クラウドだけでAI活用は語れない、「ローカルAI」が変える製造業のAI活用:ローカルAI

製造業における生成AIやフィジカルAIの活用が広がる中であらためて注目集めているのが、オンプレミスでAI環境を運用する「ローカルAI」である。長時間の映像をVLMで処理することによる現場の状況把握や、AIエージェントの連携による工場全体の統括など、製造業にとってローカルAIが活躍する場面は今後拡大しそうだ。

PR/MONOist
» 2026年10月30日 10時00分 公開
PR

 生成AI(人工知能)に取り組む企業が増えてきた。社内のナレッジ検索、カスタマーサポート対応、文書の作成や要約、イラストなどのクリエイティブ制作など、多くの企業で利用が始まっている。

 製造業も例外ではない。開発/設計部門と生産現場の両方で生成AIの活用が広がりつつある。文書データや設計データの検索、不良の解析や品質/歩留まりの向上、マシンビジョンの機能強化、ライン稼働パラメーター(レシピ)の最適化などが適用例だ。最近は複数のAIエージェントや生成AIサービスを束ねた運用も始まりつつある。さらには、ロボティクスなどと連携して現実世界に影響を与えるフィジカルAIに向けた取り組みも始まっている。

 リョーサン菱洋 ソリューション営業本部 第一統括部 営業第一部 シニアマネージャーの中村武士氏は「設計データの活用、生産性や歩留まりの向上、自動化や省人化の加速など、製造業ではさまざまな目的のためにNVIDIA GPUを搭載したワークステーションやサーバを導入されるお客さまが増えています。中には数台を並列にしてシステムを構成されるお客さまもいらっしゃいます」と語る。

リョーサン菱洋 ソリューション営業本部 第一統括部 営業第一部 シニアマネージャーの中村武士氏 リョーサン菱洋 ソリューション営業本部 第一統括部 営業第一部 シニアマネージャーの中村武士氏

 ただし、セキュリティやデータガバナンスの観点から、設計や生産のデータを外部には出さずに処理したいというニーズは根強い。また、外部サービスを利用した場合、トークンコスト(利用料)が意外とかさんでしまいがちで、短期間に部門の予算をオーバーしてしまう恐れもある。

 そのため、AI環境を自社内に置くいわゆるオンプレミスでの運用にあらためて注目が集まっている。ローカルで処理をすることから「ローカルAI」とも呼ばれる方式だ。

 エヌビディア エンタープライズ事業本部 プロフェッショナルビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏は「トークンコストの上昇がローカルAIを後押ししています。オンプレミスとクラウドはそれぞれ適材適所で選ぶべきですが、クラウドはトークンコストの課題があり、コストを予測できる形でAIを活用していくことが重要です」と指摘する。

エヌビディア エンタープライズ事業本部 プロフェッショナルビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏 エヌビディア エンタープライズ事業本部 プロフェッショナルビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏

映像の検索や要約を実現する「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS」

 ローカルAIの活用事例として「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS(以下、VSS)」を紹介しよう。

 VSSとはVideo Search and Summarization(動画検索と要約)の略で、文字通り、ライブ映像や録画映像の中から指定した場面の検索や長時間映像の要約を行う機能である。AIモデルとしては、LLM(大規模言語モデル)ではなく、現実世界との関わりが深いフィジカルAIに最適なVLM(視覚言語モデル)が用いられている。データサイズの大きい動画を扱うことから、クラウドよりもローカルでの処理に適したアプリケーションだ。

 VSSの具体的な応用としては、立ち入り禁止エリアへの侵入、設備からの発煙や液漏れ、作業手順抜け、物品の滞留、障害物の放置、作業者の転倒、敷地内での搬送車両の衝突、といった事象の検知(検索)が可能である。また、長時間にわたる監視映像の要約もできる。

 中村氏は「幾つかの展示会で、VSSを使って、『倉庫に積んでいた箱が崩れて通路を塞いだ』事象や『高所作業においてヘルメットやハーネスを装着していない作業員がいた』事象を映像から検索するデモをお見せしてきました。いずれもNVIDIAのサンプルを用いたものですが、映像の中からそのような検索が簡単にできることに驚かれる来場者が多くいらっしゃいました」と説明する。

