AI教師データ作成からデジタルツインまで 3D CGとゲームエンジンが開く革新の扉制約のない世界へ

製造業を中心に広がりを見せるAIによる画像解析/画像認識。そのキーとなる教師データの収集で注目したいのが、ゲームエンジンを活用した3D CGによる教師画像生成のアプローチだ。実世界さながらのデジタルツインの実現により、高品質な3Dモデル制作はもちろんのこと、ビジュアライゼーション/シミュレーション環境としての発展的な活用も見込める。

PR/MONOist
» 2025年02月21日 10時00分 公開
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 AI(人工知能)による画像解析/画像認識は外観検査や顔認証、自動運転、病理診断などさまざまな分野で活用が進みつつあり、今後さらなる拡大が期待されている。そうした中、よりいっそう重要性が増しているのが、質の高いバリエーション豊富な教師データをいかに多く集められるかだ。

 正常ケースの学習であれば、カメラなどによる実画像(実写)の蓄積から賄えるかもしれないが、異常ケースの場合はそもそも発生率が限りなく低いため、学習に必要な量を十分に確保するのが難しい。また、より高い精度を求めるには正常ケースであってもさまざまなバリエーションを用意する必要があり、その準備には膨大なコストと時間を要する。場合によっては、著作権や肖像権といったデータ使用に関する制限が加わってくる可能性もある。

 いかにして、高品質でバリエーション豊富な教師データを効率良く確保すべきか。その解の一つとして注目したいのが、ゲームエンジンを活用した3D CGによる教師画像生成のアプローチだ。

 以降、リアルタイム3D CG技術を強みに、ゲームエンジンなどを活用して構築した実写さながらのデジタルツインによるビジュアライゼーション/シミュレーション環境や、CG合成ツールなどを手掛けるシリコンスタジオのソリューションを紹介する。

生成AIから3D CG、実写活用まで幅広い提案が可能なシリコンスタジオ

 なぜ、ゲームエンジンを活用した3D CG制作のアプローチが有効なのか。現在、AIによる教師あり学習のための画像解析/画像認識用教師データは主に実写が使われており、それを補完する形で3D CGを用いるケースが多いが、近年では手軽に大量の画像を作り出せる生成AIもその選択肢の一つとして考えられている。

 こうしたトレンドの変化について、シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 部長の向井亨光氏は「従来行われてきた少量の教師データを加工しての水増しは、認識精度の品質低下につながる可能性があり、データの多様性にも限界がある。一方で、生成AIは単純な静止画であれば低コストで大量に作成できる。しかし、細かな条件などを指定する用途には不向きだ」と指摘する。例えば、時間帯による日光の当たり具合や天候を再現しようとしても、現状は“それっぽい雰囲気”の画像しか作れない。そのため、教師データとして高い再現性が求められるようなケースでは扱いづらい。このような場合では、やはり細かなパラメーター調整や条件設定が可能な3D CGの活用に軍配が上がる。

シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 部長の向井亨光氏 シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 部長の向井亨光氏

 「シリコンスタジオではお客さまのさまざまな要求に応えられるよう、AIによる画像認識に熟知した人材についても拡充を図り、生成AIから3D CG、実写活用まで幅広い提案が行える体制を構築している」(向井氏)

高品質な教師データ用3D CG画像を素早く自在に作り出す「BENZaiTEN」

 シリコンスタジオでは、リアルタイム3D技術と「Unreal Engine」や「Unity」などのゲームエンジンを用いて、現実世界さながらのデジタルツインによるリアルなビジュアライゼーション/シミュレーション環境などを構築し、さまざまな業界向けにソリューションを展開している。機械学習における学習/検証を目的としたシミュレーション環境としても、自動運転技術の開発などに取り組む自動車業界をはじめ、幅広い産業で注目を集めている。

