「ポンプ起点」の工場省エネ、共創ラボ通じたグルンドフォスのスマート化戦略:スマートポンプで工場効率化
ポンプは工場やデータセンターなどを支える不可欠なインフラである一方、そのエネルギー消費や運用の最適化が十分に議論されているとは言えない。脱炭素や省エネルギーが求められる現在、ポンプは単なる設備から、社会課題を解決する重要な要素へと位置付けが変わりつつある。デンマークに本社を置くポンプメーカー、グルンドフォスの日本法人であるグルンドフォスポンプは、スマートポンプをはじめとするソリューションを通じて、設備全体のエネルギー効率と安定運用を最適化する中核として捉え、システム全体の課題解決を支援している。新たな共創空間「i-Solutionsラボ」開設の狙いとともに、同社が目指す姿や日本市場での今後の展開を聞いた。
見過ごされがちな“産業界の心臓”
工場やデータセンター、半導体工場、船舶など、現代の産業インフラでは、水や油、薬液、冷却液といった流体の精密な制御が欠かせない。AI(人工知能)サーバの高密度化が進むデータセンターでは冷却液の循環が安定稼働を左右し、大量の水を使う半導体工場では純水や冷却水の供給が製造プロセスを支える。船舶においても、冷却や水処理、燃料供給など、流体を扱う場面は多い。こうした流体を必要な場所へ送り、循環させ、安定して供給するために欠かせないのがポンプだ。
ポンプは日常的に目にする設備ではない。しかし、その働きは流量や圧力、温度の安定に直結し、生産条件や冷却能力、設備の稼働率を左右する。異常が起きれば、前後の工程や設備全体に影響が及ぶ可能性もある。そのため、ポンプの運用は、現場の安定稼働と競争力に密接に関わっている。
だが、ポンプの役割や運用の在り方が、十分に意識されているとは言い難い。グルンドフォスポンプ 取締役社長 兼 インダストリー事業部 事業本部長の松田則典氏は「ポンプは動いて当たり前の存在で、動かなくなれば全てが止まる『産業界の心臓』のような役目を担っています。一方で、今使っているポンプにどれだけの電力やオペレーションコストがかかっているか、既設ポンプの見直しやリプレースによってどれだけ省エネ効果や効率改善が見込めるか、十分に把握されていないケースもあります」と述べる。
60カ国以上で水ソリューションを展開
この状況に対し、グルンドフォスはポンプを省エネや効率改善の起点として捉え、設備全体の最適化を支援している。
同社は1945年にデンマークで創業したポンプメーカーで、水ソリューションをグローバルに展開。現在は60カ国以上に拠点を構え、従業員数は2万人超、2025年の売上高は47億ユーロに上る。産業、建築、インフラなど幅広い領域でポンプや関連ソリューションを提供し、各地域の水利用や省エネ、安定稼働に関わる課題に向き合ってきた。
グルンドフォスは気候変動対策にも力を入れている。同社は水を“地球上で最も貴重な資源”の1つと位置付け、水の効率的な利用とエネルギー消費の抑制を事業戦略の中核に据えてきた。
2022年には、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を認定する国際的な枠組みであるSBTiの認定を取得。2030年までのスコープ3排出量25%削減、2050年までのネットゼロを公約している。こうした方針の下、同社はポンプを通じた省エネ、省水、設備最適化の提案を進めている。
日本で40年、顧客目線で築いたサポート体制
グルンドフォスの日本事業は、1981年にスウェーデン系商社ガデリウス内の一事業部として始まった。1986年には日本法人の前身となるグルンドフォス・ガデリウスポンプを設立。当初は神戸を拠点に事業を展開していたが、1992年に本社を静岡県浜松市へ移転するとともに、同敷地内に工場を設立した。同年、社名を現在のグルンドフォスポンプに変更した。
日本市場での事業を支えてきたのが、工場とセールスが一体となった供給・サポート体制である。外資系メーカーが本国から完成品を輸入する場合、納期が半年程度かかることも珍しくない。そこで同社は国内に部品在庫を持ち、グローバルで生産された部品を基に、浜松工場で組み立て、検査、出荷、メンテナンスサポートまで行う体制を整えてきた。緊急時には、部品があれば午前中の受注に対して当日中に組み立て、通水テストを行って出荷することもあるという。
「私たちは、工場とセールス部門が一体となった体制で日本市場を開拓してきました。お客さまの声を社内で素早く共有し、具体的なアクションにつなげられる点が強みです。ポンプはインフラを支える重要な設備であり、万が一の際にはスピーディーな対応が必要になります。外資系メーカーの製品では納期やサービス体制を不安視されることもありますが、当社はサービスネットワークを整え、部品在庫も2カ月分以上確保しています。物流面で問題が生じた場合にも即座に対応できます」(松田氏)
品質や納期、サービス体制への要求が高い日本市場で信頼を得ることは、グルンドフォスにとって大きな意味を持つ。日本で培った知見や技術をアジア各国へ展開することで、グループ全体の事業拡大につなげられるためだ。40年にわたる日本市場での取り組みを通じて、単なる製品供給にとどまらず、設計から運用までお客さまと伴走するサポート体制を築いてきた。日本市場に根差した改善の積み重ねは、同社の国際競争力を高める上でも重要な役割を果たしている。
次世代スマートポンプで省エネ/省力化
