人手不足に悩む製造業だが、その業務の煩雑さに拍車を掛けているのが、Excelやメールに頼った属人的な情報管理だ。これらの状況を脱却するために、まず何から手を付けていけばよいのだろうか。ヌーラボ 取締役 CPOの中島成一朗氏とMONOist編集長の三島一孝が「脱属人化」をテーマに対談した。
工程の進捗管理や部門間の調整、国内外の拠点や発注先との連携は、今もExcelやメール、時にはFAXが使われており、担当者個人の管理に委ねられているケースが多い。そのため、変化に追われるほどプロジェクトの全体像はつかみにくくなり、担当者の状況によって業務が左右される状況が生まれている。
これらの状況を脱するために、まず何を考え、どのような取り組みを進めるべきだろうか。プロジェクト/タスク管理ツール「Backlog」を提供するヌーラボ 取締役 CPOの中島成一朗氏と、MONOist編集長の三島一孝が「脱属人化」をテーマに対談を行った。
MONOist 三島(以下、三島) 製造業では、人手不足が深刻化しており、それを補う手段としてデジタルツールへの期待が高まっています。製造業の情報管理について、どう見ていますか。
ヌーラボ 中島成一朗氏(以下、中島氏) 私自身がかつてメーカーに勤めていたのでよく分かるのですが、DX(デジタルトランスフォーメーション)などが積極的に進められている一方で、現場を見てみると、いまだにExcelやメール、FAXでのやりとりが中心になっているケースが少なくありません。
限られた担当者に委ねられている場合は、不在時や引き継ぎの場面では、経緯を追うだけでも時間がかかります。また、担当外から見ると、誰が何をどこまで進めているのか、どこで止まっているのかが見えにくくなります。発注先や協力会社など社外とのやりとりも多い製造業では、情報が分散するほど状況把握は難しくなり、日々の細かい遅滞や、トラブル時の復旧遅れなどにつながりかねません。
日常的に多く行われる作業だからこそ、個人に頼らない仕組みづくりが必要になります。課題やタスクを軸に情報を一元管理し、関係者が同じ情報を見ながら仕事を進められる状態を作ることが重要です。
三島 部門内外のコミュニケーションや、タスクの把握などは、日常的に頻繁に行いますが、メールやExcelファイルでの管理では、目的のものを探したり、履歴をたどったりする時間が多く発生し、課題を抱えている現場をよく見かけます。
中島氏 そういう部分をまず改善するということが、人手不足が深刻化する製造現場で求められていると感じています。
三島 これらが深刻化しているからこそ、従来Web開発などITプロジェクトで活用されていたプロジェクト管理ツール「Backlog」が製造業でも使われるようになってきているのでしょうか。
中島氏 利用拡大のきっかけになったのは、ユーザーによる口コミです。われわれは約2年前まで営業部門を置いていなかったのですが、ユーザーが運営するコミュニティー「JBUG(ジェイバグ)」などを通じて活用方法が共有されていきました。その中で、モノづくり現場などでも「われわれの課題でも使えるのではないか」という認識が生まれ、徐々に利用が広がっていきました。国内では、有料ユーザー数は150万人、有料契約件数は1万5000件に上り、こうした中でモノづくり現場での活用も大きく増えてきています。
三島 製造業で利用が広がる中で、どのような点が評価されていると考えますか。
中島氏 Backlogはプロジェクト管理ツールですが、単に進捗表を作るためのものではありません。課題管理、ガントチャート、ドキュメント、ファイル共有といった機能を一つにまとめ、タスクごとに担当者や期限、履歴、関連ファイルを管理できます。Excelやメールでの管理では、情報がファイルや個人の受信箱に分散し、最新版が分からなくなったり、経緯を追うために過去のメールを探したりしがちです。Backlogなら、課題やタスクを起点に情報を集約でき、関係者が同じ内容を確認しながら仕事を進められます。メールでよくある「誰をCCに入れるか」を考える必要もありません。
また、ユーザー数に応じて費用が増える従量課金ではないことも特徴です。契約内であれば、ユーザー数無制限(※)で追加費用なく利用者を増やせるため、社内外の関係者を巻き込んだタスク管理に活用しやすくなっています。
(※)安定した運用を維持するため、最大1万人までを推奨。
さらに、プロジェクト管理ツールは海外製のものも多いですが、製造業ではITに詳しい人だけが使うわけではありません。Backlogは国産らしく、先進性を前面に出しすぎず、誰でも使いやすいインタフェースである点が評価を受けていると感じています。
三島 今行っている業務内容を分かりやすくデジタル化して組織的に共有できる点が特に評価を受けているというわけですね。
三島 製造業での具体的な活用事例を教えていただけますか。
中島氏 弊社のWebサイトでは、多くの導入事例を紹介していますが、その中で製造業の事例をいくつか紹介します。
例えば、トヨタ自動車のTCシャシー設計部様では、部門全体でタスク管理、回覧物の一元管理にBacklogをご活用いただいています。事例サイトによりますと、以前から日々行う業務管理のさらなる効率化にはITツールの導入が欠かせないと感じておられたそうです。もともとはExcelなどを利用されていたのですが、部内の情報共有や知見の蓄積をより強化していきたいと考え、Backlogをご活用いただくことになりました。導入後は、部署全体や個人の業務状況をひと目で把握でき、特に回覧物では、メールやチャットでは見えにくかった停滞状況をBacklogの「ボード」機能で確認できるようになりました。承認回覧の履歴や経緯も残るため、同じ確認の繰り返しや差し戻しの削減にもつながっていると紹介されています。