リョーサン菱洋が展示会で披露した「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS」のデモ展示の例 リョーサン菱洋が展示会で披露した「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS」のデモ展示の例[クリックで拡大] 提供:リョーサン菱洋
リョーサン菱洋が展示会で披露した「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS」のデモ展示の例 リョーサン菱洋が展示会で披露した「NVIDIA Metropolis Blueprint for VSS」のデモ展示の例[クリックで拡大] 提供:リョーサン菱洋

AIエージェントで工場やプラント全体を最適化

 製造業におけるローカルAIの活用例でもう一つ注目されているのが「NVIDIA Factory Operations Blueprint(以下、FOX)」だ。工場やプラント全体をAIエージェントが自律的に管理または最適化を行うレファレンスデザインである。いわばAIによる工場長だ。

 高橋氏はFOXの概要を次のように説明する。「複数のAIエージェントが、設備の稼働データ、品質管理のデータ、設備のアラートなどのさまざまな情報を集約し、ときには工場やプラントのデジタルツインの実現に役立つライブラリ『NVIDIA Omniverse』とも協調しながら、工程全体やエネルギー管理の最適化を実現することを目指したのがFOXです。いわゆるカンコツに頼ることなく、AIエージェントが自律的に最適化や効率化を進めていくところが大きな特徴といえるでしょう」。

 海外ではすでに導入の動きもある一方で、日本国内でも検討が進み始めている。中村氏は「2つの領域があると見ています。1つは製造業のお客さまで、自社の生産ラインの自律化や効率化にどのように活用できるか、といった観点で検討を始められています。もう1つはFA機器を手掛けるお客さまで、自社の製品やソリューションとFOXとをどのように連携させるか、といった観点で検討が始まっている状況です」と述べる。

「NVIDIA Local AI」でローカルAIの提案を強化

 ここまで説明してきたVSSやFOXに適しているのが、オンプレミスによるローカルAIだ。冒頭で触れたように、クラウドを利用した場合はトークンコストがかさんでしまうこと、社内データは社外に出さずに活用したいというニーズが強いことなどがその理由である。「このローカルAIのニーズに対応するために、NVIDIAは『NVIDIA Local AI』というブランディングで、企業向けのローカルAIの提案を強化しています(高橋氏)

 NVIDIAは、NVIDIA Local AIの利用者について主に2つのペルソナを想定している。1つは、専門性の高いアプリケーションにAIエージェントなどを組み合わせて業務の効率化を図りたいと考えているエンジニアやアーティスト、サイエンティストなどの「エンドユーザー」だ。もう1つは、大規模なAIモデルの開発やそれらのファインチューニングなどを行う「開発者」である。

「NVIDIA Local AI」に最適なハードウェア 「NVIDIA Local AI」に最適なハードウェア[クリックで拡大] 提供:NVIDIA

 エンドユーザーと開発者に最適なハードウェアは少し異なってくる。まず、エンドユーザーの場合、CADやCAE、CGソフトなどを扱うため、高度なビジュアライゼーションに対する要望が強い。そこで、高いグラフィックス処理性能とAI処理性能を併せ持つ最新のGPUボード「NVIDIA RTX PRO」を搭載するワークステーションが最適になる。フラグシップモデルの「NVIDIA RTX PRO 6000 PRO Blackwell Workstation Edition」は、容量96GBのGDDR7メモリを備え、AI処理性能は4000TOPSに達する。

 一方、開発者が求めるのは、よりパラメータ数が大きく、賢いモデルを扱える環境だ。この要求に応えるのが、手のひらサイズのAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Spark」と、本格的なデスクサイドAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Station」である。

 このうちNVIDIA GB10 Grace Blackwellスーパーチップを搭載するNVIDIA DGX Sparkは、メモリ容量が最大128GB、AI処理性能が最大1PFLOPSで、最大2000億(200B)パラメーターのAIモデルを実行できる。エンジニアやデータサイエンティストが1人1台占有できる高性能の開発環境として最適だ。また、小型で取り回しが良いこともあり、AI活用のPoC(概念実証)などにも適している。