グルンドフォスポンプが現在力を入れているのが、スマートポンプの普及だ。一般にスマートポンプとは、センサーや制御機能、通信機能などを組み合わせ、流量や圧力、温度、水位といった状態に応じて運転を最適化するポンプを指す。運転条件に応じて最適制御を行うことで、従来の常識であった過剰運転やバルブ制御を見直し、エネルギー消費と運用負荷の両方を同時に低減する。
グルンドフォスによると、世界の電力消費に占めるポンプおよびポンプシステムの割合は約10%に上るという。ポンプの効率化は、個々の設備のコスト削減にとどまらず、社会全体の省エネにも関わるテーマなのだ。
「当社ではこれまでも高効率モーターを業界に先駆けて導入するなど、ポンプの効率向上に取り組んできました。ただ、ポンプ単体の性能向上だけでは、効率改善の効果は限定的です。重要なのは、制御やインテリジェンスを含めた形でポンプを発展させることです。実際に、スマートポンプを導入したお客さまでは、平均で37%程度の省エネが実現できていると考えており、大きなインパクトがあると見ています」(松田氏)
グルンドフォスのスマートポンプは、ポンプ、モーター、コントローラーを組み合わせ、流量や圧力の変化に応じて運転を最適化する。圧力一定、流量一定、水位一定、温度一定などの制御に対応し、通信機能を使った遠隔監視や操作も可能だ。従来のようにバルブで流量を絞るのではなく、ポンプ自体を必要な分だけ動かすことで、省エネや省力化、メンテナンス負荷の低減につながる。
スマートポンプの価値体感「i-Solutionsラボ」
こうしたスマートポンプの価値を体感できる場として、同社が2025年に浜松に開設したのが「i-Solutionsラボ」だ。同ラボでは、Eモーター搭載のスマートポンプ「CR(N)E」や、標準ポンプに組み合わせて制御機能を付加できる別置き型インバーター「CUE」などを展示している。スマートデジタル定量ポンプ「DDA」と組み合わせた流量比例注入のデモもあり、ポンプと周辺機器を連携させた制御の可能性を実機で確認できる。

i-Solutionsラボにあるデモ機の一部。圧力を一定に保ちながら複数台で並列運転を行うデモ機(左)と、ポンプの回転数から推測した流量と連動して薬液の注入量を均一に調整するデモ機(右)[クリックで拡大]松田氏は、同施設を「スマートポンプの普及に向けた共創空間」と位置付ける。
「欧米ではスマートポンプへの移行が進んでいますが、日本を含むアジアではまだ遅れているのが現状です。特に日本では、流量をバルブで調整する考え方が根強く、自動制御に不安を感じるお客さまも少なくありません。だからこそ、実際に設備を見て、触り、どのように動くのかを理解していただく場が必要だと考えました。スマートポンプの価値を体感していただくことが、普及に向けた第一歩になると考えています」(松田氏)
想定する来場者は、ディーラー、エンドユーザー、OEMメーカーなど幅広い。実際の来場者からは、ポンプのデザイン性に加え、スマートポンプが家電製品のような感覚で簡単に操作できる点を評価する声も寄せられているという。i-Solutionsラボの見学を希望する場合は、グルンドフォスポンプの問い合わせ窓口を通じて連絡できる。
半導体、データセンター、船舶、工場全体省エネも
今後、グルンドフォスポンプが注力するのが、半導体製造、データセンター、船舶の3領域だ。
半導体製造では、純水や冷却水、薬液などを扱う装置に対し、安定した送液と精密な制御を提供することで、製造プロセスの安定化や省エネ、省水に貢献する。データセンター向けには、AIサーバの高密度化に伴って重要性が増す液冷システムやCDUなどにポンプを提供し、冷却液の安定循環を通じて設備の安定稼働と電力効率の向上を支える。船舶領域では、冷却、水処理、燃料供給などの用途に加え、メタノールなど新燃料への対応も見据え、過酷な環境下でも安定して流体を扱えるポンプで、安全運航や脱炭素化などを支えていく。
さらに同社は、個々のポンプ更新にとどまらず、工場やインフラ全体を対象とした最適化を通じて、持続可能な産業の実現に貢献していく考えだ。
既設設備の運転状況を測定し、省エネ効果やコスト削減効果を試算した上で、必要な流量や圧力に応じたポンプ構成や制御方法を提案する。海外では、大手食品/飲料メーカーなどで同社の省エネ提案が採用されており、こうした取り組みを日本市場でも広げていく方針だ。
「大手タイヤメーカーの工場では、従来は大きなポンプを複数台使っていた設備に当社の装置を導入することで、年間数百万円規模の電力コスト削減につながりました。設備は系統ごとにポンプを追加していくうちに複雑化しがちですが、1つのシステムとして見直すことで、メンテナンスの手間を減らし、運転能力を維持しながら省エネも実現できます」(松田氏)
工場の省エネや設備改善は重要なテーマだが、足元のポンプを起点に考えれば多くの改善余地があるのだ。「工場の省エネというと、大掛かりなシステムの導入や複雑なプログラムが必要だと思われることもあります。しかし、スマートポンプを活用することで、対応できることも数多くあります。お客さまの新しい取り組みや実現したいことに応じて、さまざまな角度からお手伝いできます」(松田氏)。
これまで“動いて当たり前”と見過ごされてきたポンプを、省エネと競争力を生み出す起点として捉え直す。i-Solutionsラボでスマートポンプの価値を体感することも、新たな改善のきっかけとなるはずだ。
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提供:グルンドフォスポンプ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年7月17日









