AIが導くPLMの進化、エンジニアリングAI基盤が加速させるモノづくりの新たな姿Arasが目指すAdaptive Intelligence

AIがモノづくりのさまざまな工程を変えようとする中、そのデータ基盤として大きな役割を果たすと見られているのがPLMシステムだ。AI×PLMでモノづくりはどのように進化するのだろうか。PLMベンダーであるArasの日本法人アラスジャパン 社長の久次昌彦氏に話を聞いた。

PR/MONOist
» 2026年02月27日 10時00分 公開
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 PLM(Product Lifecycle Management、製品ライフサイクル管理)ソフトウェアの世界的ベンダーとして知られるArasは、2012年に主力製品「Aras Innovator」を日本でリリースして以来、国内市場で着実に存在感を高めてきた。主要PLMベンダーの中でも高い成長率を維持しており、市場シェアでも上位に位置するようになってきている。

photo アラスジャパン社長の久次昌彦氏

 この成長を支えた要因について、Arasの日本法人であるアラスジャパン社長の久次昌彦氏は「SaaS(Software as a Service)への移行の加速」「OOTB(標準機能)型PLMの限界」「AI(人工知能)時代に向けたPLM再評価」の3点を挙げる。

 1つ目の「SaaSへの移行の加速」については、多くの企業でクラウド活用が進み、PLMについてもSaaS化を求める動きが強まっている点が大きい。加えて、ArasのSaaSがLinuxベースでコンテナ化された構成を採用している点も評価を受ける。これは、従来のWindowsサーバによるオンプレミス運用と比べ、より少ないリソースで安定稼働できるためだ。

 2つ目が、OOTB型PLMの限界が顕在化したことだ。短期間での立ち上げや初期コストを重視してOOTB型PLMを選択したものの、実際に運用を始めると「業務に合わず、使いにくい」という現場の声も多い。その中で、ローコード開発で業務に合わせた柔軟なカスタマイズを前提とするArasのアプローチが再評価され、再選定の結果として採用される事例が増えている。久次氏は「標準化ができる他の業務に比べ、PLMに関する領域はモノづくりの根幹であり、作るものや企業によって大きく異なります。一般的なITでは標準に合わせる方が良いですが、PLMの場合は逆に業務に合わせられるようにした方が結果的に効率的です。Arasは当初からその考えで機能ごとのモジュールで提供しており、その柔軟性が評価を受けています」と説明する。

 そして3つ目が「AI時代に向けたPLMの在り方」だ。久次氏は「2025年以降、製造業におけるAI活用の機運が一段と高まってきました。一方で、モノづくり工程での活用を検討する中で、AI活用に必要なエンジニアリングデータが社内で整理されていないことに気付いた企業も少なくありません。そのため、文脈や関係性を保持したエンジニアリングデータを蓄積できるPLMの重要性が再認識されました」と分析する。

データの管理から業務支援へ、AIで進化するPLM

 こうした状況を受け、Arasでは2026年、AIと組み合わせたPLMの進化に力を注ぐ。「特に日本では、総人口が2005年をピークに減少局面に入り、今後も縮小が続くことから、人手不足は深刻化する一方です。その中で企業成長を実現するため、これまで人が担ってきた作業を代替するAIエージェントを、エンジニアリングの領域にも展開することが重要だと考えます」と久次氏は述べる。

 ArasがAI戦略の基本方針として掲げるのが「DISCOVER(発見)」「ENRICH(強化)」「AMPLIFY(拡張)」という3つの活用の方向性だ。DISCOVERでは社内に存在するエンジニアリングデータの可視化を実現し、ENRICHではPLMを軸に他システムと連携し、判断や業務の精度を高める。そして、AMPLIFYでは、整備されたデータとエコシステムを活用し、AIエージェントへと発展させていく。

 そして、AIを組み合わせたPLMの新たなビジョンとして「Adaptive Intelligence(適応型人工知能)」を打ち出し、エンジニアリングAIプラットフォームとしてのPLMの価値を打ち出す方針だ。久次氏は「入力から分析や支援、出力までの各プロセスにAIを組み込むことで、PLMの役割は大きく変わります」と語る。

 1つの例が、顧客から受領する要求仕様書の扱いの効率化だ。PDFやWord形式で渡される要求仕様書は、従来、PLMで管理するために章立てや要求事項を構造化文書として人が作り直す必要があった。これに対し、AIエージェントを活用すれば、PDFを読み込ませるだけで、章立てを分析し、構造化文書としてPLMのデータとして取り込むことが可能になる。これにより、従来は手間と時間を要していた入力作業の負担を大きく下げられるという。

