深遠なる流体解析の世界に挑むハイエンドツール!
“真の”使いこなしへの道:ますますパワーアップした流体解析ソフトウェア ANSYS CFD
ANSYSの最新バージョン「ANSYS 13.0」の目玉は、HPC対応。流体解析ツール「ANSYS CFD」は、より高度な物理モデルが扱えるようになった。流体解析において、並列計算へのニーズはますます高まっていくこと必至。そんなニーズを見据え、新しいANSYSでは、並列計算用ライセンスをいくつかまとめてディスカントするパッケージが登場した。2次電池開発モジュールも新たに仲間入りする。
「ANSYS CFD」は、航空宇宙や重工業、電子機器、半導体など多岐にわたる産業の流体解析の現場で広く普及する、もはやデファクト・スタンダードといえる解析ソフトウェアだ。同製品は、豊富な機能を有する汎用熱流体解析「ANSYS FLUENT」と回転機械分野などで圧倒的支持のある「ANSYS CFX」の2種を1ライセンスで使い分けられ、幅広い解析ニーズに対応できる。
ANSYS FLUENTは、乱流や伝熱、燃焼、空力音響、回転機械、混相流といったさまざまな流体現象についてモデル化が可能だ。大規模かつ複雑な物理モデルも、同社独自の高度なメッシング技術と組み合わせることで、確実な計算ができる。
ANSYS CFXは、特に回転機械と混相流の解析に大きな力を発揮するツールで、それ独自のソルバを備えている。従来より計算に使用する小領域を多面体セル同様とすることで計算効率をよくし、連成型AMGソルバーによりモデルが大規模になっても計算の収束性が落ちることがないため、CPUのコア数を増やしていくほどに、リニアに計算時間が短くなるという。
ハイエンド流体解析ツール ANSYS CFDは、さらなる高みを目指し、進化を続けている。
さらに進化したANSYS CFD
同社は2010年11月、米国で新製品「ANSYS 13.0」をリリースした。ANSYSは「現実の流体現象の完全なる再現」を目指し、バージョンアップごとにおびただしい数の改善と機能追加がなされてきた。そのバージョン13.0ともなれば、だいぶ機能は成熟してきている。同社が長年追究してきた、「使いやすいユーザーインターフェース」については、もはや限りなく完成度が高いといえる。
そうはいうものの、今回追加された新機能についても、「挙げきれない……」とアンシス・ジャパン 技術部 第2グループ エンジニアリングマネージャー 坪井 一正氏はいう。
ANSYS CFDでは、世の中の物理現象のモデルについて、その大半は従来バージョンで網羅してきたが、バージョン13.0では新たに、乱流や混相流(「相」は、液体や気体など、物体の状態)などの物理モデルに最新のモデルが追加された。流体解析に明るくない人から見たら、少々マニアックな物理モデルばかりだが、ANSYS CFDが、流体現象の完全再現へと、確実に向かっている証拠ともいえる。
「例えば、容器の縁いっぱいに満たされた液体の界面が表面張力で丸まって、微妙に動いているような状態をどれだけシャープに捉えるか。これは、化学系の反応槽などの解析でも使える機能」と坪井氏はいう。
FLUENTは『燃焼系が強い』と、CFD界で認知されてきたが、バージョン13.0では燃焼系の解析をより強化するための物理モデルや機能も追加されている。「例えば、液体ロケット(H2Aなど)の燃焼系の解析など、燃料と酸化剤として液体水素と液体酸素が使われているような乱流燃焼――『超臨界燃焼流れ』というのですが――現象の計算に対しても、新機能で対応できます」(坪井氏)。
さらにバージョン13.0では、より複雑化した物理モデルの計算を確実に収束するために、メッシング機能やソルバもさらに最適化させた。新しく追加された「メッシュ改善機能」は、プリ処理に戻ることなく、ソルバー内で品質の悪いメッシュを改善し、計算の安定性と結果精度を改善することが可能だ。
そんなANSYS CFDの完成度をもってしても、混相流や乱流が複雑に絡むような実現象については、まだまだ忠実に再現し切れず、正確な計算ができないという。流体の世界は非常に深遠であり、学術的な部分も含め、まだまだ未開な部分がたくさんある。そして、そこが開拓される分だけ、計算ノード数はどんどん増えていく。つまり流体解析における計算は、今後ますます大規模化を遂げることが目に見えているというわけだ。
2次電池開発モジュール、登場!
リチウムイオン電池など2次電池は、いまや、携帯電話、ノートPC、電気自動車などいたるところに実装され、その需要は年々高まってきている。ANSYS CFDは、そんな2次電池の開発現場でも大活躍している。
2次電池開発では、熱の流れのほかに、電気化学的な反応を見なければならない。また「冷却をどうするか」「温度変化によって性能はどのように変動するか」なども併せて見ていく。そのうえ、実験データと解析の合わせ込みが必須となる。
そのような多視点な解析をより効率よく行える2次電池モジュールが、2011年1月にアンシスからカスタマイズしたものが無償で提供になる。
この2次電池モジュールとANSYS CFD、そこへさらにパワーエレクトロニクス向け回路解析ツール「Simplorer」を組み合わせれば、電池を含む総合的なシステムも解析することが可能だという。
並列計算のライセンスコストが懸念だった人に朗報!
