最新SoC「Merlin Falcon」から多彩な採用事例まで、AMD 組み込みプロセッサの全てを体感:ET2015特別企画
組み込み機器の画像処理能力への要求はマシンビジョンや4Kの普及でより高まっており、その全てを受け止めるべくAMDが投入するのが、最新SoC「Merlin Falcon」だ。ET2015の同社ブースではMerlin Falconの性能をくまなく確認できる他、多彩な同社製品の採用事例もチェックできる。
組み込み機器といえば「安定している」「変わらない」ことは美徳の1つだが、組み込み機器に求められる要件は劇的に変化し続けている。その最たるものは画像処理に求められる能力だ。
Industry 4.0での実現を目指す“つながる工場”や、ヒトと機械を結ぶインタフェース(HMI:Human Machine Interface)の高度化は高精度なカメラなしには実現せず、高精度なカメラから送り出されるデータは、これまでとは比べものにならないほど大容量だ。また、2020年のオリンピック開催を控えて4K映像の本格普及も始まっており、映像を扱う組み込み機器に求められる処理能力はますます増大する。
2015年11月18〜20日に開催される、組み込み技術の総合展示会「Embedded Technology 2015(ET2015)」にて、日本AMDは発表されたばかりの新型SoC「Merlin Falcon」を中心としたデモを行う。同社既存製品の例にもれず、強力な画像処理性能を持つだけではなく、SoC化することによって得られるメリットを十分に体験できる展示に注目だ。
最新SoC「Merlin Falcon」のパフォーマンスをチェック
コードネーム「Merlin falcon」と名付けられた新型SoCは、CPUとGPUを1チップに統合した「APU(Accelerated Processing Unit)」である「AMD Rシリーズ」の後継にあたるが、1チップに統合するだけではなく、これまで別チップだったサウスブリッジまでを1パッケージに統合したSoC(System on Chip)製品だ。
プロセスルールは変わらず28nmだが、CPUコアに“Excavator”、GPUに“Radeon HD 10000”を採用。内部バスの高速化も図られた。アプリケーションの負荷を分散し、CPUとGPU、あるいはビデオデコーダーなど各種アクセラレータで並列処理を行う「HSA(Heterogeneous System Architecture)」も内部バス帯域の高速化が図られており、トータルとしての性能向上を実現している。GPUのマルチメディア用ハードウェアクセラレータでCPUへの負荷を低く保ったまま4K映像の再生が可能であり、H.264だけではなく次世代のコーデックであるH.265にもハードウェアレベルで対応しているのは見逃せない。
加えてSoC化によってパッケージサイズも小型化が進められた。熱設計の観点からは既存のAMD RシリーズもTDPが変更可能なコンフィギュアブル構成となっていたが、新製品では可変幅が12〜35Wとより広くなり、対応できる製品や処理軽重の幅が広がっている。
この他にも新たにDDR4メモリをサポートし、また、ARMのTrustZone対応(Coretex-A5をオンダイ構造として実装)やNISTのセキュリティ規格にも対応可能な乱数発生器の物理搭載などによってセキュリティ性が求められる用途にも利用できるなど、次世代の組み込み機器に求められる処理を備えたのが、Merlin falconだ。
会場ではさまざまな帯域の4K/H.265映像の再生を通じてCPUの負荷を検証するデモを行う他、GPUを使った並列処理性能の訴求を行う予定だ。H.265映像についてはハードウェアデコードであるために高ビットレート映像であってもCPU負荷に影響しない様子を確認でき、GPGPU処理では柔軟性が高く低負荷である様子を確認できるはずだ。
加えてCRI・ミドルウェアの協力により、Merlin falcon上でCRI・ミドルウェアのムービーミドルウェア「CRI Sofdec7」を利用して複数の動画再生とUnityによる3Dレンダリングを同時に行うデモを行う。低負荷でメモリ効率の良い動画システムを構築できることで知られるCRI Sofdec7だが、複数本の動画を再生しながら、同時にUnityエンジンを用いたGPUによる3Dレンダリングの同時描写はかなりの負荷となることが想像できるので、Merlin falconでどれだけ滑らかな処理が行えるのか、一見の価値ありと言える。
有力な組み込みLinuxディストリビュータであるRed HatのRHEL(Red Hat Embedded Linux)を使ったAMD Rシリーズ内蔵のGPUを活用したデモを始め、イーソルの協力により、T-Engine標準のRTOSであるT-Kernelを、イーソル独自で拡張した組み込みシステム向けRTOSである「eT-Kernel」を「AMD Rシリーズ」上で動かすデモが用意される他、そのパフォーマンスの高さと拡張性で人気となっているAMD Gシリーズ搭載NASであるQNAPの「TVS-x63シリーズ」も展示される。
QNAPの「TVS-x63シリーズ」はカテゴリ上こそNASに分類される製品だが、クアッドコア 2.4Ghz駆動のAMD GシリーズAPU「GX-424CC」を搭載しており、10GbE構成で最大1432MB/秒の読み書きや、最大691MB/秒でのAES-256ビット完全暗号化、内蔵GPUによるトランスコーティングなど、NASというよりも高機能なIoTゲートウェイと言ってよい製品であり、AMD製組み込みプロセッサの持つ、能力の多彩さをうかがい知れる製品だ。
また、ブースにはSapphireやAdvantech、Axiomtekなどによる同社製品搭載ボードやHeber製ボックスPCの展示が予定されており、さまざまなベンダーによる実装例を確認することができる。日本AMDのブースでは、発表されたばかりの最新SoCによる組み込み画像処理の最新事例から、既に高い評価を得ている製品のパフォーマンスチェックまで、AMD製 組み込みプロセッサの持つ能力を一度にもれなくチェックできるまたとない機会を提供してくれる場所となっている。
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2015年11月27日