改正物効法を成長機会に――現場起点の入出荷業務DXで「選ばれる荷主」へスマートフォン活用から始める入出荷業務DX

2026年4月に改正物流効率化法(改正物効法)が全面施行された。一定規模以上の荷主には物流効率化に向けた取り組みが義務付けられており、荷待ち/荷役等時間の削減も重要な取り組みの1つとなっている。だがアナログな現場管理や大規模投資の壁に阻まれ、従来型のアプローチだけでは対応が難しくなりつつある。「スマートフォンで小さく始め、経営DX基盤へ育てる」、現場起点の入出荷業務DXが注目されている。

PR/MONOist
» 2026年07月30日 10時00分 公開
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 トラックドライバーの時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」を契機に、日本の物流の持続可能性に対する懸念が高まっている。

 深刻化する労働力不足により、このまま何も手を打たなければ2030年には輸送能力の約34%が不足するといわれている(*1)。事態を重く見た政府は、物流改革の在り方そのものを切り替えた。これまで弱い立場に置かれがちだった物流事業者だけではなく、荷主の側にも規制をかけることで、「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主/消費者の行動変容」を促す狙いだ。こうして2026年4月に全面施行されたのが、改正物流効率化法である。

 同法が強く求めるのは、トラックの待機時間(荷待ち時間)と荷積み/荷下ろし/検品/荷造り/仕分け/陳列/代金取り立て/立ち会いなどに従事する時間(荷役等時間)の削減だ。現状ではトラックドライバーの1運行の平均拘束時間のうち、荷待ち時間および荷役等時間が平均約3時間と推計されている。このため、荷主側での改善を求め、これらの時間を全国平均で「2時間以内に短縮する」ことが目標として掲げられている(*2)。しかし、目標達成は容易ではない。同法では「トラックの入場から退場までの時間の内訳」を正確に把握するよう求めているが、多くの荷主はそのすべを持っていないからだ。

日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 AIワークオートメーション本部 アプリケーションDX部 主任技師の前田真和氏 日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 AIワークオートメーション本部 アプリケーションDX部 主任技師の前田真和氏

 日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 AIワークオートメーション本部 アプリケーションDX部 主任技師の前田真和氏は、現場の実態をこう説明する。

 「多くの現場では、ドライバーが紙に書いた到着/出発時刻を表計算ソフトへ手入力しており、到着から出発までの滞在時間を算出するだけで手いっぱいです。その内訳を明らかにするには、バース到着から荷下ろし、入荷検品、受領完了、バース出発までの履歴を残しておく必要があります。現場の運用負荷は高く、従来のやり方だけでは対応が難しくなってきています」(前田氏)

 また、システムの導入によって内訳の履歴を取得できるようになったとしても、それだけで課題が解決するわけではない。最大の問題といえるのは、現場から得たデータをいかに効率よく国への報告書に落とし込めるかという点だ。

 その壁を越えて現場の状況を可視化できてこそ、ようやく本質的なボトルネックのあぶり出しに移行できる。分析の結果、改善すべき課題が検品の時間だと判明することもあれば、業務プロセスそのものの見直しに到達することもある。単一の解決策に飛びつくのではなく、情報集計と分析、そして適切な改善施策を回すことが本質的な解決につながるのだ。

改正物流効率化法の狙い 改正物流効率化法の狙い[クリックで拡大] 提供:日立ソリューションズ

現場のお困りごとを起点にはじめる

 では、何から手を付けるべきか。デジタル化の必要性は認識していても、多くの荷主にとって物流はコストセンターと捉えられがちだ。そのため、最初から大規模なシステム導入を目指すと決裁が前に進まず、改善への着手さえ難しくなるのが実情である。

 そこで有効なのが、現場で課題となっている業務から着手し、その効果を確認しながら改善を広げていく進め方だ。現場に「やらされ感」を与えず、作業者が便利さを実感しながら日常的に使うことで、次の改善につながるデータを蓄積する。この日々の実績を根拠とすることで、業務手順の抜本的な見直しや基幹システムとの連携といった、本来進めるべき大規模な改善へ順次投資を拡大することが可能になるのだ。