3D CG技術とゲームエンジンの強みを生かしたソリューションを展開するシリコンスタジオ 図1 3D CG技術とゲームエンジンの強みを生かしたソリューションを展開するシリコンスタジオ[クリックで拡大] 提供:シリコンスタジオ

 ゲームエンジンを活用したデジタルツインによるビジュアライゼーション/シミュレーション環境であれば、太陽や照明などの光源、街路樹やビルといったオブジェクト、歩行者や自動車などの動体にパラメーターを設定し、位置や条件を細かく制御することで、生成AIでは難しい理想的なシチュエーションの3D CGを容易に作り出すことができる。

 向井氏は「ゲームエンジンを活用した3D CG制作の強みは、一度環境を構築すれば、パラメーターを変更するだけでさまざまなシーンを瞬時に作り出せる点にある」と語る。雨や雪といった気象条件の変更はもちろんのこと、道路の陥没や木の転倒、対向車の逆走など実写では再現できないようなレアケースを、素早く自在に作り出せる。さらに、道路標識や白線の劣化などもリアルに再現できる。ゲームエンジンを活用すれば、教師データの準備にかかる時間やコストを大幅に削減可能だ。

 大量の画像を教師データとして活用するには、対象物の名称などをタグ付けするアノテーション作業が不可欠だ。通常は人手で作業するか、専用のアノテーションサービスを利用する必要がある。しかし、ゲームエンジン内のパラメーターとしてタグを設定すれば、出力された教師データ画像自体にタグ情報が内包される。この仕組みにより、「条件の設定」→「画像生成」→「タグ付け」といった煩雑な工程をワンストップで実現し、アノテーション作業を省略できる。

 シリコンスタジオでは、外観検査、不良品検知、設備監視/認証、人物/顔認識など向けに、実写のように高品質な教師データ用3D CG画像をアノテーション付きで大量に生成できるソリューションを「BENZaiTEN(ベンザイテン)」のブランドで提供している。作成される3D CGは物理演算に基づき光の反射や拡散がリアルに表現され、画像や動画など要望に合わせた出力にも対応。柔軟な個別カスタマイズにも応じる。「BENZaiTENを用いることで時間やコストなどの制約から解放され、効率的に多彩なバリエーションの教師データ用3D CGを作成できるようになる」(向井氏)

機械学習向け教師画像ソリューション「BENZaiTEN」を展開するシリコンスタジオ 図2 機械学習向け教師画像ソリューション「BENZaiTEN」を展開するシリコンスタジオ[クリックで拡大] 提供:シリコンスタジオ

3D CGに対する不安を払拭する シリコンスタジオの実績と成果

 もしかすると「3D CGが教師データとして本当に役立つのか?」と思われている方もいるかもしれない。こうした不安の声に対し、向井氏は「これまでシリコンスタジオが手掛けてきた多くの導入実績とその成果からも分かる通り、十分なエビデンスを積み重ねてきた。実際に、当社が提供した3D CGのYOLOによる評価で、実画像と同等かそれ以上と判断されたPoC(概念実証)の結果もある。既に実績のある分野にとどまらず、幅広い領域で安心して活用できる」と自信を見せる。以下に実績の一例を紹介する。

 マツダに提供した自動運転技術開発用の合成データ生成/編集ツールでは、道路や線路などのインフラ構造物、街路樹や遠景といった背景、車両や道路標識などを組み合わせ、自動運転向けの景観データの生成を支援した。都市部や郊外、さまざまな天候や時間帯に対応し、さらに道路標識の歪みや退色といった経年劣化の要素も再現。走行環境の妥当性検証を助け、技術開発の加速につなげることができた。

 自動車の外部環境だけではなく、車内のドライバーの状態(脇見や居眠りなど)を監視するドライバーモニタリングシステムの開発にも3D CGが活用されている。三菱電機に提供した技術では、年齢や肌の色、骨格、表情を自由に変化させ、さまざまなドライバーの姿を再現。実際にカメラが設置される位置やレンズの画角に応じたカスタマイズにも対応し、ドライバーモニタリングシステムの認識精度向上に貢献した。