また、医療用品メーカーのダイヤ工業様の導入事例でも、以前はプロジェクトから派生したタスクの管理が個人任せになり、進捗が見えにくいことが課題だったとお話しいただいています。しかし、Backlogを共通基盤にしたことで、個人管理のExcelを探す手間が減り、部門を越えた連携もしやすくなりました。営業部門では問い合わせ内容を共有できるようになり、担当者が不在でも対応しやすくなったそうです。
三島 部門や拠点をまたいだり、取引先も含めてプロセスを最適化したりする場合などで活躍しているわけですね。
中島氏 製造業では、社内だけでなく、発注先や協力会社、海外拠点などとやりとりする場面も多くあります。海外拠点との連携では、時差や距離があっても、Backlog上に課題や進捗を残しておくことで、現地の作業がどこまで進んでいるかを同じ画面で確認できます。言語や場所が異なる関係者と同じ環境で情報を共有できることは、大きなメリットです。
一方、製造業のそれぞれの現場には、各社が長年培ってきた独自の業務の進め方があります。重要なのは、Backlogを活用するといってもこれらを全て単純に置き換えることだけを考えるべきではないということです。既存のやり方を生かしながら「ここはBacklogで管理する」「ここは従来の仕組みを使う」と柔軟に使い分け、差別化につながるモノづくりプロセスはそのまま生かしていくことだと考えています。外資系のツールでは、ツール側の型に業務を合わせることを求められる場合も多くあります。しかし、Backlogは現場それぞれのこだわりを生かしながら使っていただけます。ここに国産である強みも発揮できると考えています。
三島 システムに合わせるのではなく、既存の業務プロセスの強みを生かしつつ選択できる点は、改善活動などで進化する日本のモノづくり現場には受け入れやすいかもしれません。
三島 モノづくり業務でもAI(人工知能)活用が進んでいくと見られていますが、このプロジェクト管理ツールとAIの関係についてどのようにお考えでしょうか。
中島氏 AI活用で重要なのは、単にAIツールを導入することではなく、AIが参照できる業務データを日々蓄積しておくことです。紙の資料や個別のExcel、メールに情報が散らばったままでは、AIを使おうとしても最適な回答を得ることはできません。Backlogのようなツール上に、日々の課題ややりとり、判断の経緯、関連ファイルを蓄積していくことが、AI活用の土台になります。
こうした考えも踏まえ、われわれは2026年3月に「Backlog AIアシスタント」を正式リリースしました。これはBacklogに蓄積された業務データを基にAIが、自然言語のやりとりでさまざまなプロジェクトの情報を教えてくれたり、作業を支援してくれたりするサービスです。
例えば、製造工程の取り組みをプロジェクトとして管理していただければ、どのプロジェクトが滞っているのかを把握しやすくなり、その状況を進捗レポートにまとめることもできます。月次の報告会に向けて担当者が数週間前から資料を作り始めることも多いですが、日々の進捗がBacklogに残っていれば、情報を集め直す負荷を減らせます。
また、プロジェクトなどにおける担当者のアサインにも活用できます。過去のプロジェクトや課題の履歴を見れば、誰がどの業務を担当し、どの領域に強みを持っているのかが分かります。AIがそれらを読み解くことで、「この仕事なら、過去に似た業務を担当したこの人が向いているのではないか」といった判断材料を示せます。もちろん、最終的に誰をアサインするかは人が判断すべきですが、判断に必要な情報を集める負荷は軽減できます。新任のマネジャーも、メンバー一人一人に確認しなくても、各自の役割や業務の経緯を把握しやすくなります。
加えて、海外拠点とのコミュニケーション支援にも活用できます。実際に、AIアシスタントを使って、日本側と海外拠点とのやりとりを翻訳しているユーザーもいます。AIが一定の翻訳を担うことで、通訳担当者が全てのやりとりに介在する必要がなくなり、より付加価値の高い業務に集中しやすくなります。多言語で進むグローバルなプロジェクトでも、Backlogを活用しやすくなると考えています。
三島 汎用AIとの大きな違いは何でしょうか。
中島氏 一番大きな違いはセキュリティです。ChatGPTやGeminiなどの汎用AIには機密性の高い自社データを読み込ませにくく、利用に制限がある企業も少なくありません。その点、Backlog AIアシスタントは、入力されたデータをAIの学習には利用しない仕様になっています。また、Backlog AIアシスタントには蓄積されたデータをそのまま生かせます。汎用AIを使う場合のように、複数のツールに散らばった情報を個別に読み込ませる手間もありません。
製造業では人手不足に加えて人材の流動化も進んでおり、業務の経緯や判断の理由、過去の対応を残していくことは、組織にとって欠かせません。私たちは、BacklogをAI時代のナレッジプラットフォームへ進化させることを重要な方向性に掲げ、人とAIの双方がBacklog上のナレッジを活用できる状態を目指します。
三島 本日はありがとうございました。
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提供:株式会社ヌーラボ
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月28日