不確実性の増すVUCAの時代を迎える中、複雑かつ曖昧で予測困難な未来への対応力を実現できるレジリエントなビジネス基盤が求められている。日立製作所は、製造業の間でも注目を集めている「ローカル5G」の環境の構築をワンストップで支援するとともに、デジタルイノベーションを加速するソリューション「Lumada」を5Gで強化するLumada×5Gによって、より高度なレジリエントなビジネス基盤の提供をめざしている。
新型コロナウイルス感染症を筆頭に、自然災害や国家間の摩擦、サイバー攻撃など予測できない事象が発生する「VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)」の時代を迎えている。一寸先は闇ともいえるこのVUCAの時代において、複雑かつ曖昧で予測困難な未来への対応力を実現できるレジリエントなビジネス基盤が求められている。
このレジリエントなビジネス基盤を実現するための技術要素として、製造業で注目を集めているのが「ローカル5G」だ。ローカル5Gは、通信キャリアが展開する5G(第5世代移動通信システム)の特徴である「高速」「低遅延」「多数同時接続」な無線通信を、企業や地方自治体などが独自に運用する専用の閉域網として利用できる。このため、製造業においては、工場内の無線化によるフレキシブルな製造ラインの実現や、遠隔作業の支援、AR(Augmented Reality:拡張現実)活用による製造支援など、製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生産性の向上や人手不足の解消、技能伝承などの課題を解決することが期待されているのである。
こうしたローカル5Gを巡る製造業の最新動向を受けて、積極的な製品/サービス展開を見せているのが、自らもモノづくり企業として確固たる歴史と実績を持つ日立製作所(以下、日立)だ。日立は、自社の製造業としての知見やノウハウに加え、顧客企業との協創によって構築したデジタルソリューションなどを集約した「Lumada」を展開していることで知られる。例えば、製造業向けでは、日立の生産改革に向けた取り組みを基にした、経営に直結する「生産改革最適化ソリューション」や、現場の熟練技能をデジタル化した「技能訓練支援システム」、3D CADデータから作業手順書を自動生成し、現場の組み立て作業手順をアシストする「組み立てナビ」などを提供している。
日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 エンジニアリングサービス第1本部 5Gハンドリング推進部 主任技師の鈴木貴明氏は「Lumadaは、お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称です」と説明する。そして、OT(制御技術)とITの両者をより密接につなぐことができる技術でもあるローカル5Gは、デジタルのサイバー空間と現実のフィジカル空間から成るサイバーフィジカルシステム(CPS)の構築に役立つ。また、デジタルイノベーションのためのソリューションであるLumadaをより高度化し、CPSでの課題対応のサイクルを加速することが可能になる。CPSは製造業においても、攻めと守りの両面でレジリエントなビジネス基盤でもある。
製造業において、この5Gで強化されたLumadaで実現できることとしては、「クラウド活用AI(Artificial Intelligence)による自動化」「サプライチェーン・機器稼働情報の収集」「遠隔支援・仮想空間作業」「フレキシブルなラインの構築」の4つが挙げられる。
まず1つ目の「クラウド活用AIによる自動化」によって、これまで現場側で実施してきた判断や制御に関する処理を、5Gならではの低遅延、高速通信によってクラウド側で実現できるようになる。クラウドでは、オープン化された汎化アルゴリズムやOSS(Open Source Software:オープンソースソフトウェア)の活用が容易だ。このため、例えば現場の映像を収集、処理してAGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)の制御を行うといったような自動化を実現しやすいのである。
2つ目の「サプライチェーン・機器稼働情報の収集」では、モノの製造、運搬、保守などのサプライチェーンに関する情報や各機器の稼働情報を幅広く収集するとともに、各種変化に対する迅速な対応が可能となる。また、5Gネットワークを仮想的に分割するネットワークスライス技術を用いることで、同じインフラ上でも各種ネットワークの独立した構成を容易に作り出せるので、セキュアな環境をソフトウェア処理で構築することも可能となる。
3つ目の「遠隔支援・仮想空間作業」では、離れた拠点間を映像などのリッチコンテンツでリアルタイムに結ぶことで、リモートであることの制約を取り払うことを実現する。具体的な例を挙げると、遠隔地であっても現場の状況を臨場感ある形で把握し、重要な操作や指示を的確に行えるようになる。サイバー空間に反映された作業結果を5Gによって遠隔地のフィジカル空間に反映することで、労働環境の改善や移動時間の解消につなげられるのである。また、ローカル5Gは閉域網による高いセキュリティ性が特徴となるが、日立ではインターネットを経由した外部接続の際にもセキュアな通信環境を提供して十分な安全性を確保している。
4つ目の「フレキシブルなラインの構築」では、自在な仮想ネットワークの構築により、生産ライン構築における制約であった、通信環境の整備などの作業にかかる時間とコストを大幅に軽減できる。従来の有線ネットワークを無線化することで、自在な機器の設置が可能になるだけでなく、生産ラインを構成する機器やデバイスなどの追加、削除などネットワークのセグメント構築の作業も容易になる。
5Gで強化されたLumadaにより生産現場を高度化する上で大きな役割を担っているのが、日立が誇るエッジコンピューティング技術である。同技術では、データの鮮度や量に応じてネットワーク上の適切な場所でエッジコンピューティング処理を行うが、多様な要求に対応するため「AIエッジ」と「オンサイトエッジ」という2種類の形態を用意している。
