半導体製造工程に垂直多関節? その疑問に答える三菱クリーンロボットの実力半導体製造工程向け産業用ロボット

生成AIの利用拡大やデータセンター投資の活発化などを背景に半導体需要が急増している。その中で、半導体製造工程の自動化と効率化を支える存在として注目されているのが、クリーンルーム対応の産業用ロボットだ。三菱電機では、最大可搬質量20kgの垂直多関節クリーンロボットの新モデル「RV-20FRL」を投入した。累計1万台を超える導入実績を持つ同社クリーンロボットの特徴と、新モデル投入の狙いに迫った。

PR/MONOist
» 2026年02月09日 10時00分 公開
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旺盛な需要を背景に国内外で活況を呈する半導体産業

 「産業のコメ」とも呼ばれる半導体デバイスはデジタル化が進む現代の社会や生活に欠かせない存在だ。企業活動のデジタル化の進展や生成AI(人工知能)の普及拡大、それに伴うデータセンター投資、さらには自動車の電子化や電動化などを背景に、半導体の需要はなおも増加している。

 半導体の安定的な確保とサプライチェーンの強靭化は、いまや経済安全保障上も重要なテーマとなっている。日本においても政府は国家戦略として半導体産業に対して積極的な支援を進めており、熊本県、北海道、岩手県など、さまざまな地域にファウンドリーが建設または増設されている状況だ。

 製造装置や材料をはじめとする周辺産業も活況を呈しており、クリーンルーム環境で使用できるロボット、すなわちクリーンロボットにも注目が集まっている。

累計1万台を数えるクリーンロボット

 膨大なプロセスを経る半導体製造工程では、数多くのクリーンロボットが稼働している。作業の自動化や効率化に加えて、清浄度の低下を招く恐れのある人の介在を減らすことが主な目的だ。

 ウエハーを一枚ずつ移す水平型搬送ロボット、工程間でFOUP(Front-Opening Unified Pod)を搬送するOHT(天井走行式搬送システム)、完成品や資材などを搬送するAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行型ロボット)がその代表例である。

 その中で、垂直多関節ロボットも導入されている。そのメリットは、汎用性や自由度の高さといえるだろう。垂直方向の搬送や、FOUPやウエハーの姿勢転換など立体的な動作も可能となっており、設置に当たっては厳密な水平出しは不要だ。ラインのレイアウト変更にも柔軟に対応できる。装着するハンド次第でさまざまな用途に展開でき、ウエハーやFOUPのほか、レチクルやSMIF(Standard Mechanical Interface)ポッドなども扱うことができる。

三菱電機の千波氏 三菱電機の千波氏

 半導体製造工程向けに垂直多関節のクリーンロボットを提供しているのが三菱電機だ。30年以上にわたってクリーンロボットを手掛けてきた。三菱電機のクリーンロボットは高精度/低振動搬送に強みを持ち、「クリーンロボットの累計出荷台数は2025年末時点で1万台を超えています」と、三菱電機 名古屋製作所 ロボット製造部長の千波保彦氏は述べる。

 現在は「MELFA RV-FR」シリーズとして、可搬質量最大3kg(定格2kg)[※1]のRV-2FR/2FRL、最大4kg(定格4kg)のRV-4FR/4FRL、最大7kg(定格7kg)のRV-7FR/7FRL/7FRLL、最大13kg(定格12kg)のRV-13FR/13FRL、最大20kg(定格15kg)のRV-20FR、最大35kg(定格35kg)のRV-35FR、最大50kg(定格50kg)のRV-50FR、最大80kg(定格80kg)のRV-80FRをラインアップしている。

 ほぼ全てのモデルがISOクラス3[※2]に対応しており、大気圧環境下のクラス3までのクリーンルームに設置可能だ。

※1 最大可搬質量はメカニカルインタフェースが下向き(鉛直±10度)に制限されているとき
※2 クリーンルーム内に0.3m/sのダウンフローがあり、かつ、ベース後部からロボット内部を負圧吸引した場合

最大可搬質量20kgのロングリーチモデルを投入した狙い

「RV-20FRL」提供:三菱電機 「RV-20FRL」提供:三菱電機

 同社が2025年12月にラインアップに追加した新モデルが、RV-20FR(可搬重量20kg)をロングリーチ化した「RV-20FRL」である。

 「垂直20kgタイプでもロングリーチタイプが欲しいという装置メーカーのお客さまのニーズに応えて開発したモデルで、13kg可搬のロングリーチタイプであるRV-13FRLと同じリーチ半径1388mmを実現しました」と、三菱電機 名古屋製作所 ロボット製造部 ロボットテクニカルセンター長の小山篤史氏は説明する。

 RV-20FRLの特徴の1つがコンパクトさだ(図1)。例えば、全高(第3軸の頂点部)は1143mmに抑えられている。また、本体質量は130kgで、同じ可搬重量20kgクラスのロボットの中ではかなり軽量な部類に入る。アーム剛性の向上のほか、モータ、減速機、配線などの最適化によって小型化と軽量化を実現したという。

 「一般的な20kgタイプの垂直多関節に比べて、全高は550mmほど低く、本体質量は100kgほど軽いのが特徴です。ロングリーチではありますが、アーム形状の工夫などによって台座近くまで可動範囲を確保していますので、装置間や工程間が狭くスペースが限られているところにも容易に導入できます」と小山氏は説明する。

三菱電機の小山氏 三菱電機の小山氏

 近年、半導体業界では生産性の向上のため、ウエハーの大型化などが進んでいる。その中で、半導体製造装置メーカーとしてはより可搬重量の大きく、なおかつ、設計工数を削減するため従来使用しているロボットと同じサイズ感のロボットを必要としている。

