生成AIの導入が広がる一方で、企業変革や業務高度化にまで結び付けられているケースはまだ多くない。化学メーカー特有の業務課題を踏まえた“AI活用の価値を最大化するデータ活用のあり方”について力強く語ったのが、NTTデータ関西 法人分野 第三法人事業部 サービスデザイン担当 部長の辻谷優子氏による講演「AIが企業変革につながらない本当の理由〜化学メーカーのデータ活用課題から考える次の一手〜」だ。製造業のDX支援や化学業界向けERP導入を長年手掛けた辻谷氏の知見から、化学メーカーにおけるAI活用の課題と、その解決に向けたデータ整備の方向性が紹介された。
帝国データバンクが2026年に実施した「AIに関する企業の動向調査」によると、企業における生成AIの主な活用業務は文章作成や情報収集など個人利用が中心で、品質改善や生産計画などの業務利用は限定的だ。辻谷氏はその要因について、個人利用と企業変革を目指す業務利用では前提条件が大きく異なると指摘する。個人利用では作成対象のメールや会議音声など参照データが明確なのに対し、品質改善や原価改善といった業務利用では、生産実績や配合、ロット、品質、在庫など複数部門にまたがる多様なデータが必要となるためだ。
しかし実際の現場では、データがERPや品質データベース、Excel、紙媒体などに分散し、部門ごとに定義や粒度も異なっている。データ同士の関係性や改定履歴が不十分な状態では、AIにデータを投入しても期待した分析や推論を得ることが難しい。問題の本質はAIの性能ではなく「AIが理解できる状態のデータになっていないこと」にあると辻谷氏は力説する。
現在、製造業を取り巻く環境は激変している。人手不足や高齢化が進む一方で、多品種少量化や短納期化、コスト上昇、品質や規制要求の高度化など現場の判断事項は格段に増えている。従来のベテランの勘や経験で判断してきたことを、限られた人員で迅速な判断するには、データを軸に組織で再現できる体制へ移行することが不可欠だ。特に化学メーカーでは、配合自由度の高い「研究開発」、個別仕様を扱う「営業」、原料ロットのばらつきがある「製造」、試験判定や法令対応を担う「品質」という各部門の業務データが複雑に絡み合う。
こうした環境でAIを有効活用するには、4つの条件を満たすデータが必要となると辻谷氏は指摘。1つ目は部門間で意味がそろった「共通定義」、2つ目は改定履歴を追える「履歴管理」、3つ目は品目や配合、ロット、品質、顧客仕様がひも付いた「関係性」、4つ目は源泉システムから正しく登録された「信頼性」だ。これら4条件が連携することで、例えば品質異常の初動調査においてAIが類似事例や関連ロットを横断検索し、原因特定を迅速に補助できるようになる。
辻谷氏は「良いAIは、使える業務データから生まれる」と強調する。AIプロジェクト開始時に慌ててデータを収集したりExcelで加工したりするのではなく、日常業務の中で自然に使えるデータが蓄積される状態こそが望ましい。これを支えるのが業務・基幹システムという土台だ。AI活用を支える構造は、「(1)業務・基幹システム→(2)業務データ→(3)DWH・BI・AI→(4)経営判断」の4層構造で成り立つ。基幹システムの役割は日常業務を正しく回すことだが、その副産物として、品目や配合、ロット、原価、品質がひも付いた信頼できるデータを残せることが重要になる。
NTTデータ関西では、化学製造業特有の業務に対応した業界特化型ERP「BIZXIM化学」を提供している。配合管理、液体・粉体の単位換算、原価計算など化学業界固有の機能を標準機能でカバーし、200以上の標準業務フローにより高い業務適合率を実現する。生産・販売・会計を統合管理するとともに、多言語・外貨対応や複数拠点管理機能により、国内外を含めた事業運営を支援する。「AI活用を推進するうえで重要なのは、まず信頼できる業務データを継続的に蓄積することであり、それを実現できるのが基幹システムである。業界・自社にあった基幹システムを導入することが、化学メーカーの企業変革に向けた重要な第一歩となる」(辻谷氏)
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年10月16日