製造業を中心に企業のエッジAI導入を長年にわたって支援してきた東京エレクトロンデバイス。インテルのパートナーとして、同社のプロセッサー製品とエッジ戦略を支える「オープン・エッジ・プラットフォーム」を活用しながら現場に即した課題解決に努めている。インテルのエッジAI戦略と東京エレクトロンデバイスの取り組みを紹介する。
半導体やITの進化はさまざまな恩恵を生活や社会にもたらしている。製造業における生産性や品質の向上、農業におけるデータに基づいた施肥や収穫の管理、医療における画像診断の高精度化、電力インフラにおける送配電網の運用最適化など、分野を問わずに変革が進んでいるのもそうした技術のおかげだ。
鍵を握っているのがエッジ領域の進化である。センシング、信号処理、リアルタイム性、コネクティビティなどの機能や性能の向上によって、サーバーやクラウドにデータを送ることなくエッジ側でさまざまな処理が実現できるようになってきた。近年では、エッジ部分にAI(人工知能)機能を持たせたいわゆる「エッジAI」の実用化も始まっている。
一方で、エッジ領域には幾つかの課題もある。その一つが、個別のアプリケーションに最適化されることが多く、ユースケースの横展開が難しいことだ。また、AI機能を追加する際には、既存のワークフローやワークロードとの共存を図っていく必要がある。企業はこうした課題を理解したうえで活用を進めていく必要がある。
このエッジ領域において長年にわたって技術の進化をけん引してきたのがインテルである。
エッジ技術の展示会「EdgeTech+ 2025」(2025年11月19〜21日、パシフィコ横浜)の基調講演に登壇したインテル コーポレーション インダストリアル & ロボティクス部門 バイス・プレジデント兼 ジェネラル・マネージャーのジョン・ヒーリー氏は「インテルはエッジ技術を活用しながら顧客課題の解決に長年にわたって取り組んできました。4000社ものパートナーとエッジのエコシステムを構築するとともに、これまでに10万種類以上の製品をパートナーとともに市場に投入してきました」と、同社の取り組みの一端を説明した。
インテル コーポレーション インダストリアル & ロボティクス部門 バイス・プレジデント兼 ジェネラル・マネージャーのジョン・ヒーリー氏による「EdgeTech+ 2025」の基調講演の様子[クリックで拡大]そのインテルが2025年1月にリリースしたのが、業界別ユースケースに最適化したエッジ向けオープンソース基盤の「オープン・エッジ・プラットフォーム」である。
都市インフラ、製造業、小売およびロボットを対象にしたAIリファレンスアプリケーション「エッジAIスイート」の他、コンピューター・ビジョンの開発を促進する「インテル(R) Geti(TM) プラットフォーム」、これまでの画像AIから拡張して言語モデルなどの最適化機能も備えた「OpenVINO(TM) ツールキット」、エッジ管理機能フレームワークおよびエッジマイクロバイザー・ツールキットなどで構成される。これらはGitHubで公開されていて、誰でも無償で最新技術を利用できる。
オープン・エッジ・プラットフォームで開発したAIアプリケーションは、エントリークラスから高性能な計算基盤までインテルがスケーラブルに展開する幅広いプロセッサー製品に簡単に実装できる。最適な製品を選ぶことで、AIアプリケーション成果や性能を最大化しながらTCO(総所有コスト)を抑えられることもインテルの強みといえるだろう。
ヒーリー氏は「オープン・エッジ・プラットフォームによるアプローチはエッジAIの導入を加速する取り組みです。パートナーとのエコシステムを通じて、未来を一緒に作り上げていきましょう」と聴講者に呼びかけて講演を終えた。
これまでインテルが提供するAI関連の開発ツールで広く知られていたのはOpenVINO(TM) ツールキットだろう。2018年5月に初めて発表されたときにはコンピューター・ビジョン開発ソフトウェアに位置付けられていたが、その後機能を拡張して現在はエッジAIに用いられるAIモデルのほとんどをカバーするようになっている。
オープン・エッジ・プラットフォームは、無償で展開してきたOpenVINO(TM) ツールキットの活動をさらに幅広いエコシステムに向けて広げるものだ。エッジAIスイートから提供される、業界特化型のリファレンスアプリケーションやサンプルコード、ベンチマークなどAIシステムの構築を加速するためのツール群を使えば、極めて手軽にエッジAIのアプリケーションを試すことができる。より最適なAIモデルが必要な場合には、高機能のコンピューター・ビジョンAIモデル学習ツールであるインテル(R) Geti(TM) プラットフォームや先述のOpenVINO(TM) ツールキットなどから成るエッジAIライブラリーを活用できる。エッジAIを実装した機器の管理では、企業向けPCを管理で定評のある統合型の「Intel vPro(R) プラットフォーム」を活用したエッジ管理フレームワークが提供される。
そして、これらのエッジAIの開発から展開までを支えるオープン・エッジ・プラットフォームは、OpenVINO(TM) ツールキットと同様にオープンソースで提供されることも大きなポイントだろう。
