脱炭素社会への潮流や人口減少に伴う人手不足、その中で求められる職場環境の快適性など、製造業を取り巻く課題は年々複雑化している。こうした中で注目を集めているのが、京都にある三菱電機システムサービスの体験型ショールーム「SASK(Sustainable Advanced Solution site in Kyoto、読み:サスケ)」だ。脱炭素、自動化、環境改善といった製造業が抱えるテーマに沿って同社のソリューションを一堂に集め、来場者がそれらを体感することで課題解決のヒントを得られる場となっている。今回は、SASKの展示内容やその特徴を紹介するとともに、同施設に込められた思いを伝える。
脱炭素社会への移行や人口減少に伴う自動化の推進、社員の安全性向上など、製造企業が直面する課題は多岐にわたる。これらの課題に対して「問題意識はあるものの、何から手をつければよいか分からない」といった現場の声は多い。
こうした状況を踏まえ、製造現場に具体的なヒントを提供する場として京都に開設されたのが、三菱電機システムサービスの体験型ショールーム「SASK(Sustainable Advanced Solution site in Kyoto、読み:サスケ)」だ。
SASKは、2023年に旧三菱電機京都製作所(現冷熱システム製作所/京都地区)の敷地の一部を活用して開設された。京都駅からJR京都線で約10分の長岡京駅が最寄りであり、駅からは徒歩約12分。近隣には、菅原道真をまつり、花の名所としても知られる長岡天満宮もある好立地に位置している。
三菱電機システムサービスは、1962年に三菱電機の家電製品やモーターなどのアフターサービスを担う技術サービス会社として設立された。現在は従来のアフターサービスに加えて、電気機器や各種システムの保守/保全、据付、修理、リニューアル、ソリューション提案までを一貫して手掛ける総合エンジニアリング企業へと発展した。
SASKでも、脱炭素や自動化/省人化といった企業の課題に対応するシステムをはじめ、セキュリティ、映像通信、空間改善など、暮らしに役立つ同社のソリューションを実機展示している。
SASKの内部は、製造現場の課題に応じた4つのゾーンで構成されている。ここでは、各展示エリアの概要を紹介する。
入口の右側に位置するのは、時宜に応じた製造業の注目テーマを紹介する「テーマゾーン」だ。現在はカーボンニュートラルをテーマに掲げ、中小規模の自家消費型太陽光発電EPC(Engineering:設計、Procurement:調達、Construction:建設)ソリューションや、中小ビル/工場向けのZEB(net Zero Energy Building)ソリューション、蓄電システムを含むエネルギーソリューションを紹介している。
展示の中心には、エネルギーマネジメントシステム「SMART-LiCO(スマート・リコ)」を据え、エネルギーの使用状況をリアルタイムで見える化し、効率的な制御・運用を支援する仕組みを紹介する。さらに、複数拠点のエネルギー使用を統合的に管理する「マルチリージョンEMS」では、地域ごとに分散した事業所の消費電力データを横断的に比較/集計し、拠点ごとの最適化や、CO2排出量の可視化/管理に活用できる仕組みを提案している。
三菱電機システムサービス 総合営業業務部 営業企画グループ マネジャーの佐藤敏之氏は、「展示内容を固定するのではなく、お客さまのニーズや時代の流れに応じて柔軟に変えていきたいという思いから、このテーマゾーンを設けました。現在は、カーボンニュートラルが多くのお客さまにとって非常に関心の高いテーマだと感じています。親会社の三菱電機は、自社ブランドの太陽光発電システムの製造/販売を終了しましたが、当社はその分野を引き続きしっかりサポートしていることも、ここでお伝えしています」と強調する。
入り口の左側に展開される「ビジュアルコミュニケーションソリューションエリア」では、映像/音声/ネットワーク技術を活用した多様なソリューションを紹介している。かつて三菱電機はテレビなどの映像機器を製造しており、京都は映像、情報通信技術の拠点だった。現在もその流れを継承し、映像配信システムやセキュリティカメラ、業務用ディスプレイを通じて、安心、安全で快適な社会の実現に貢献している。
このエリアでは、三菱電機システムサービスのデジタルサイネージソリューション「あきどこサイネージ」をはじめ、三菱電機のネットワークカメラ「MELOOK 4」、三菱電機デジタルイノベーションの録画配信サーバ「ネカ録」、三菱電機システムサービスの統合監視システム「ISQbic」などを実機で横断的に展示している。
さらに、2023年5月のG7広島サミットで採用されたビデオ会議プラットフォーム「Cisco Webex」をはじめ、「Cisco Desk Mini」や「Cisco Board Pro」といったビデオ会議用のコラボレーションデバイスも展示し、オフィス環境の利便性向上に寄与する具体的な活用シーンを提示している。
