国内自動車業界では、自動運転アルゴリズムの開発がE2E(End-to-End)方式に移行しつつある中で、必須とされるGPUサーバの導入が進んでいない。この課題を解決するため、ネクスティ エレクトロニクスが提供しているのが、NVIDIA(R)の最新のGPUサーバを試せるトライアル環境「GAT」だ。
先進運転支援システム(ADAS)から発展する形で、自動運転技術の開発と実用化が急速に進んでいる。高速道路でのハンズオフのような「レベル2+」を搭載した市販車が増える一方で、地域のシャトルバスなど走行範囲を限定した「レベル4」の実証実験も各地で行われている。
自動運転技術のアルゴリズムも進化を遂げつつある。従来は、あらかじめルールを定義するとともに、認識、予測、経路計画、制御といった個別の機能モジュールを組み合わせて構成する、ルールベースに基づく開発が中心だった。しかし近年は、道路状況や運転制御を学習させた単一の巨大モデルを使って自車が進むべき経路を得る「E2E(End-to-End)方式」に主流が移りつつある。
いずれのアルゴリズムにおいても重要なのが走行の環境や条件の網羅性だ。従来は、試作車をテストコースなどで実際に走らせてアルゴリズムの動作を確認するのが一般的だったが、レアケースを含めた条件の全てを網羅することは難しい。
そこで活用されるのがGPUサーバに代表される高性能なコンピューティングリソースを用いたシミュレーションである。さまざまな天候条件で、例えば歩行者の飛び出し、他車両の割り込み、合流や車線変更、工事などによる車線減少、落下物や落石など、時々刻々と変化する道路状況を再現した仮想のテスト環境を生成し、アルゴリズムの学習や検証を進めていく方法だ。
このGPUサーバの導入状況について課題を指摘するのがネクスティ エレクトロニクス 執行役員 デバイスソリューションカンパニー 事業開発ユニット ユニット長の高野幹男氏だ。高野氏は「自動運転技術のアルゴリズム開発は世界的にE2E方式へとシフトしつつあります。しかし、国内自動車業界では、E2E方式のアルゴリズムの開発と検証に必須とされるGPUサーバの整備が必ずしも十分ではないといわれています」と語る。
ただし、GPUサーバの導入と一言でいっても、オンプレミスで一から構築するのにはコストも手間もかかる。もちろんクラウドのGPUサービスを利用するという選択肢もあるが、その場合、利用が長期にわたると費用対効果が把握しづらくなることが課題になる。
そこで、豊田通商グループのネクスティ エレクトロニクスとGPUサーバ構築で高い実績を持つジーデップ・アドバンスが協力し、自動車をはじめとするモビリティ業界向けにNVIDIAの最新GPUを用いたトライアル環境を提供しているのが「GAT(GPU Advanced Test drive、ガット)」だ。
高野氏は「GATはモビリティ業界のお客さまにトライアルとして最新のGPU環境を一定期間提供するサービスです。投資規模が大きくなりがちなGPUサーバを本格導入する前に動作や性能を検証したい、PoC(概念実証)レベルで計算リソースを使いたい、最新機種を使ってみたい、といったニーズにお応えします」と説明する。
GATの特徴は、大きく5つに分けることができる。「多機種」「最新」「手軽」「占有」「安全」だ。
1つ目の「多機種」では、LLM(大規模言語モデル)やビジョンAI(人工知能)の学習、ビジュアライゼーション、高精度CAE、小規模学習などさまざまなニーズに応えられるように、NVIDIA DGX H100(TM)、NVIDIA DGX A100、NVIDIA RTX(TM) A6000やNVIDIA A800 40GB Active GPUを搭載したワークステーションなどをそろえる。顧客が求める、アプリケーションや性能、予算などに応じて選ぶことが可能だ。
2つ目の「最新」では、NVIDIAのGPU環境を最新かつ最速で提供する。多機種で紹介したラインアップに加えて、2025年12月からは最新世代のNVIDIA Blackwell GPUを8基搭載したNVIDIA DGX(TM) B200も利用可能になっている。
3つ目の「手軽」では、GPUサーバを用いて自動運転アルゴリズムの開発を素早く始められるように、オープンソースソフトウェアやNVIDIAのツールキットから役立つソフトウェアをネクスティ エレクトロニクス側で提案できる体制を整えている。「NVIDIAのツールキットはラインアップが豊富です。しかし豊富であるが故に、その中から選ぶだけでもかなりの手間がかかります。GATであれば、当社がユーザーの学習用途に最適なソフトウェアやツールキットを提案することでその手間を省くことができます」(高野氏)。
4つ目の「占有」は、クラウドのGPUサービスとは異なり、GPU環境をプライベートクラウドとして占有できることを指す。最短2週間から最長6カ月まで、GPUのベアメタル物理サーバを占有できるので、さまざまなことを検証するトライアル環境として最適なサービスになっている。
そして5つ目の「安全」は、GATが豊田通商グループの高セキュアな回線によって提供されることで担保されている。
