快進撃が続くAMD、最新CPU投入でサーバ市場での勢いを加速ITインフラ革新

AMDのサーバ向けCPU「第4世代AMD EPYC(TM) プロセッサー(Genoa)」をテーマにしたオンラインセミナーに製造業DX系人気YouTuberのものづくり太郎氏や、日本AMDとデル・テクノロジーズの製品担当者が登壇。AMDの快進撃やGenoaの特徴についての講演に加えて、Q&Aセッションの様子をレポートする。

» 2023年01月18日 10時00分 公開
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 2017年から展開するCPUアーキテクチャ「Zen」により、クライアントPC市場でシェアを大きく高めていることで注目を集めるAMD。実はサーバ市場でもZenをベースとする「AMD EPYC(エピック)」が優位な戦いを繰り広げている。2022年11月10日(米国時間)には、このAMD EPYCの最新製品である「第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)」がリリースされた。

 2022年12月16日開催のオンラインセミナー「知っている人は知っている。サーバーのコストパフォーマンスを飛躍的に改善する方法〜最新の第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)の活用メリットとは?〜」では、製造業DX系人気YouTuberのものづくり太郎氏や、日本AMDとデル・テクノロジーズの製品担当者が登壇。GenoaはこれまでのAMD EPYCと比べてどのような特徴があるのか、Genoaの投入によってAMDのサーバ市場における進撃がさらに続くのかについて講演した。本稿では、これらの講演に加えて、日本AMDとデル・テクノロジーズによるQ&Aセッションの様子をレポートする。

TSMCとのタッグで業界をリードするAMD

ものづくり太郎氏 ものづくり太郎氏

 基調講演に登壇したものづくり太郎氏は「AMDの快進撃はまだ続くのか?」をテーマに、AMDの技術力や企業体質比較など、多角的な考察を行った。

 全体の論調としてものづくり太郎氏は、2022年になって過去最高のシェアを獲得するなど好調なAMDの快進撃がしばらく続くという見解を示した。その快進撃を支える源泉として、AMDが最先端プロセッサを製造委託しているTSMCの技術力とAMDの「チップレット」を使ったパッケージングの技術を挙げた。

 加えてAMDのコスト低減戦略として、標準化についても言及した。AMDは同社CEOのリサ・スー氏主導の下で、膨大なコストをかけてZenの設計を一から見直す一方で、クライアントPC向けとサーバ向けのCPUアーキテクチャを統一した。ものづくり太郎氏は「AMDはCPUアーキテクチャが共通なので、設計リソースを集中できる。このバリューチェーンを連想して経営設計をしているとすれば、リサ・スー氏の力量はものすごいものがある」と語る。

 同氏はGenoaについて、13個のチップレット数、96個というコア数、5nmプロセスによる周波数の増加などの新たな特徴を挙げ、「すさまじいスペック」であると絶賛。「現状ではAMDがかなり先行していると感じる」とした。

「第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)」の特徴 「第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)」の特徴[クリックで拡大] 提供:日本AMD

 また、これらの性能向上の背景として、AMDがチップレットの3次元化に取り組んでいたことにも言及。チップレットを3次元化するためには「TSV(Through-Silicon Via、シリコン貫通電極)」という、チップに微細な穴を開けて上下のチップを電極で接続するパッケージング技術が必要となるが、シリコンに銅配線を引くに当たっては、リーク電流がシリコンに悪影響を与えないよう狭いビアの中に絶縁膜を形成する必要がある。これには非常に難易度の高い技術が要求されるが、AMDとTSMCは2021年にこれを実現し販売を開始していた。

 一般的に自社製品を生産する半導体メーカーの工場は世界中で同じ工程管理がなされており、新技術導入のための製造工程改定に対するハードルが高い。顧客からの受託生産を行うファウンドリーであるTSMCと比べると、素早い改善を行える体制ではない点が差になっていると指摘した。

 講演の最後でものづくり太郎氏は「TSMCとタッグを組んだAMDの勢いはまだまだ止められない。しかし、TSMCも最近では受託生産の価格を引き上げたりしているため、今後はコストバランスという視点も重要になってくる」と述べている。

高性能かつ高効率の最新CPUアーキテクチャ「Zen4」

日本AMDの中村正澄氏 日本AMD コマーシャル営業本部 ソリューション・アーキテクトの中村正澄氏

 日本AMD コマーシャル営業本部 ソリューション・アーキテクトの中村正澄氏はGenoaの技術概要について説明した。

 GenoaのCPUのコアには「Zen4」という最新のCPUアーキテクチャが搭載されている。「第3世代AMD EPYC プロセッサー(Milan)」で採用されていた「Zen3」に、AI(人工知能)やHPC(高性能コンピューティング)のアクセラレーションに最適な命令セット「AVX-512」を追加しており、キャッシュの階層や分岐予測の改善などを図った。その結果、IPC(1クロック当たりに実行できる命令数)はZen3と比較して14%向上した。

 Genoaと従来製品のMilanとの比較では、整数性能、浮動小数点性能、NLP(自然言語処理)スループット全てにおいて、消費電力当たりの性能向上がみられた。最上位モデルの「AMD EPYC 9654」の96というコア数はMilanを含むさまざまな製品と比較しても群を抜いている。

「第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)」と「第3世代AMD EPYC プロセッサー(Milan)」の消費電力性能の比較 「第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)」と「第3世代AMD EPYC プロセッサー(Milan)」の消費電力性能の比較[クリックで拡大] 提供:日本AMD

 仮想マシンを構築するという条件の場合、競合製品の中には15台のサーバが必要だったケースもあるが、96コアのAMD EPYC 9654は5台のサーバで済むという結果となった。中村氏は「これだけ台数が少なくなることで、カーボンニュートラルに向けたCO2の削減においても非常に大きなメリットになる」と語った。