 RV-20FRLは各部のサイズ、本体質量およびアームの動作範囲は13kgタイプのRV-13FRLと基本的に互換性があるため、RV-13FRLで構築した装置レイアウトを大きく変更することなくアップグレードできる。

 RV-13FRLに比べたRV-20FRLのメリットは、なんといっても搬送可能な対象物の範囲が広がることだ。可搬質量は、RV-13FRLは最大13kg、定格12kgに対して、RV-20FRLは最大20kg、定格15kgである。

図1 ロングリーチタイプの垂直多関節クリーンロボット「RV-20FRL」。最大可搬質量は20kgである。全高(第3軸の頂点部)1143mm、本体質量130kgと、業界最小クラスを実現した 提供:三菱電機 図1 ロングリーチタイプの垂直多関節クリーンロボット「RV-20FRL」。最大可搬質量は20kgである。全高(第3軸の頂点部)1143mm、本体質量130kgと、業界最小クラスを実現した[クリックで拡大]提供:三菱電機

 RV-20FRLであれば、径300mmのシリコンウエハーを満載したFOUPを斜め持ちしても十分な余裕が得られる。また、比重の大きいSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)ウエハーや質量のあるガラス基板(インターポーザ)などのハンドリングにも対応できる。

 振動や軌跡精度に影響を与える許容モーメントと許容イナーシャの点でも優れている。例えば第4軸(J4)と第5軸(J5)の許容モーメントはRV-13FRLの19.3N・mに対してRV-20FRLは49N・m、許容イナーシャはRV-13FRLの0.47kg・m2に対してRV-20FRLは1.4kg・m2とそれぞれ強化されていて、クリアランスの小さいFOUPドアやロードポートへも高速かつ高精度に搬送できる。

設計の工夫と出荷前の全数試験でISOクラス3を保証

 次に、MELFA RV-FRシリーズの各垂直多関節ロボットの特徴を説明しよう。

 三菱電機では顧客のニーズに応じ、IP40を標準に、IP67(オイルミスト保護)、防錆処理、あるいはISOクラス3(ISO 14644-1)などのカスタマイズに応じている。このうちISOクラス3の実現に当たっては、関節部をラビリンス構造としてグリスの蒸散を防止。また、カバー取り付け面には特殊シール材を採用した。さらにロボット表面が擦れた場合にも発塵(じん)しないように、外装を平滑化してから塗装するクリーン塗装を施している。

 ISOクラス3仕様の全てのロボットは、同社工場内に設けたクリーンブースにて全数検査している。製品であるロボットがクラス3の基準を満たしているかを正確に測定するためには、それよりも清浄度の高い環境でなければ正しく測ることはできない。

 クリーン度の検査は自動化されている。クリーンブース内でロボットを作動させながら、同社の協働ロボットがパーティクルカウンターを各関節部に当てて、規定以上の発塵がないことを確認する。小山氏は「こうした取り組みを通して、しっかりとクリーン度を保証したロボットを、お客さまに提供できます」と強調する。

工場内に設けられた相当のクリーンブースで行う出荷前全数検査の様子[クリックで再生]

 高速高精度を実現する「MELFA High Drive」に対応している機種もある。MELFA High Driveは、制御アルゴリズムの改良によって軌跡精度を最大64%向上する技術だ。アームの移動速度を落とすことなく正確な位置決めと軌跡が得られるため、狭小な半導体製造装置内での搬送作業自動化を最適化できる。RV-20FRLに関しては、現状はMELFA High Driveに対応していないが、今後の追加が検討されている。

総合FAメーカーとしてトータルなソリューション提供

 1万台を超える出荷実績を誇る同社の垂直多関節クリーンロボットは、半導体製造のさまざまな工程に導入されてきた。装置間のFOUP搬送(図2)のような汎用的な使い方のほかに、ハンド部に防錆対策を施した専用仕様品が研磨工程でのウエハー搬送に使われている事例もあるという。

 なお、同社は水平多関節型ロボット「MELFA RH-FRHシリーズ」も取りそろえている。最大可搬質量は3〜20kgだ。垂直多関節のMELFA RV-FRシリーズと合わせて、ニーズに応じて選択できる。

図2 三菱電機の垂直多関節クリーンロボットで構成したFOUP搬送システムの導入事例。幅1600mm×奥行2650mm×高さ2350mmに収められている 図2 三菱電機の垂直多関節クリーンロボットで構成したFOUP搬送システムの導入事例。幅1600mm×奥行2650mm×高さ2350mmに収められている[クリックで拡大]提供:三菱電機

 三菱電機はシーケンサやサーボシステムも提供しているため、他の設備機器との協調制御や同期制御にも最適だ。FA統合プラットフォーム「iQ Platform」によって高速なデータ通信や高精度なモーション制御が実現される。

 小山氏は次のように述べる。「高度な制御技術やロボット技術が三菱電機の強みです。今回ご紹介したロングリーチのRV-20FRLをはじめとする垂直多関節のクリーンロボットの提供を通じて、半導体製造や関連装置に関わるお客さまの生産性向上に寄与したいと考えています」。

 千波氏は「お客さまが抱える現場の悩みや課題をヒアリングして製品開発に反映してきました。今後もそうした活動を続けながら、総合FAメーカーとしてのトータルなソリューション提供に努めるとともに、今後はデータを活用したソリューションにも取り組んでいきたいと考えています」と展望する。

 国内の半導体産業は活況を呈している。製造装置の設計においては、自由度の高い垂直多関節のクリーンロボットも選択肢の1つとして、さらなる自動化や効率化に取り組んでいただきたい。

左から三菱電機の千波氏と小山氏 左から三菱電機の千波氏と小山氏

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年3月8日