 中でも効果的な入り口となるのが、バーコードスキャン業務の効率化だ。

 「物流現場では入荷や出荷、仕分けなど多様な工程でバーコードが使われています。既存のハンディー端末もすでに有用なツールとして活躍していますが、スマートフォンならではの強みである、複数同時読み取りや文字認識といった機能が効果を発揮する領域もあります。現在の業務を変えずにスマートフォンの強みを部分的に取り入れるだけでも、作業の効率化が進みます。さらに、スキャン履歴や作業時間などのデータが自然に取得できるようになることで、将来的な現場の可視化への土台になるのです」(前田氏)

Scanditで複数コードを一括読み取り ARやOCRも活用

 こうした狙いの下、日立ソリューションズが提供しているのが、「複数コード対応高速スキャン提供サービス」である。コアとなる読み取り技術には、世界中の先進企業で評価されるスイス発のソフトウェアエンジン「Scandit(スキャンディット)」を採用した。スマートフォンの内蔵カメラを活用し、現場の悪条件下にも対応できる高い読み取り精度と速度を誇る。

 「長距離輸送品などで箱がつぶれて変形している、検品時にチェック線が引かれている、ビニール包装越しでグレア(反射)があるなど、従来のハンディースキャナーでは読みづらいバーコードも、補正をかけることで高い精度で読み取ります。高所や遠距離からのスキャン、照明の弱い倉庫内など暗所での読み取りにも対応し、現場作業者のストレスが軽減されます」(前田氏)

Scanditを活用した複数コード対応高速スキャン提供サービスの提供価値 Scanditを活用した複数コード対応高速スキャン提供サービスの提供価値[クリックで拡大] 提供:日立ソリューションズ

 スマートフォンのカメラに映った複数のバーコードを一括で読み取れる点も強みだ。1画面で50程度の同時読み取り(*3)にも対応しており、既存のハンディースキャナーでバーコードを1つずつ読み取っていた手間がなくなる。

 さらにScanditが真価を発揮するのが、バーコード読み取りを補完するAR(拡張現実)機能である。スマートフォンの画面に映るバーコードの上に「検品済み」「未読」「仕分け先」といった結果を重ねて表示し、複数スキャン時でも直感的に読み漏らしを防止できる。その他、バーコードの空間位置情報を認識しながら個数を把握する「数量カウント機能」や、貼付された賞味期限、重量、単価などの文字情報を同時に取り込む「OCR(光学文字認識)機能」も搭載している。

 日立ソリューションズでは、これらScanditの技術を自社の「複数コード対応高速スキャン提供サービス」に順次取り込み、提供機能を拡大する計画だ。サービス導入には、規模や台数に応じて年間数百万円程度からのスタートが可能だ。

現場改善をゴールにしない――一歩ずつ育てる経営DX基盤

 スキャン業務へのスマートフォン活用は、現場の作業時間短縮にとどまらない幅広い価値を生み出す。現場側では、大量の荷物の中から特定の対象物を目視で探す負担や、データを手作業で入力する手間を軽減できる。

 一方、管理者にとっては、現場データを蓄積し、可視化できることが大きな価値となる。荷物の数量、作業時間、スキャン回数、作業履歴などを分析することで、現場で何が起きているのかを把握しやすくなる。得られたデータは、物量の増減に応じた人員配置や、根拠に基づいた作業計画の見直しにも活用可能だ。

 そして、荷主が恐れる誤出荷や誤発送についても、バーコード、AR、OCRを活用して確認作業の精度を向上させることで、目視や手入力に依存したミスを削減できる。

 「まずは手元のスマートフォンで作業をラクにし、少しずつ作業時間を短縮する。そうした現場での『小さな成果と成功体験』を着実に積み重ねていくことが、改正物流効率化法で求められる本質的な物流改善へとつながっていきます」(前田氏)