 蓄積された情報は、変更影響分析や要約、レビューといった作業をAIが支援し、モノづくりを下支えする。アウトプットも、チャット形式の対話を通じて可視化やレポート生成、ナレッジ探索が可能になる。PLMに蓄積されるデータそのものが大きく変わるわけではないが、従来は手作業になりがちだった登録や整備の負担をAIが肩代わりすることで、同じデータをより自然に、日常的に扱えるようにする考えだ。

photo 進化するPLMのイメージ[クリックで拡大] 提供:アラスジャパン

 製品ライフサイクル全体で見ても、その効果は明確だ。例えば、設計段階で、過去の不具合情報や設計履歴を基にDRチェックリストの自動生成や再発防止を支援する。生産準備では、E-BOMからM-BOM、BOPへの変換や整合性チェックを自動化し、設計と製造の手戻りを抑える。製造フェーズでは不良モードの検知や根本原因分析(RCA)を、品質保証では出荷判定の効率化を支援する。さらに保守・サービス領域では、稼働ログの分析による異常検知や予兆保全につなげていく。

photo AIによるモノづくりプロセスの進化[クリックで拡大] 提供:アラスジャパン

 「これまでPLMは、モノづくりに関するデータを保管、検索、共有するためのデータベースでした。しかしAIを前提としたPLMは、自然言語で対話しながら業務を支援し、分析する存在へと進化します。生成AIで壁打ちをするような感覚でPLM内のデータを活用し、設計者のアドバイザーとして機能するPLMの姿を目指しています。そうすることで、資料探しやデータ入力に費やしていた時間を削減し、エンジニアが本来注力すべき仕事に集中できる環境を実現できます」と久次氏はその価値について述べている。

AI実装を支える中核基盤「Aras InnovatorEdge」

 こうしたAI前提のPLM像を具体的な仕組みとして具現化するのが「Aras InnovatorEdge」だ。PLMに蓄積されたエンジニアリングデータを起点に、AIを業務プロセス全体へ実装するためのプラットフォームとして位置付けられる。

 Aras InnovatorEdgeは、「Edge API」「Edge Builder」「Edge AI」の3要素で構成される。Edge APIはPLM内のデータや業務ロジックを外部のAIや他システムと安全に連携させるためのインタフェースで、容易に外部システムとのデータ連携が可能となる。Edge Builderは、ローコードでAIエージェントや業務アプリケーションを構築するための開発環境だ。そしてEdge AIは、生成AIや分析AIを活用し利用するために必要な機能を提供する。これらを組み合わせることで、専門的なプログラミングを前提とせず、ローコードで現場の業務に即したAIエージェントを段階的に構築し、業務プロセスへ組み込むことができる。

 久次氏は「重要なのは、AI単体ではなく、PLMに蓄積された信頼性の高いエンジニアリングデータと組み合わせることです。Aras InnovatorEdgeは、API連携により他システムの情報も活用しながら、より正確で価値のある知見を導き出します」と説明する。

photo Aras InnovatorEdgeの全体像[クリックで拡大] 提供:アラスジャパン

 これを支える重要な仕組みが、CIAM(Customer Identity and Access Management)だ。AIエージェントがPLMに保存されている設計データや部品情報、また他のシステムからの情報を横断的に扱うためには、誰がどの立場で、どの情報にアクセスできるのかを厳密に管理する必要がある。Aras InnovatorEdgeではCIAMを前提とすることで、人とAI、さらには社内外の関係者が同一基盤上で安全に連携できる環境を整えている。

 また、Aras InnovatorEdgeを中核とした取り組みの一環として、Arasはマーケットプレースの提供も計画する。エンジニアリングに関わるAIソリューションをAras単独で開発、提供するのではなく、ユーザー企業やパートナー企業とともにオープンイノベーションとして展開する構想だ。「一定の業界や、ある業種にしかない業務内容などもAIエージェント化できる可能性があります。それを収益化しながら公開できる場を作ることでAI活用はさらに活性化すると考えます」(久次氏)。

日本製造業の強みを生かすためのPLM

 Arasが描くAI前提のエンジニアリング環境は、日本の製造業が長年培ってきた強みを継承し、活用するためにも重要だ。熟練技術者の判断やノウハウといった暗黙知を、設計データや不具合情報と結び付けてPLMに蓄積することで、ナレッジを形式知として整理し、デジタルスレッドとして再構成できる。

 また、日本の製造業は、要求仕様から設計、製造、運用へと至る現場に関わるプロセスにおける“現場力”が強みだとされてきた。ArasはPLMを起点に、IoT(モノのインターネット)を通じて現場データを収集し、分析・学習の結果を再び設計や製造に反映するクローズドループ型のデータ循環を構築することで、将来的に注目されている「フィジカルAI」の基盤となることを目指す。

 さらに久次氏が強調するのが、「スモールデータ」でのAIの活用だ。大手AIプラットフォーマーが提供するAIは膨大なデータを前提としているが、社内データをAIで活用する場合、限定されたリソースで同等の回答を生成する必要がある。PLMに蓄積された設計データや部品情報、不具合情報といったエンジニアリングデータは、デジタルスレッドによって因果関係や文脈が整理されている。こうした関連性を持つデータを活用することで、膨大な学習データに依存せずとも、現場に即した精度の高い判断が可能になるという。

 「限られた社内データの中でも、いかに精度の高い答えを導き出せるかが重要です。AIの活用によってモノづくりの在り方が大きく変わろうとしています。人がこれまで行ってきたものと同じレベルかそれ以上の品質や価値を、システムでより効率的に実現できるように支えたいと考えています」と久次氏は考えを述べる。

 InnovatorEdgeを起点に、PLMをAI前提のエンジニアリング基盤へと再定義しようとするAras。人とAIが協調したものづくりが、日本の製造業の強みとどのように結び付き、現場の実践として根付いていくのか。今後の展開が注目される。

photo 「AIの支援を身近にしたい」と語る久次氏

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提供:アラスジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年3月26日