注目のベンチャー企業が“また使いたい”と思う試作オンラインサービス。意外な魅力とは:アークオンラインサービス事例
世界初の完全後付型スマートロック Akerunを開発している注目のベンチャー企業フォトシンス。同社では、新製品の試作にアークオンラインサービス(AOS)を活用した。Webの手軽さに加え、人がきちんと対応しているという安心感を兼ね備えた“オンラインとオフラインのいいとこ取り”の試作サービス。その隠れた魅力をインタビューで探る。
フォトシンスのミッションは“つながるモノづくりで、感動体験を未来に組み込む”。構成メンバーは20〜30歳代が中心で、それぞれ企業に勤務していた経験がある。異なるスキル・バックグラウンドを持つメンバーが集まり、それぞれの「得意」を生かしたスピード感のある開発が強みのベンチャー企業だ。同社のオンライン試作の実体験を通して、アークオンラインサービス(AOS)を選んだ理由を探った。
手軽で便利なオンラインサービス。一方で細かいやり取りがしにくい懸念も
フォトシンスの起業のきっかけは、仲間内の飲み会で「何か新しいことをしたい」「意外とカギって不便」と盛り上がったこと。当時メンバーは企業に属していたため、週末に集まっては開発をしていたが、メディアに掲載されたことを機に反響があったことを受けて、2014年9月にフォトシンスを設立。その後、約半年の開発期間で、2015年4月、 Akerun(アケルン)を市場に送り出した。
同社 mechanical designerの関谷達彦氏は「ベンチャーの強みは、短期間でアイデアを形にし、市場に投入できるスピード感だと思っている。小さな組織で、メカ、エレキ、ソフトなどさまざまな担当エンジニアが肩を並べて、コミュニケーションを密にとりながら開発している」という。関谷氏自身も、機構設計の初期段階から量産の金型を想定して設計するなど、常にスピード感を意識しているそうだ。
スピード重視の同社には、試作のオンラインサービスは重要なツールだ。「従来のように、設計を提示して見積もりをもらい、何度か価格や納期の交渉をし、また見積もりをもらって、振り込みをして……という一連のフローはどうしても時間と手間がかかる。オンラインはそれを全部省けるのが魅力。同じ部品を何度も発注するような場合には、特にメリットは大きい」と関谷氏はいう。
一方で、「CADデータをアップロードした後、細かいやり取りがないことに不安も感じる」とも。関谷氏はオフラインでの試作をした経験もあるというが「工場と度々やり取りをしなければならないし、納品まで時間がかかる。でも設計の意図や重要な部分を伝えられるし、工場側から提案してくれたり、アドバイスをくれたりするのは心強かった」。
試作のオンラインサービスは、スピード重視の開発現場にとって強い味方であることは間違いない。しかしオンラインの手軽さゆえに、詳細な打ち合わせやコミュニケーションが少ないことは不安でもあるというのが、利用者のホンネのようだ。
手軽ながら安心感も兼ね備えた“オンラインとオフラインのいいとこ取り”
そのフォトシンスが従来のAkerunをIoTプロダクトへと進化させ、鍵でコミュニケーションできる新製品「スマートロックロボット Akerun Pro」を2016年7月に発表した。同社では、今回の新製品の試作で初めて アークオンラインサービス(AOS)を利用した。
AOSを運営するのは、1968年設立(1948年創業)の試作のリーディングカンパニー アーク。開発支援企業として、デザイン、設計、解析、試作など、大手企業に長年サービスを提供してきたノウハウと実績を、ベンチャー企業やメイカーズの方々にも提供したいと、2015年4月から試作のオンラインサービスを開始した。
フォトシンスがAOSに出会ったきっかけは、展示会でアークのブースに立ち寄ったこと。「大手企業が利用しているクオリティの高い試作サービスを、簡単に利用できるのはうれしい。3Dプリンタ(光造形)でも、かなり完成度の高い試作ができると知って、使ってみたいと思った」と関谷氏はいう。
まず見積もりは、3DCADデータをアップロードし、数量や材料などを選択するだけ。最短30分で見積もりが届き、金額があえばそのまま簡単に発注ができる。アークは複数の自社工場を持っておりキャパシティが大きいため、発注が集中しても作業を分散させて、短納期に対応することができるのだ。
また、加工を光造形・粉末造形・切削加工・真空注型などさまざまな方法から選択できるのもAOSの特長だ。「これまでの試作は主に切削で行ってきたが、AOSでは、部品によって工法を変えて利用している。部品の形状や大きさに適した工法を選ぶと、コストダウンできる」と関谷氏。しかも工法にかかわらず発注先が1カ所なので、管理もシンプルというわけだ。
関谷氏が特に強調することの一つが"安心感"だ。「大手企業からの難易度の高い要求に応えてきたことで培われた高い技術力が表れている。またAOSには『メッセージ機能』があり、オンラインの向こう側にいるスタッフと、十分に意思の疎通を図ることができる。メッセージ機能はチャットのような感覚で利用でき、メールよりも手軽に使えてレスポンスも早いので、とても助かった」という。
もう一つは“仕上がりの良さ”である。「量産を想定した設計が、光造形で完全に再現されているだけではなく、形状によっては仕上がりを考慮して斜めに出力してくれるなど、先回りしていろいろなところに気を遣ってくれている。初めて納品物が届いたとき、きれいに磨かれていて感動した」
しかし、コストも重要なポイントであるはず。海外で試作をするという選択肢は考えなかったのか。
「海外に頼むと、どうしても付帯業務が増えてしまう。また時間がないなかでのコミュニケーションや、何かトラブルがあったときの対応など、不安要素も多い。AOSは、形状に適した工法を相談したり、細かいやり取りもできて安心。何より本業に集中できることは大きなメリットだと思う」(関谷氏)
QCDのバランスが良く、オンラインの手軽さとオフラインの安心感を持ちあわせたAOSは、まさに柔軟な対応ができるハイブリットなサービスといえるだろう。関谷氏は「AOSを一言でいうなら“オンラインとオフラインのいいとこ取り”。スピード感のある製品開発のために、今後も活用していきたい」と語った。
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提供:株式会社アーク
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年8月12日