自分が知りたいことだけ検証できる
流体解析ツール:自分たちの望む仕様の環境が作れる解析ツール STREAMとSCRYU/Tetra
最近の設計開発現場では、高性能なハードウェアの価格が大幅に落ちてきていることも後押しし、設計形状をまるごと流体解析したいというニーズが高まっているという。ソフトウェアクレイドルの流体解析ソフト「STREAM」「SCRYU/Tetra」は、並列計算の強力サポートはもちろん、パワフルな流体解析に設計者を積極的に巻き込んでいけるインターフェイスも備える。
国産CAEベンダ ソフトウェアクレイドルが提供する流体解析ソフトウェアの主力製品「STREAM(ストリーム)」および「SCRYU/Tetra(スクリュー・テトラ、英語名は、SC/Tetra)」はともに流体解析ソフトウェアだが、扱うメッシュ(格子)が異なっている。多岐に渡るモノづくり現場の解析対象にあった製品を選択可能にすることで、ツールとしての能力を最大限に発揮させるためだ。
STREAMは「構造格子」というシンプルな要素によるメッシュを扱え、例えば、箱状の空間を検証することが多い室内空調やビル風等の建築関係および電子機器の解析などで活用されている。一方、SCRYU/Tetraは「非構造格子」と呼ばれるさまざまな要素によるメッシュが扱え、こちらは自由曲面で構成される自動車ボディの空力検証などに向いている。STREAMをベースにした製品として、熱設計に特化した「熱設計PAC」も提供する。こちらは、自動車・電子部品や家電の開発現場などで活躍する。
SCRYU/Tetraでは複雑な解析モデルが検証できる分、それなりに計算時間もかかってしまう。設計者は、とにかく結果が早く欲しい。設計部門から解析部門に依頼される解析では、設計形状を簡略化してからSTREAMで解析するケースが多かった。
しかし最近は、設計形状を簡略化せずにSCRYU/Tetraで解析したいというニーズが、急速に高まってきているとソフトウェアクレイドル 副社長の中西 純一氏は言う。「お客さまの設計が複雑になってきているのと同時に、設計モデルそのものを計算したいという要望が増えてきています」(中西氏)。
同社のサポートで把握している範囲では、いまや、STREAMのユーザーの解析モデルは1億〜2億セルレベル、SCRYU/Tetraのユーザーの解析モデルでは2億〜3億セルレベルにも及んでいるという。それも、2009年ぐらいから、セル数が急に“億超え”し出したというのだ。
流体解析では、もはや、並列計算は必須
一昔前のユーザーは簡易な解析モデル作成に細心の注意を払っていたものだった。計算時間をなるべく削減するために、解析に不要な部分は落とし、メッシュも最適な数になるように試行錯誤した。
しかし現在は、コンピュータ事情が非常に良くなり、技術者の使うマシンも並列機であることが、もはや普通になってきている。これにより、簡略化しない設計モデルをそのまま解析をしたとしても、昔ほどの時間はかからなくなってきており、また常に開発期間短縮という課題を抱え、研究部門だけではなく、設計部門も大規模解析における並列計算に注目し始めているという。
同社自身も、数百コアレベルのマシンを常備する。そうしないと、もはや顧客ニーズに対応できなくなってきているからだ。
「いま、解析の成果とハードウェア性能のいいサイクルが起こっていると思っています」と、ソフトウェアクレイドル 技術部 部長代理の黒石 浩之氏は言う。
「ある日、『解析でここまでやれば、こういう成果が出るだろう』と思い立ったとします。しかも最近は、高性能なハードウェアの価格がぐっと下がってきています。それなら、ハードウェアに投資して並列数をもっと増やし、成果を出す。そして、『もっと解析を活用してみようか!』……と、そんなサイクルで、解析の規模はぐんぐんと育っていくのです」(黒石氏)。
製品開発への強い問題意識があり、解析への意欲が高くても、高性能なハードウェアが非常に高額だったら、今日のように、ユーザーの流体解析は大規模化していないだろうと黒石氏は言う。
ソフトウェアクレイドルのすべての製品は、以前から並列計算に対応しているが、日々大規模化する解析に合わせて常に進化し続けている。「当社では、PCでの並列計算から大規模クラスタまでのライセンスを用意しております。もちろん、データは互換性も失うことなくお客さまはステップアップしていくことが可能です」(黒石氏)。
同社製品の並列計算におけるスケーラビリティについては、「かなり良好」だという。「例えばSCRYU/Tetraでは、100コアを使った計算なら、1コアでの計算時に対してほぼ100倍に近い計算速度になるというベンチマーク結果が出ています」(中西氏)。
ユーザーの流体解析が大規模化していく中で、新たな問題も出ているという。「さまざまな現象が検証できることで、いろいろな影響がすべて結果に入ってしまいますから、かえって『いったい何が原因なのか』、お客さまが特定しづらくなってしまっています。モデルが簡略化されていると、問題は比較的分かりやすかったのですが」(中西氏)。