ANSYS 13.0のハイライトの1つに、HPC対応が挙げられる(CFDだけではなく、Mechanicalなどを含めたANSYS全製品)。CFDでは、2000〜4000ノードほどの極めて大規模な解析にも対応した。「PCクラスタ環境で、効率よく解析をまわせること」に重点を置きつつ、ソルバ機能を最適化したとのことだ。
解析業務における並列化のメリットは、大きく分けて以下の2つだと坪井氏はいう。
- 高速で高精度な計算を行えること
- 複数の計算ジョブを並行して流せること
PCクラスタ導入の利点は、ますます大規模化していく計算の効率化だけではない。上記の2つ目は、フロントローディング開発における大きな鍵となる。設計初期段階で、複数の設計パラメータを並列計算させることで問題をどんどん絞り込んでいけば、後工程で起こる問題も大幅に減らしていける。流体解析は、構造解析に比べると、この取り組みがやや遅れていると坪井氏はいう。このことは、流体解析の効率化における“伸びシロ”が大きいことも示している。
並列計算で使いたいCPUのコア数が2、4……と増えれば、その分、解析ソフトウェアのライセンス料金はリニアに積み上げられる。それは、これまでの業界の常識だった。しかしこの先、一般層に普及するPCのCPUですら、8、16、32、64……という具合に倍々でコア数は増えていき、性能が膨れ上がっていくだろう。そんな状況下、PCクラスタのパフォーマンスをフルに生かすために投資しようとするなら、ライセンス料はいったいどうなってしまうのか……。しかしそんな心配は、杞憂(きゆう)のようだ。
並列化におけるライセンスコストで頭打ちと考えていたユーザーに、朗報だ。アンシスでは、ますます加速する解析の大規模化ニーズに応えるべく、並列計算環境向けパッケージを2011年1月から国内リリースする。コア数が増えるごとの課金ではなく、並列計算用ライセンスをある程度まとめてボリュームディスカウトするような価格設定をするとのことだ。
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真の使いこなしへの道とは
流体解析ツールとしての完成度が非常に高いといえるANSYS CFDだが、やはり、所詮はツール(道具)にすぎない。それらに命を吹き込み、問題を解決するのは、あくまで人間、つまりユーザーたちだ。
使い手の強い意思もそうだが、それ以前に、道具を使うための最低限の知識も重要だ。しかし、仮に大学の工学部を卒業してきた技術者であっても、すべてに関して豊富な知識を取得し、実務に生かせるほど消化するのは、極めて難しいことだろう。
「一昔前のユーザーは、いまから考えれば、極めて低スペックなソフトを使い、一生懸命考えながら解析していました。現在のソフトなら何時間かで終わる計算について、かつては1カ月ぐらいかけていたのですね……。しかも、長い日数をかけても、結果が出ないことすらありました。そのように四苦八苦しながら失敗を重ねつつ、ある程度時間をかけてCAEを習得してきたのです。一方、いまのソフトは、よく分からないままに操作して、短時間で、それなりに結果が出てしまいます。そういったことに、わたしどもはすごく危機を感じています。やはり、ユーザーたちもわたしたちと同様に危機を感じていて、社内教育などに非常に力を入れ出しています」(坪井氏)。ユーザーサイドが社内教育を本気で立ち上げようと考えれば、人員やコストはそれなりに掛かる故、相当な覚悟が必要だろう……。
そういったトレンドは、ソフトウェアを提供してきたベンダの責任でもあると坪井氏はいう。「誰にでも使いやすいCAE」を追求するあまり、かえって、ユーザーから「思考する」という機会を大きく奪ってしまったのではないだろうか、と。「CAEの正しい使い方を勧めていく活動を積極的にすることが、われわれソフトウェアベンダの責任です。またそのような活動も、CAEの市場を広げていく一手段でもありますから、CAEの正しい使い方を勧める活動は必要であると考えているのです」(坪井氏)。
企業内で解析の教育ができる人材が限られているという場合であっても、アンシス・ジャパンならユーザーへの座学教育の支援も行ってくれる。大手ベンダならではの経験豊富な人材を生かした、手厚く頼もしいサポートだ。
ユーザーの覚悟と心意気さえあれば、ソフトウェアベンダとハードウェアベンダの強力タッグのバックアップが得られる。ソフトウェアベンダとハードウェアベンダとの協業体制はいまや強く保証されている。
ユーザー、ソフトウェアベンダ、ハードウェアベンダの二人三脚ならぬ、三人四脚の奮闘の暁には、貴社の輝かしい未来が待ちかまえているだろう。
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2011年8月12日
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