は「ビジョンの完全性(Completeness of Vision)」と「実行能力(Ability to Execute)」の2軸で行われ、Soracom-KDDIは両軸を基に評価された。GartnerのMagic Quadrantは、特定市場に関するリサーチを集約し、市場で競合する各社の相対的な位置付けを俯瞰的に示す評価ツールである(※2)。
米国Gartnerの「マネージドIoTコネクティビティサービス(ワールドワイド)部門のMagic Quadrant」[クリックで拡大]提供:KDDI Gartnerのレポート全文はこちらで確認できる(英文のみ)
野口氏はその理由について「1社で全てを担うのは難しいですが、得意な領域が異なるKDDIとソラコムが2社の強みを組み合わせることで、幅広いニーズや市場をカバーできます。それが、グループ(Soracom-KDDI)として今回の評価につながった理由だと思います」と述べる。
加えて、KDDIは「グローバル通信プラットフォーム」を軸に、長年にわたりコネクティビティを提供してきた。トヨタ自動車やBMWといった自動車メーカーのコネクテッド化をグローバルで実現してきたのは、その代表例だ。野口氏は「時代やお客さまのニーズに合わせて技術を進化させ、先を見据えて取り組んできました。今回の結果は、コンサルティング力や商品開発力を含め、長年培ってきた総合力の表れだと受け止めています」と話す。
また、グローバルなIoTプラットフォームを目指していたソラコムにとって海外リサーチャーからの評価は、創業時から目指してきた目標だった。玉川氏は「これまでも主に先進性を示す軸で前進してきました。今回、Soracom-KDDIとして評価を受けたことで、実行能力の面でも評価されたと考えています」と話す。
ただし、この評価は両社にとって到達点ではない。求められる水準は年々高まり、リーダーの評価を維持するには成長を続ける必要があると見ている。「リーダー・クアドラントに位置付けられたということは、世界でも先進的な企業グループだと認定されたということと捉えています。その評価を、覚悟を持って受け止め、日本の産業のデータ活用を前に進めていきます」と玉川氏は決意を示す。
両社は今後も積極的な投資を継続し、SGP.32によるeSIMオーケストレーション、生成AI統合(SORACOM Query・SORACOM Flux)、衛星通信サービスの拡充など、最先端の技術革新を推進していくという。
フィジカルAIを支える、次代のデジタルインフラへ
今後について野口氏は「IoT×AIでデータ活用の範囲は一気に広がり、フィジカルAIの時代も、もうそこまで来ています。それを支えるデジタルインフラとして、IoT基盤を進化させていくことを考えています」と話す。
「昔のSF映画で描かれていたような未来が、フィジカルAIによって現実に近づいています。その実現においてIoTは要の技術の1つです。通信の提供にとどまらず、AIによる制御や、動くものを遠隔で操作、監視する仕組みまで支え、夢のようなロボティクスの世界を下支えする基盤を提供していくことが、私たちの使命だと考えています」(野口氏)
一方、玉川氏は、IoTとAIを活用した新たなサービスの創出を後押しし、日本の製造業の競争力向上につなげたい考えだ。
「日本の製造業が、製品を販売するだけでなく、機器をつないで保守や予知保全などのサービスを提供する『コト売り』へと広がっていくことを支えたいと考えています。お客さまが新しいサービスやプロダクトを生み出せるプラットフォームをグローバルで提供します。また、ソラコム自身も日本発のグローバル企業として成長することで、デジタル貿易赤字の解消にも貢献していきたいです」(玉川氏)
KDDIの社会実装力と、ソラコムの技術開発力。両社は互いの強みを生かし、アイデアの創出から社会実装までを支えながら、IoT×AIが生み出す価値を国内外の産業へ広げていく。
(※1)Source : Gartner, Magic Quadrant for Managed IoT Connectivity Services, Worldwide, Pablo Arriandiaga et al., 4 May 2026
(※2)Gartner, Research Methodologies, MAGIC QUADRANT, July 28, 2026
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提供:KDDI株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年10月6日