GATは、一般的なクラウドのGPUサービスと比べてコストを管理しやすい点に特徴がある。まずGATは、トライアルを目的としたサービスであり、その利用期間は最長6カ月である。その間に、オンプレミスのGPUサーバ構築などに向けたシステム要件の洗い出しや投資判断を行うことになる。逆に言えば、GATの利用コストは6カ月分が上限になるため予算を確定させやすい。
一般的なクラウドのGPUサービスは期間に制限がないため、長期で借りてしまうと利用コストが想定を超えて膨らんでしまうことがある。予算の見通しも立てにくい。高野氏は「GATの利用料金そのものもトライアルとして最適な設定にしています」と強調する。
GATの利用を通じてGPUサーバの導入へ進んだ場合、ネクスティ エレクトロニクスとジーデップ・アドバンスが共同でサポートする。具体的には、最適なGPUサーバの選定や調達、GATで構築した環境と同内容へのセットアップなどを行う。もちろん他のベンダーから調達してもよいが、モビリティ業界に求められるさまざまなツールに関する知見やノウハウ、最新情報を持つネクスティ エレクトロニクスに任せるのが安心だろう。2024年の提供開始以来、実際にGATでPoCを終えた後にGPUサーバの本格導入に至ることもあり、実績を重ねている。
ネクスティ エレクトロニクスは、GATの顧客が自動運転アルゴリズムの開発や検証を効率的に進められるよう自社開発ツールも提供している。
その一つが、実機ECUを用いた検証をほぼ遅延なく行えるクローズドループシミュレーターの「ENDEE(Environment NEXTY Direct End-to-End development)」である。ENDEEは、GATのGPUサーバを設置しているデータセンター内で、自動運転アルゴリズムを組み込んだ自動運転ECU(エッジデバイス)となる「NVIDIA DRIVE AGX Orin(TM)/Thor(TM)」とGPUサーバを10Gbpsのイーサネットで直結する構成を採用している。これにより、GPUサーバ内のシミュレーション環境における自動運転ECUの検証をほぼ遅延なく行うことができる。クラウドのGPUサービスは、ENDEEのようにエッジデバイスをGPUサーバに直結することは不可能だ。ENDEEは、GATならではの強みといえるだろう。
また、NVIDIAのフィジカルAI向けプラットフォーム「NVIDIA Cosmos(TM)」の活用についてもサポートされる。NVIDIA Cosmos(TM)はシミュレーション用の映像生成を担う技術だ。「子供が飛び出すシーンを作成して」「天候を雪に変更して」といったプロンプトを与えるだけで、フォトリアリスティックな映像をシミュレーション環境に適用でき、より網羅性の高い検証に役立てられる。
GATの利用期間は、NVIDIA AI Enterpriseの有償版を試用できる他、代表的なソフトウェアについてはネクスティ エレクトロニクスがハンズオンサポートを提供する。NVIDIAから投入される最新ツールも随時サポートする計画だ。
ネクスティ エレクトロニクスはトーメンエレクトロニクスと豊通エレクトロニクスの統合によって2017年に設立された電子部品/半導体部品の商社である。豊田通商グループの一員ということもあり、自動車関連分野に強い。
半導体商社であるネクスティ エレクトロニクスが、なぜ自動運転の開発環境であるGATを開発したのだろうか。高野氏は「当社では数年前からソリューションやサービスの提供にも取り組んできました。その一環として、国内自動車業界でGPU活用が遅れているのではないかという危機意識もあり、自動運転にフォーカスしたトライアル環境を提供しようと考えたのです」と語る。
そのネクスティ エレクトロニクスが新たに取り組むのが、再生可能エネルギーを利用したGATの提供だ。豊田通商とユーラスエナジーが北海道稚内市に共同で建設予定の、風力発電の電力を直結する「宗谷グリーンデータセンターI(仮称)」にて、2028年1月からGATを提供する計画だ。「GPUサーバ環境の提供に加え、消費電力増加に対するグリーンエネルギーの活用など、環境配慮への対応も進めていきます。なお、その時点で最新世代となるNVIDIAのGPUサーバを設置する予定です」(高野氏)。
またGATは、自動車分野だけではなく、ロボットなどを含めた広義の自律移動モビリティ向けにも提案する考えだ。デジタルツイン、フィジカルAI、メタバースなど、NVIDIAのGPUサーバを必要とするアプリケーションは多い。高野氏は「E2E方式の自動運転アルゴリズムの開発にとどまらず、生成AIを含むさまざまなアプリケーションを手掛けてみたい、試してみたい、というお客さまにGATを検討していただきたいと思っています」と訴える。実際に、自動車関連企業だけではなく、建設機械や産業機器などの企業からも問い合わせが来ているという。
このGATを通じて、自動車業界をはじめとする国内企業にGPUサーバの活用が広がっていくことが期待される。
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提供:株式会社ネクスティ エレクトロニクス
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年4月17日