 産業機械の分野では、クボタ向けに製品検査用のCG画像合成ツールを開発。3Dの不良種画像と2Dの背景画像を合成して学習用CG画像を生成するもので、不良種の配置や角度、照明条件などのパラメーターを自在に調整することで、実用レベルの教師データを生成し、学習期間の短縮に大きく寄与した。

 ここで挙げた内容はほんの一例だが、これら実績のある分野の他にも、構造物の劣化検知や農作物の育成管理、宇宙・防衛分野でのAI学習支援など、これまでにない新たな領域での活用も急速に広がっているという。

デジタルツイン活用の入り口にもなり得る「駐車場パッケージ」

 シリコンスタジオは、リアルタイム3D CG技術とゲームエンジンを活用したデジタルツインによるビジュアライゼーション/シミュレーション環境を構築するだけでなく、それらに使用できるアセットライブラリーも用意している。Unreal Engineの質感が設定された高品質な3Dモデルに、パラメーターによる経年劣化や信号機制御などの機能を付加したもので、これらを用いてリアルな街並みや走行環境を作り込むことで実写さながらの環境を構築できる。

 現在、日本の建物や道路標識などに対応した「3D景観・市街地アセットライブラリー」を展開する他、2025年1月から新たに郊外型商業施設の駐車場をイメージした「アセットライブラリー 駐車場パッケージ」(以下、駐車場パッケージ)の提供を開始した。商業施設の駐車場という限定されたシチュエーションではあるが、建物や街灯、案内サインといったオブジェクトがあらかじめセットされている。さらに、走行する自動車や歩行者、信号機、道路標識などの市街地アセットライブラリーの全オブジェクトも含まれており、手軽にビジュアライゼーション/シミュレーション環境を構築できる。

動画1 「アセットライブラリー 駐車場パッケージ」の利用イメージ 提供:シリコンスタジオ

 「例えば、自動車の自動運転経路を指定し、その途中で歩行者が接近して避ける様子を再現したり、駐車場内に設置された監視カメラの定点映像や車載カメラが撮影した画像を書き出したりもできる」(向井氏)。「Unreal Engine 5」のプロジェクトとして提供されるため、知識さえあればユーザー自身によるカスタマイズも可能だ。もちろん、シリコンスタジオに依頼すれば要望通りの環境を作り込むこともできる。

 駐車場パッケージは自動車や物流業界の他にも、都市開発や商業施設の空間設計などへの広がりも大いに期待できる。出入り口付近の混雑回避や歩行者の流れをスムーズにするための駐車エリアパターン検討、監視カメラの配置レイアウトシミュレーションの他、最適な駐車スペースへ効率的に誘導するためのシステム開発など、一歩踏み込んだソリューションとしても活用できそうだ。

 また、警備・防犯業界では、AIによる不審者・異常行動の検知の教師データ生成への活用も考えられる。人手不足が深刻化する中で、AIが24時間体制で監視業務を補助し、混雑状況を分析したり、事故を検知したりすることにより、安全性向上だけでなく業務効率化や顧客満足度の向上にも寄与することが期待される。

 「駐車場パッケージを通じて、ご自身の業界でどのようなことができそうかを想像してほしい。教師データ用3D CG画像を取得したり、構築したAIモデルを検証したりといった利用はもちろんだが、これを“デジタルツイン活用の入り口”として捉え、ビジネスの可能性を広げるきっかけとして気軽に使ってもらいたい。また、当社では車載システムやROS連携、学習結果のシミュレーションにも対応できる。自社で取り組み始めたがうまくいかない点についてアドバイスがほしいといったコンサルティングから本格的なデータ生成ツール開発まで、気軽に相談してほしい」(向井氏)

シリコンスタジオの向井氏 シリコンスタジオの向井氏

提供:シリコンスタジオ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年3月16日

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