日立ADだからできる、電気自動車の“安心・安全”:ET2012特別企画ブースリポート(日立アドバンストデジタル)
映像・画像解析分野において、業界屈指の高い技術力と多くの採用実績を誇る日立アドバンストデジタル。同社は、2012年11月パシフィコ横浜で開催された組込み総合技術展「Embedded Technology 2012」(以下、ET2012)に出展し、カメラやセンサー、画像処理技術を用いたEV(電気自動車)向けソリューションを披露した。
交通・自動車の安全を“みつめる”組込み技術
組込みシステムの設計開発に定評があり、映像・画像解析分野において、業界屈指の高度な技術力と数多くのプロダクトへの採用実績を誇る日立アドバンストデジタルは、「安全・安心を支える組込技術/交通・車の安全をみつめる」をテーマに掲げ、先のET2012に出展。最先端技術とソリューションの数々を披露し、広大な展示会場の中でひときわ強い存在感を放っていた。
今回の展示テーマを選択した背景とその狙いについて、日立アドバンストデジタル ビジネス推進本部 事業開拓部 担当部長の諏訪充氏は次のように語る。
「ET2012では、自動車や日常生活における安全を確保するための“みつめる”技術をテーマの中心に据えた。今回は特に、広く関心を集めているEV(電気自動車)にフォーカスし、有志社員がガソリン車をベースに制作した『コンバートEV』をブースの目玉とした。EVは、ECU制御ソフトウェア開発を手掛けるわれわれも注力している分野の1つだ。コンバートEVに搭載した技術を通じて、日立アドバンストデジタルが提案する“安心・安全”をぜひ感じてほしい」
カメラによる画像認識技術とセンサー情報を活用したバイタルモニタリング
日立アドバンストデジタル・ブースの中央に鎮座するコンバートEVには、実際に体験・体感できる3つのデモが搭載されていた。その1つが、「ドライバーバイタルモニタリングシステム」である。カメラによる画像認識技術とバイタルセンサーの出力情報を組み合わせることで、ドライバーの健康状態を高精度に把握するというものだ。
ハンドルの左下部にバイタルセンサー(ミリ波レーダー)を、助手席の左側にドライバーの顔周辺を撮影するカメラとバイタル情報を表示するモニターを設置。カメラでドライバーを認識し、ミリ波レーダーによってバイタル状況を取得する。通常、ミリ波レーダーは、障害物などを検知して衝突を軽減するために用いられるが、今回のデモでは、ドライバーの上半身の動きを捉えて、心拍と呼吸をモニタリングするために用いられている。
「カメラやミリ波レーダーにより、心拍や呼吸といったドライバーのわずかな動きを検知している。各種センサーで取得したデータの中から『ノイズ(関係のない情報)』を除去し、必要なバイタル情報だけを抽出するノイズキャンセルと、各センサー間の情報補間による精度向上が技術的なポイント。さらに、取得したバイタル情報をデータベースに蓄積することで、さらなる精度向上や信頼性確保に生かすことができる」と諏訪氏は説明する。
これを応用・発展させれば、ドライバーのバイタル(心拍・呼吸)が停止した際、自動的に電話をかけて救急車を手配したり、緊急事態であることを車外に知らせたりすることもできる。また、GPSと連携させれば、自動車の現在位置なども併せて知らせることができ、迅速な対応につなげることが可能となる。
視線に合わせて角度を最適化する「インテリジェントドアミラー」
コンバートEVには、ラピッドプロトタイピングにより実現した「インテリジェントドアミラー」も備わっていた。ハーフミラーを採用したドアミラーの内部にカメラモジュールを搭載。画像認識技術によってドライバーの視線を認識して、ドアミラーの角度を最適な位置に自動調整してくれるというものだ。
通常は、運転席に着いてからドライバー自身がボタン操作などで細かくドアミラーの角度を調整しながら最適な位置に合わせなければならない。家族で自動車をシェアしているような場合だと煩わしく感じることがあるが、この技術であれば、従来の面倒な手動による角度調整を必要とせずに、ドアミラーをみつめるだけでよい。
画像3 「インテリジェントドアミラー」。一見すると普通のドアミラーだが、内部にカメラモジュールを内蔵している。ドアミラーを“みつめる”ことで、最適な位置に自動調整してくれる。来場者の関心の高かったデモの1つだ
また、ドライバー1人1人に合わせたパーソナライズなども可能。デモでは、運転席に座って初期化してからドアミラーの位置を自動調整するという流れだったが、「例えば、運転席に座った瞬間やキーを回した瞬間などに画像認識して、本人を特定し、過去のデータから瞬時にその人にとって最適な角度にミラー位置を調整するといったことも考えられる」(諏訪氏)という。
Linuxを用いた高速画像処理プラットフォーム
そして、コンバートEVを用いた3つ目のデモが「ソフトウェアドライブレコーダー」だ。これは、画像処理デコード用のオープンソースソフトウェア(OSS)を改良して実現した「高速画像処理 Linuxプラットフォーム」を用いたものだ。展示会場では、同プラットフォームを、米Texas Instrumentsの「OMAP4」向けに最適化したものを用い、コンバートEVの上部に搭載された4台(前方2台/後方2台)のWi-Fiカメラからの映像を、展示ブースに設置された大型モニターに遅延なく映し出すデモを行っていた。
ご存じの通り、Linuxはリアルタイム性が決して高いとはいえない。今回、Linux上で画像処理システムを構築するために、ソフトウェアの構造マッピングを行い、不要なソフトウェアを削ってスリム化させることで、ソフトウェアデコードでも「0.1秒程度」の低遅延処理が可能になったという。
その他、展示会場では、ECU制御ソフトウェアのクラウド型検証プラットフォーム「V2Cloud」や、GPSを受信できない環境でも自律運転制御が可能な「自己位置認識フュージョンシステム」、そして、昨年のET2011で実演していた「3次元地図生成技術」を「床下点検ロボット」と組み合わせたデモなどを展示し、多くの来場者の注目を集めていた。
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提供:株式会社日立アドバンストデジタル
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2013年1月12日