このうちAIエッジは、現場に設置している機器の内部で画像認識などのAI処理を行い、即時に機器の制御に反映することで安全な活動を支援するというものだ。さまざまな業種で、不審物や異常の検知、不良品の検査など、迅速に対応できる技術となっている。日立は、画像認識であれば、人や自動車などの一般的な物体から、人のジェスチャーや骨格、ランドマークなどに至るまで、オーダーメイドでAIアルゴリズムを開発、提供している。
一方のオンサイトエッジは、工場や事業所などのオンサイト全体のデータについて、5Gネットワークを介して集約するエッジコンピューティング技術になる。現場から5Gを介して送られる大容量映像データや自動制御機器のデータなど複数デバイス情報を連携し、複雑な処理に対応する。さらに、クラウド側とも連携しながら、リアルタイムな制御や的確な指示による状況共有、人やロボットの連携動作などが可能になるのだ。
ここで注意したいのが、モノづくりの現場において効果的にローカル5Gを活用するためには、単にシステムを設置するだけでは十分ではないという点だ。
日立製作所 研究開発グループ デジタルPFイノベーションセンタ エッジインテリジェンス研究部 主任研究員の髙瀬誠由氏は「CPSを実現するためには、フィジカル空間から送られてくる多種多様なデータそれぞれの特性に応じて、通信速度や時間制限などを加味した上で、適切にサイバー空間へと引き上げ、さらにサイバー空間からフィジカル空間へとフィードバックする必要があります」と指摘する。
しかし、例えば工場内であれば、基地局と受信デバイス間の距離やクレーンなどの遮蔽物など、さまざまな要因によって通信速度が異なってくる。とりわけ、工場内を移動するAGVなどでは、通信環境の変化が頻繁に発生するため大きな課題になりがちだ。このように、場所、用途、条件に応じて通信要件も異なってくるため、データの重要度、優先度に応じてフィールドの端末全体をコントロールしなければ、思うような性能が発揮できないのである。
日立は、このような課題を受けて、適切なローカル5G環境の構築に必要なさまざまな作業を支援するためのサービスやソリューションを用意している。例えば、このうちアセスメントサービスでは、導入検討などのコンサルティングと、電波の状況を確認する環境調査を行う。また構築・管理支援サービスでは、ローカル5Gに関する免許申請支援や工事を含む環境構築やシステム稼働を見守る運用保守を提供する。こうして、それぞれの顧客に最適な形でローカル5G環境を構築できるのである。
また、工場の生産ラインなどでは、万が一の通信不具合などによる生産停止を防ぐミッションクリティカル対応が求められることが多い。実際に、ローカル5Gネットワークにはさまざまなアプリケーションを収容することができるが、それらが同時に通信すると、状況により一時的に通信があふれて機器の動作に影響が出る場合がある。日立は、これらのミッションクリティカル対応に必要な「5Gハンドリング機能」を実現するミドルウェアも用意しており、大まかに分けて「優先する通信」と「切れない通信」という2つの機能を開発している。
まず、「優先する通信」では、アプリケーションの優先度に応じて通信を最適化することで業務への影響を回避する。さまざまな通信の挙動を学習して把握しながら将来の状況を予測し、不急の通信のタイミングを制御することで、重要な通信の帯域を確保するのである。また、「切れない通信」では、常に変化する無線環境に起因する無線品質の揺らぎで重要業務が停滞するのを防ぐために、通信路を二重化することで揺らぎの影響を回避する。「通信路を二重化することで安定した5G通信を行えるため、ロボットやAGVへの制御信号の遅延や切断を抑制できます」(髙瀬氏)。
日立グループは、導入検討時のコンサルティングから、導入環境のサーベイ、免許申請支援や5Gのシステム開発・構築、運用保守、そしてLumadaを含む5G利活用支援に至るまで、あらゆるサービスをワンストップで提供できる体制を整えている。鈴木氏は「ローカル5G関連の引き合いは全体として強くなっていますが、やはり最も多いのは製造業のお客さまで、全体の約30%を占めています」と強調する。
日立グループはこれまで、ローカル5Gの実証環境となる協創拠点として、東京の国分寺、小平、大崎の3カ所で展開していた。そして2021年10月には、新たに横浜のみなとみらいにも拠点を設けており、拡大するローカル5G関連の需要に応えられる体制を充実させている。みなとみらいの新拠点では、導入検討したい企業側が機材やアプリケーションを持ち込んでのローカル5Gの実機検証も可能となっており、机上検討だけでは把握しきれないスペックなどの検討を支援する。「みなとみらい拠点では、ローカル5Gだけでなく、sXGPやWi-Fi 6など他の無線通信技術と比較検証する機能も追加する予定です」(髙瀬氏)。
この充実したローカル5G環境構築のための体制と、実績豊富なデジタルソリューション群であるLumadaの組み合わせこそが、冒頭に紹介した「レジリエントなビジネス基盤」を実現する鍵となる。
予測できない事象が発生するVUCAの時代を迎えるにあたって、製造業にとってもレジリエントな企業への変革は待ったなしの状況といえるだろう。まずは、自社の変革に向けてローカル5Gの活用を検討しているのであれば、ぜひ日立製作所に相談してみてはいかがだろうか。
なお、日立グループは、オートメーションと計測の先端総合技術展「IIFES2022」(2022年1月26〜28日、東京ビッグサイト)に出展する。ローカル5G関連ソリューションの展示も行われる予定なので、本稿で紹介した日立のローカル5Gの強みや利点などを体験する良い機会になるだろう。
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提供:株式会社 日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月14日