 取り組みを単発のツール導入で終わらせてはならない。バーコードスキャンソリューションの導入からスタートした現場業務の改善を、最終的に経営DX基盤へと発展させることが重要だ。日立ソリューションズでは、その着実なステップを踏むための4段階のロードマップを提示している。

現場改善から経営DXまで見据えた4段階のロードマップ 現場改善から経営DXまで見据えた4段階のロードマップ[クリックで拡大] 提供:日立ソリューションズ

 フェーズ1の「導入」では、身近なスマートフォンが効果を発揮しやすい業務からアプリを取り入れ、まずは作業者に少しでも使ってもらう環境を作る。フェーズ2の「定着」を迎えると、アプリに慣れた現場が機能をとことん使いこなすようになる。その成果を目にした他部署や近隣拠点の作業者からも「うちでも使いたい」という声が上がり、組織横断的な展開が進んでいく。

 フェーズ3の「見える化する」では、現場で蓄積されたデータをWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)などの基幹システムと連携させることで、物流現場全体の動きを可視化できるようになる。そして最終のフェーズ4となる「全社DX基盤化」において、可視化されたデータを土台に、AI(人工知能)を活用したボトルネック分析、人員配置支援、作業計画支援、経営判断支援へと発展させる。

 日立ソリューションズは、このロードマップを構想だけで終わらせず、同社ならではのサポート体制で支援する姿勢だ。

 「当社には、Scanditの日本上陸当初から販売パートナーとして培ってきた知見と、SIerとしての多くの業務アプリケーション開発やシステム連携などの実績があります。SaaS型で小さく始められる運用形態を用意しつつ、お客さまの状況に応じたカスタマイズやデータ分析、AIエージェント活用まで、包括的にサポートできる体制を整えています」(前田氏)

「選ばれる荷主」になるために、今取り組むべきこと

 改正物流効率化法への対応は、法対応や数値目標の達成だけが目的ではない。重要なのは、その先にある輸送能力不足という経営リスクを見据え、継続的な改善に取り組むことだ。

 実際、輸送能力の不足が現実になれば、物流事業者は限られた輸送能力を効率的に活用するため、荷主や荷物を選択する傾向が強まる可能性がある。効率よくスムーズに作業ができる荷主の依頼が優先され、対応が不十分な荷主の依頼は後回しにされるおそれがある。

 「荷物を運んでもらえない事態になれば、荷主にとって重大な経営リスクとなるのは言うまでもありません。現状はまだモノが流れているため危機感を抱きにくいかもしれませんが、『2030年に輸送能力の約34%が不足する』という国の試算が現実となれば、物流はいずれ限界を迎えます。だからこそ、環境改善へ先進的に取り組む荷主ほど物流事業者から高く評価され、『選ばれる荷主』になっていくと考えます」(前田氏)

 トラックの入場から退場までに毎回3時間も待たされるA社よりも、30分程度で荷下ろし/荷役作業を終えられる環境が整ったB社を優先する――。物流事業者やドライバーがそう判断する日は、決して遠くない。今動かなければ10年後には手遅れになるおそれがある。「選ばれる荷主」になれるかどうかは、この数年のアクションにかかっているといっても過言ではない。

 裏を返せば、取り組みが早ければ早いほど、自社の競争優位を確立しやすくなる。改正物流効率化法への待ったなしの対応は、自社を強くする絶好の機会でもある。

 日立ソリューションズは、現場が「便利だ」と実感できる小さな一歩から始め、着実にデータを積み上げながら、やがて経営のDX基盤へと育てていく。その全行程に、SIerとしての技術力と日立グループの総合力を携えて伴走する。法対応を成長の契機へと変え、「選ばれる荷主」への道を、現場や経営者と共に描いていく。

日立ソリューションズの前田氏 日立ソリューションズの前田氏

*1 第23回物流小委員会 【資料1】物流の2024年問題について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001620626.pdf

*2 貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針(令和七年農林水産省・経済産業省・国土交通省告示第一号)
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/files/pdf/basic-policy-promoting-revised-logistics.pdf

*3 一度に読み取れるコードの数は条件により異なります



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