そのような状況下、ベンダとしてのサポート能力や技術力も、より一層問われてきているとのことだ。
「ユーザーサポートなどサービス面も力を入れています。定期的に開催している説明会も、お客さまから高い評価をいただいております」(黒石氏)。
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自分たちの望む仕様の解析環境を自由に作れる
ソフトウェアクレイドルでは、「Visual Basic(以下、VB)」または「Visual Basic for Applications(以下、VBA)」によるコントロール可能なインターフェイスを用意し、他社アプリケーションも含めた自動化なども積極的に進めているという。同社は汎用ソフトの開発を目指してはいる。しかしそこを追求し過ぎると、かえって使いにくいソフトになってしまうと考えているという。そこを救うのが、VBまたはVBAなのである。
最も単純な例として、1つの箱の中に1個だけ部品(熱源)があるような解析がしたい場合があったとする。その部品の外寸に応じて、箱の外寸も決まるとしておこう。そういった場合なら、Excelに記入された部品寸法や発熱量の欄に数値を入力すれば、そのそばにある解析数値や結果図が自動で書き変わる。VBやVBAではそんな仕組みが作れる。
例えば、解析専任者が過去の検証データを整備し、VBを扱える技術者がそれを基にプログラミングする。ひと手間掛かるが、いったん仕組みを構築してしまえば、解析に詳しくない設計者でも、普段使いなれたExcelなどから“自分が知りたいことだけ”が、解析可能となる(Excelに限らず、VBAが動くマイクロソフトのOfficeツールなら、この仕組みが利用可能)。日々、多忙を極める設計者にとっては、非常にうれしい仕組みだ。
上記の仕組みの背後では、STREAMやSCRYU/Tetraは、あくまでひっそりと自動的に稼働し、ユーザーはその存在を意識することはない。操作上は非常に簡易であっても、背後で動かしている解析は高度で、大規模なデータも扱えるし、高度な並列計算もする。つまり設計者は、知らず知らずのうちに、パワフルな流体解析の世界に巻き込まれていくというわけだ。
ユーザーは、VBによって、自分たちの望む仕様の解析環境を自由に作れる。現時点、そのすべての機能に満足しているというわけではないが、今後は、この機能をより発展させていくとのことだ。数々のユーザー要望をかなえ切ったとき、解析ソフトは完全な黒子になるだろうと中西氏は言う。
とにかく「まずは、多くの人に使ってもらうこと」――それが流体解析普及への大きな後押しとなると同社は考えているとのこと。
上記の仕組みで得た解析結果(ポスト)をさらに、無料の簡易ビューア「Cradle Viewer」で共有すれば、さらに流体解析活用の幅は広がっていくだろう。
基本は変えず、密度の濃いサポートを追求
「約1年半ごとでバージョンアップしているのですが、そのタイミングで要望がいったいどれくらい解決しているのかというと、1ソフトで300程度です。しかし、お客さまから寄せられている要望はその何倍もあります」(中西氏)。
ソフトウェアクレイドルに寄せられる機能改善要望は、細かいものから大きなものまで、おびただしい数である。同社の技術者と営業は社内のWebサイトに顧客からの要望をすべて登録し、そのデータを社内共有し、取り組む優先順位を決めているとのことだ。
「ユーザー要望というと顧客からの情報と考えられますが、社内にもサポートや解析で自社のソフトを頻繁に使用している人たちがいます。当然、これらの人からの要望も重要な機能改善の候補になっています」(中西氏)。ユーザーから「これは絶対に入れてほしい!」とリクエストをもらい、カスタムの機能を用意することもあるという。
「これからも製品の基本は大きく変わらないと思います。精度と使いやすさを追求し、こなれた技術にしてから顧客に提供していきます。対象の業種・分野を無理に広げていくということは考えていません。ユーザーの心からの要望を見抜き、本当に必要とされている機能を盛り込んだ製品の提供をしていきます」(中西氏)。
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2011年7月には、STREAMおよびSCRYU/Tetraのバージョン9が出る予定だ。今後も、手厚いサポートや、ユーザー自らが積極的に解析ソフトを作り込める製品など、ユーザーにとって密度の濃い解析サービス提供をより一層追求していきたいとのことだ。
流体解析を設計現場で積極的に活用してもらうことで、モノづくりがより発展していくこと。それがソフトウェアクレイドルにとっての大きな喜びである。
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2011年8月12日
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