このようにエッジAIへの注力を鮮明にするインテルとともに、製造業を中心とするさまざまな産業のAI活用を支援してきたのが東京エレクトロンデバイスである。
同社 EC BU クラウドIoTカンパニー IAソリューション部 部長の広中誠氏は「技術商社である当社は、インテルのソリューションを提供することはもちろん、これまで手掛けてきたエッジAIの構築経験を生かして、ユースケースの検討から学習モデルの選定、推論ソフトウェアの開発サポートなどお客さまの視点に立った提案に努めています」と訴求する。
東京エレクトロンデバイス EC BU クラウドIoTカンパニー IAソリューション部 部長の広中誠氏。「EdgeTech+ 2025」のインテルブースでエッジAIを活用したデモンストレーション展示を行った[クリックで拡大]ITシステムへの活用が進むAIだが製造業向けにそのまま適用できないことも多い。例えば、工場で用いられるネットワークは一般にインターネットと切り離されているためクラウドへのアクセスが難しく、クラウドネイティブのようなアーキテクチャが使えない。そうした製造業ならではの制約を踏まえた上で、進化のスピードの速いAIの世界とつなぐのが東京エレクトロンデバイスの役割ともいえるだろう。
広中氏は「インテルがオープンソースで展開するオープン・エッジ・プラットフォームは、AIアプリケーションを効率的に実装していく上で大いに役立ちます。また、エッジAIを実装するためのプロセッサー製品を幅広くそろえていることもインテルの強みですが、2026年には、さらにAI処理性能を高めた次世代プロセッサーである『Panther Lake(開発コード名)』も投入されます。オープン・エッジ・プラットフォームとの組み合わせにより、エッジAI活用を広める大きなブレークスルーになると期待しています」と述べる。
ここからは、東京エレクトロンデバイスがEdgeTech+ 2025のインテルブースで披露したエッジAIのユースケースのデモ展示を紹介しよう。
1つ目は、「もう外付けGPUに頼らない、CPU推論パフォーマンスの最適化例」と題した比較デモである。実装先のプロセッサー製品の機能に合わせたAIモデルの最適化が可能なOpenVINO(TM) ツールキットの活用やアルゴリズムの差し替えによって、AIモデルの推論性能を10倍以上に高められることを示した。
インテルのプロセッサー製品はCPUに加えて内蔵GPUを持ち、近年の製品はAI処理に特化した内蔵NPUも備えている。これらをフル活用することで、高価なディスクリートGPUなどを用いることなく高い水準のエッジAI処理性能を発揮できる。
デモではまず、物体検出とトラッキングのアルゴリズムにPyTorchベースのYOLO11nを用いる状態を示した。この場合、CPUのみでの処理となり映像認識性能は4fpsにとどまる。次に、YOLO11nをOpenVINO(TM) ツールキットでINT8(8ビット整数)に軽量化すると、映像認識性能がCPUのみで20fps、内蔵NPUで21fps、内蔵GPUでは40fpsまで向上する。
さらにトラッキングのアルゴリズムをより軽量なByteTrackに差し替えると、CPUで40fps、内蔵NPUで42fps、内蔵GPUで68fpsとさらなる性能向上が可能になることを明らかにした。
2つ目は「生産ラインの高速自動選別を支える画像検査向けエッジAIユースケース」のデモだ。
格子の上を滑り落ちる直径数cmほどのワークを撮影し、良品と認識した場合に規定のタイミングでバルブ(アクチュエータ)を作動させてエアーで飛ばして選別するデモである。
このデモでは、ハードウェアとして最新のインテル製プロセッサーと「インテル(R) Arc(TM) A380 グラフィックス・カード」を搭載するタワー型PCをエッジAIデバイスとして用いている。インテル(R) Arc(TM) グラフィックスの高いAI処理性能により、ワークを良品認識するための推論時間は約6msと高速で、最新のインテル製プロセッサーの効果もあって、画像キャプチャーからI/O処理までトータルの遅延時間は20ms以下と極めて短い。
また、このデモでは表と裏を2台のカメラを用いてキャプチャーすることで検出精度を向上しつつ、エアーノズルの増設によりリアルタイム性を損なうことなく同時検出数を増やすことも可能になるという。
他にも、最新のインテルのプロセッサー製品を用いて生成AIモデルであるVLM(視覚言語モデル)をエッジに組み込む「映像を“理解”する、映像監視向けエッジAIユースケース」や、カメラ映像から物体を識別し、卓上ロボットによって把持して所定の容器に仕分ける「制御機器をAI化する産業分野向けエッジAIユースケース」のデモ展示も行った。
これらの展示デモからも分かる通り、東京エレクトロンデバイスはエッジAIの活用や導入においてさまざまな知見を有している。エッジAIの導入を検討しているのであれば、ぜひ同社に相談してほしい。
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提供:東京エレクトロン デバイス株式会社、インテル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年1月27日