「NVIDIA DGX Station」は究極のデスクサイドAIスーパーコンピュータ

 一方、NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultraデスクトップスーパーチップを搭載するNVIDIA DGX Stationは、748GBの大容量コヒーレントメモリを有し、AI処理性能は最大20PFLOPSに達する。最大1兆(1T)パラメーターのAIモデルをローカルで実行できる、まさに究極のデスクサイドAIスーパーコンピュータだ。

 これだけの性能を持つこともあり、NVIDIA DGX Stationは複数ユーザーでそのリソースを活用することも想定されている。実際に、トークン生成速度が極めて高く、NVIDIA RTX PRO 6000 PROに比べておよそ8倍の性能が得られることが確認されている。

「NVIDIA DGX Station」のトークン生成速度 「NVIDIA DGX Station」のトークン生成速度[クリックで拡大] 提供:NVIDIA

 OEMパートナーからそれぞれのブランドで提供されるNVIDIA DGX Stationだが、2026年夏から順次販売が始まった。中村氏は「NVIDIA DGX Sparkが生成AIやフィジカルAIの活用の『ホップ』とすれば、高性能なNVIDIA DGX Stationは『ステップ』あるいは『ジャンプ』に相当します。NVIDIAのパートナーであるリョーサン菱洋は、この『ホップ、ステップ、ジャンプ』をお手伝いすることが役割だと考えています」と強調する。

AIを活用したエンジニアリング自動化への貢献に期待

 ここまで開発者向けのハードウェアとして紹介したNVIDIA DGX Stationだが、2026年6月にWindows環境への対応が発表されたことと、GPUボードのNVIDIA RTX PROを搭載できることも相まってエンドユーザー向けでの利用でも大きな期待を集めている。

 実際に同年10月20〜22日にドイツのベルリンで開催された「NVIDIA GTC Berlin 2026」では、OEMパートナーからのNVIDIA DGX Stationの出荷開始がアナウンスされるとともに、Windows版が12月に発売予定であることも明らかにされた。NVIDIA DGX Stationでは、国内製造業でも広く利用されている、ダッソー・システムズやマスワークス、ロックウェル・オートメーション、シーメンス、シノプシス、ユニティなどの製造業向けアプリケーションがサポートされることから、AIを活用した設計やシミュレーション、検証などのエンジニアリング自動化への貢献が期待されている。

 高橋氏は「近い将来、例えば建築であれば、提案依頼書の解釈、ラフデザイン案作成、構造設計、積算、BIM化、図面化などの作業を、AIエージェントがそれぞれのアプリケーションに指示を出しながら進めていく形に進化するでしょう。より強力なAI処理性能が求められる中で、NVIDIA DGX Stationはそういった将来のニーズにも応えるハードウェアだと考えています」と述べている。

エヌビディアの高橋想氏(左)とリョーサン菱洋の中村武士氏(右) エヌビディアの高橋想氏(左)とリョーサン菱洋の中村武士氏(右)

リョーサン菱洋とNVIDIAがVSSとFOXの解説セミナーを開催!

 リョーサン菱洋は2026年11月25日、エヌビディアとの共催で「見る・探す・動かす。製造現場へのAIエージェント実装へ 〜NVIDIA VSS×Factory Operations Blueprintの現場実装〜」と題したセミナーを開催します。無料ですのでこの機会にぜひご参加ください!

⇒お申し込みはこちらから

日時:2026年11月25日(水)13:00〜16:00
場所:コンワビル13F(アクセス)
参加費:無料(事前登録制)
イベントWebサイト:https://ryoyo-gpu.jp/news/event/nvidia_event52/

AIでお困りならリョーサン菱洋へ

 リョーサン菱洋では、お客さまのAI導入を伴走支援するサービス「RYOYO RYOSAN AI Techmate Program」をご用意しています。「社内にAI人材がいない(人材育成)」「何から手を付ければよいか分からない(検証プラットフォームの提供)」「AI基盤やリソースが不足している(パートナーの紹介)」といったお困りごとに対し、AI導入のフェーズやニーズに応じた最適なサポートをご提供します。また、NVIDIA製品の導入をご検討中のお客さまも、製品選定や導入に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。

⇒お問い合わせはこちらから

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:エヌビディア合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年11月29日