「Genoa」の搭載で圧倒的な性能を発揮するサーバ「PowerEdge」

デル・テクノロジーズの岡野家和氏 デル・テクノロジーズ データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャーの岡野家和氏

 デル・テクノロジーズ データセンター ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャーの岡野家和氏は「Dell PowerEdge最新世代登場:テクノロジーの革新で変わるサーバーの性能・電力・コスト効率」と題し、Genoa搭載の次世代サーバ「PowerEdge」のメリットを紹介した。

 岡野氏は初めに、AMD EPYC搭載サーバを採用する市場が拡大していることに言及した。もともとはHPCやクラウド向けが中心だったが、社内IT環境の仮想化や次世代製品の設計開発基盤、ビッグデータ解析、半導体製造関連装置への組み込みなど、客層や用途が広がっているという。

 岡野氏は、今回発表したGenoa搭載のDell PowerEdgeについて「過去最高のアプリケーション性能を実現した」と強調する。最上位モデル「PowerEdge R7625」では、前世代機を72%上回るSAP SDベンチマークスコアを達成。2CPUでありながら、32CPUや40CPUのサーバに負けない性能を発揮した。また、クロック周波数3.85GHzのCPUを搭載する1ソケット2Uサーバ「PowerEdge R7615」は、AI処理性能のベンチマークにおいて他社の2ソケットサーバを圧倒するなど高い費用対効果が期待できる結果となった。

「Genoa」を搭載するサーバ「PowerEdge」のラインアップ 「Genoa」を搭載するサーバ「PowerEdge」のラインアップ[クリックで拡大] 提供:デル・テクノロジーズ

今後はHPCでもシングルプロセッサという選択肢が視野に

 アイティメディア @IT編集部の三木泉氏がモデレーターを務めたQ&Aセッションでは、中村氏と岡野氏がGenoaやPowerEdgeに関する質問に答えた。

左から、日本AMDの中村氏、デル・テクノロジーズの岡野氏、モデレーターの三木氏 左から、日本AMDの中村氏、デル・テクノロジーズの岡野氏、モデレーターの三木氏

 まず三木氏が「結局のところGenoa搭載サーバは何がすごいのか」という質問を投げかけた。中村氏は、これまで7nmだったプロセステクノロジーを5nmにしたことにより、プロセッサのコア数をこれまでの1.5倍となる96コアまで高めつつ、周波数を上げたことに言及。これら難易度の高い2つの性能向上を実現したことが大きなポイントであると説明した。岡野氏は1ソケットサーバであっても2ソケットサーバをしのぐような性能が出せるなど、高い電力当たり性能とコスト当たり性能がメリットだと述べた。

 次の質問は「Genoaは性能向上に合わせて消費電力も上昇しているが、これについてどう考えるか」。中村氏は、GenoaのTDP(熱設計電力)が360Wと高いことを認めつつ「Milanの280Wと比較して消費電力は約30%程度増加したものの、性能は2倍になっており、消費電力当たりの性能は非常に良くなっている」と強調した。

 「仮想化基盤としてのGenoaの魅力、優位性」という質問に対しては、中村氏はメモリとコア数が増加したことで、1つのシステムに多くの仮想マシンを集約できるメリットを挙げた。また「データ分析や機械学習におけるGenoa搭載サーバの魅力」という質問については、岡野氏が自身の講演で紹介した、PowerEdge R7615がAI処理性能のベンチマークにおいて他社の2ソケットサーバを圧倒した結果を振り返り、Zen4がAVX-512を搭載した強みが結果として現れていると述べた。

 続けて三木氏は「競合他社のx86系CPUを搭載するサーバをAMDサーバで置き換える場合の互換性に問題が生じるケース」について質問。中村氏は「互換性の問題は存在しない」と断言した。その理由として、今使われているx86プロセッサの64ビットの命令セットはもともとAMDが開発したものであり、そのためバイナリーレベルでの互換性があると説明した。岡野氏も「AMDだからこのアプリケーションは動かなかったという話をお客さまから聞いたことがない。そこは本当に見方を変えていただく必要がある」と中村氏の説明を後押しした。

 視聴者から寄せられた「HPC計算の高速化で重要となる、チップ間の転送速度が向上しているCPUナンバーを教えてほしい」という質問については、中村氏がZen4のプロセッサ間の転送速度について、従来の18Gbpsから32Gbpsに高速化したことを紹介した。これはZen4を搭載するGenoaの全ての製品で同じスペックだという。さらに同氏は「これだけコア数が増えれば、シングルプロセッサでHPCという選択肢もあり得る。シングルプロセッサではデュアルと比較してメモリ容量が減るが、それで問題なければ、プロセッサ間通信を気にしなくても良いというメリットがあるので、今後はHPCでもシングルプロセッサという選択が増えてくるかもしれない」との予測を述べた。

 セミナーの最後に中村氏は「ものづくり太郎氏から“AMDの快進撃が続く”との言葉をいただいたが、実際に快進撃が続くように頑張っていきたい」とコメント。岡野氏は「これだけのシステムレベルでの電力当たり/コスト当たり性能の劇的な向上はお客さまにとっては確実にチャンスとなる。このテクノロジーメリットを既存のITインフラ環境で早期に享受していただきたく、ぜひ当社にご相談いただきたい」と呼びかけた。

 なお、本セミナーの講演は以下のWebサイトからオンデマンド視聴できるので、興味があればぜひ確認してほしい。

⇒オンライン技術セミナー「知っている人は知っている。サーバーのコストパフォーマンスを飛躍的に改善する方法〜最新の第4世代AMD EPYC プロセッサー(Genoa)の活用メリットとは?〜」オンデマンド配信Webサイト


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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月20日