展示場の左奥に広がる「FAソリューションエリア」では、製造現場の自動化/省人化を支援する各種ソリューションを紹介している。AMR(自律型搬送ロボット)/AGV(無人搬送車)や、産業用・協働ロボット「MELFA(メルファ)」などの最新技術に加え、生産監視パッケージ「e-LIoT」、監視・制御システム「SA1-III」などを連携させた具体的な運用イメージを描くことができる。これらのFAソリューションは、実際にサントリーの京都ビール工場にも導入されており、その活用例を紹介するビデオ映像も用意されている。
さらに、展示場の奥には無線ネットワークを実証/検証する「Co-Creation Center(コ・クリエーションセンター、略称:CCC)」も併設。ローカル5G、Wi-Fi 6/6E、sXGPという3種の無線環境を備え、現場に近いネットワーク構成でAMRやAGVの実機テストが可能であり、導入前の課題抽出や導入後のリスク低減に貢献している。
三菱電機システムサービス SASK管理グループの門村浩氏は、「来場者の関心が最も高いのが自動搬送システム、特にAMRやAGVです。Co-Creation Centerでは、さまざまな種類やサイズのAMRおよびAGVの走行テストが可能で、最大1トンタイプまで対応しています。お客さまの電波環境に応じた事前テストができることから、多くの来場者が真剣な表情で見入っています」と語る。
展示場の右奥に位置する「生活・職場環境 空間ソリューションエリア」では、作業者の快適性や職場環境の質を高めるソリューションを紹介している。移動式スポットクーラーを活用した暑熱対策ソリューション「ムーヴオアシス工法」は、暑熱環境下でも局所的な涼感空間を提供し、熱中症対策や集中力の維持に寄与する。
休憩室や共用空間向けには、自然光に近い照明環境を再現する青空照明「misola」なども紹介されており、単なる機能性の向上だけでなく、働く人の心身への配慮を含めた、総合的な職場環境づくりのヒントを提示している。
SASKの来場者は、製造現場の担当者から経営層まで多岐にわたり、業種や立場によって目的や注目するポイントもさまざまだ。そのためSASKでは、単に製品を展示するだけでなく、説明員が来場者一人一人の関心や課題に応じた案内をする。
門村氏は、「一方通行の説明ではなく、お客さまの立場に立ってヒアリングを行いながら案内することを意識しています。そうすることで、お客さまご自身が潜在的な課題やニーズに気付き、『こういうものが欲しい』『この点で困っている』といった声が自然に出てくることが多いですね」と説明する。
見学時間は通常2時間に設定され、全エリアを網羅的に紹介するスタイルだが、来場者の関心に応じて内容は柔軟に調整される。展示は実機ベースで構成されており、その場で動作や活用イメージを確認できる点も大きな特長だ。
2024年度には1300人超が来場。FA機器の見学を目的とした来場者が生産ラインの進捗状況を可視化する映像表示装置に、空調対策を目的に訪れた来場者が展示されていたパウダールーム用ミラーサイネージに強い関心を示し、導入に至ったケースもあるという。このように、来場者が体験を通じて課題を認識し、解決に向けた“気付き”を得られることが、SASKの大きな価値となっている。
「『Sustainable Advanced Solution site in Kyoto』という名称の通り、循環型社会の実現に向けた企業活動の支援がSASKのコンセプトです。京都は、地球温暖化の防止に向けて、1997年に京都議定書が締結された場所でもあります。サステナブルという“入り口”ではありますが、SDGsに関して『何をしたらいいか分からない』というお客さまにも、実際に足を運んでいただくことで、多様な分野のソリューションを知っていただくきっかけになると感じます」と佐藤氏は述べる。
SASKの見学は少人数から団体まで柔軟に受け入れが可能で、事前の申し込み時に見学内容の要望を伝えれば、各分野に精通した専門スタッフが同席する体制を整えている。専門担当者が説明することで、現場ならではの技術的課題にもその場で提案が可能となり、見学が単なる視察で終わることなく、「次のステップ」へとつながる実りある機会となる点も、来場者の満足度を高めている。
SASKでは将来的に、実際の製造現場を想定した大規模な実演展示も構想している。佐藤氏は「単に製品を並べるのではなく、『来てよかった』『学びがあった』と感じていただける展示場であることが大切です。そのため、技術の進化や社会の要請に応じて、展示内容や見せ方を柔軟にリニューアルしていきたいですね。より充実した『SASK 2.0』を目指し、大幅な刷新も視野に入れています」と語る。
見学は完全予約制で、三菱電機システムサービスの公式Webサイトに設けられた専用フォームから申し込みが可能だ。カーボンニュートラルや自動化・省人化といった課題に関心を持ちながらも、具体的な一歩を踏み出せずにいる企業も多い。そんなときこそ、まずはSASKを訪れてみてほしい。現地での体感を通じて、自社の課題に気付くきっかけとなるはずだ。
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提供:三菱電機システムサービス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年7月10日