工場とビルのオートメーション、進化の鍵はオープン化と省エネにあり:スマート工場&スマートビルに向けて
スイッチング電源をはじめとしたパワーエレクトロニクス製品のトップサプライヤーとして知られるデルタ電子。同社が「産業自動化」と「ビルオートメーション」で新たな事業展開を開始した。鍵になるのは「オープン化」と「省エネ」だ。
台湾・台北市に本社を構えるデルタ電子は、グループ全体で全世界43カ国に153カ所の営業拠点、40カ所の製造工場、R&Dセンター61カ所を配置し、7000人を超すエンジニアを擁するグローバル企業だ。スイッチング電源、ブラシレスDCファン、パワーチョーク抵抗、テレコム向け電源などの製品はトップシェアを誇り、2016年の売上高は前年比3%増の77.8億米ドル(約8500億円)を記録した。
このように、順調に業績を拡大してきた同社は新たな取り組みを開始した。これまで、「パワーエレクトロニクス」「エネルギーマネジメント」「スマートグリーンビル」の3分野で展開してきた主力製品を、最近の事業環境の変化や社内の事業部の顧客、市場、コア技術、事業戦略などの共通性を踏まえて「パワーエレクトロニクス」「オートメーション」「インフラストラクチャー」の3つのカテゴリーに再編。新たな製品の開発やソリューションを提供できるよう、2017年5月に組織変更を行い、体制を固める予定で、日本国内でもこの戦略に沿って市場開拓に取り組む。
3つのカテゴリーのうち、日本国内で注力していくのがオートメーション分野だ。オートメーション分野は、工場で用いられるコントローラーや電源などを提供する「産業自動化」と、ビル設備向けの「ビルオートメーション」が中心となる。日本法人・デルタ電子 代表取締役の柯進興氏は「産業自動化、ビルオートメーションの両方とも、スマート工場、スマートビルを目指して新たな需要が生まれている。当社は、『オープン化』と『省エネ』をキーワードに、この需要を獲得していきたい」と語る。
産業自動化では、工場の生産ラインにつながる電源機器などではデルタ電子の実績は高い。その一方で、コントローラーについては、台湾や中国、東南アジアなどと比べて、国内市場での採用は進んでいなかった。これは、国内のFA市場が日系の大手FA機器メーカーのシェアが高く、各大手メーカーが採用する独自の通信規格(フィールドネットワーク)による囲い込みで市場が守られてきたことが背景にある。
ただし、スマート工場に向けた取り組みが進む中で、日本国内だけでなく海外の工場にもスマート化を広げたいというユーザーニーズが高まってきた。その際に問題になるのが、先述した独自の通信規格である。特定のメーカーからしか調達できないFA機器では、コストダウンや生産の合理化、入手の容易さ、現地サポートの面に課題が出てくるからだ。
そこで、注目を集めているのが、オープンな接続性を特徴とするイーサネットベースの通信規格「EtherCAT」だ。柯氏は「トヨタ自動車も採用に踏み切るなど、国内外でEtherCATへの注目は高まっている。当社は、このオープンなEtherCAT対応の製品群を早い段階から展開してきた。グローバルでの調達とサポート体制を考慮する場合には、当社のEtherCAT対応製品は有力な選択肢になるだろう」と強調する。
例えば、ACサーボドライブシステム「ASDA A2-E」は、EtherCAT通信インタフェースを内蔵。IEC 61158とIEC 61800-7に準拠し、ハイエンドのアプリケーションにおいて高速で正確なリアルタイム性能を提供する。また、CiA 402に基づくCoEのデバイスプロファイルおよびEtherCATの全てのコマンドタイプをサポートする。この他、セーフトルクオフ機能やフルクローズドループ制御、さらには制振機能を備えることにより、幅広い機械用途に適合。多様な定格出力に対応し、最大5.5kW/400Vのモーター駆動が可能。200Vと400Vタイプをそろえている。
2017年4月に千葉県の幕張メッセで開催された展示会「TECHNO-FRONTIER2017」では、オープンなEtherCATを用いてさまざまな機器を接続できることを示すため、1台のコントローラーにより32個のモーターを同期制御できる様子をデモンストレーションした。小型ACインバータ「MH300/MS300シリーズ」や、磁束ベクトル制御インバータ「VFD-C2000シリーズ」などの豊富な製品群に加えて、海外市場で高い評価を受けているスカラロボットや多軸ロボットの日本国内での販売も視野に入れている。
EtherCATを軸にしたオープン化への対応に加えて、高い実績を持つ電源の技術を生かした省エネも重視している。「当社の工場では、自社のFA機器や各種電源、熱対策機器との組み合わせによるエネルギー削減の取り組みを実施しており、その成果を顧客に提案できる。世界トップの実力を持つ電源と熱対策機器も加味すれば、工場全体の省エネ実現に大きく貢献できるだろう」(柯氏)という。
ビルオートメーションでも「オープン化」と「省エネ」が鍵に
産業自動化とともに、ビルオートメーションの国内展開も加速させている。その事業展開でもオープン化が鍵になっている。
ビルオートメーションの通信規格は、工場内の通信規格以上にさまざまなものが使用されている。しかし、これらを相互につなげることは容易でないためスマートビルの実現を妨げる壁になっていた。
2016年4月にデルタ電子グループに加わったオーストリア・LOYTEC(ロイテック)が展開する製品は、これらさまざまなビルオートメーションの通信規格を相互につなげられることを特徴としている。この特徴は既存ビルのシステムとの親和性が高く、空調、照明、エネルギー、給排水、エレベーター、電力、セキュリティなどのビル設備を単一プラットフォームに統合できるようになる。ロイテックの製品が、ビルオートメーションの通信規格をオープン化していると言い換えてもいいだろう。
そして「デルタ電子は2006年から、グリーンビルのパイオニアとして台湾をはじめ、中国、インド、米国などでビルの省エネ化を提案してきた」(柯氏)という実績と、ロイテック製品の優れたアーキテクチャのオープン性を組み合わせれば、既存ビルの資産をそのまま使いながら省エネのスマートビルを実現できるという寸法だ。
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提供:デルタ電子株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年6月28日