人やモノの流れを可視化する現場3Dシミュレーション「FlexSim」 デジタルファクトリーで生産性はどう変わるのか生産性を20%以上向上させた事例も

多くの製造現場が、人手不足や技術継承の難しさに苦しんでいる。特に新たな製造ラインの構築や、既存ラインの改善点抽出などは、熟練技能者の知見が求められるものの技能者を十分確保するのが難しい。これらをカバーするために注目を集めているのが、データ駆動型のデジタルシミュレーションだ。製造現場の3Dシミュレーションはどのような効果をもたらしているのだろうか。

PR/MONOist
» 2025年10月30日 10時00分 公開
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進まぬ日本製造業のDX、5つの阻害要因とは

 製造現場の人手不足が深刻化する中、持続的に再現性のある形で競争力を確保するには、人手に頼らずに現状を客観的に把握し、改善策の効果を事前に検証できる仕組みが欠かせない。その鍵となるのが、データ駆動型のデジタルシミュレーションだ。

工場全体をデジタルデータで再現し、複数のシナリオを比較し、分析することで、定量的な根拠に基づいた意思決定が可能になる。さらに、熟練者の経験や暗黙知をシミュレーションに落とし込み、作業の流れや工程の最適化をデータとして残すことで、若手への教育や技術継承にも役立てられる。

 ただ、製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)は順調とはいえない状況だ。Autodesk(オートデスク)が毎年実施しているグローバル調査「デザインと創造の業界動向調査(State of Design & Make)」によるとDX推進を阻む5つの要因があるという。

 「1つ目がコストです。新しいツール導入には大きな投資が必要になります。2つ目が時間の確保が難しいということです。日々の業務に追われ、新しい取り組みに割く余裕がありません。3つ目が知識やスキルの問題です。デジタル技術に関する高度なスキルが求められると対応できる製造現場は非常に少なくなります。4つ目はツールの機能の問題です。製造現場で必要な機能が不足していたり、十分な効果が得られなかったりすることも多くあります。そして5つ目が、ワークフロー変更への抵抗感です。既存業務を変えたくないという層にどうアプローチするかも重要です」とオートデスク アカウント営業本部 ソリューションエンジニアの黒柳祐二氏は説明する。

 これらをクリアするためには「安価で導入しやすく、操作が容易で、現場に必要な機能を備えた」デジタルツールが欠かせない。その条件を満たし、製造現場の生産性向上に貢献するのが、オートデスクの3Dシミュレーションソフト「FlexSim(フレックスシム)」である。

人やモノの“流れ”を可視化する3Dシミュレーション「FlexSim」

 FlexSimは、生産ラインや工場内の人やモノの流れを3Dアニメーションで再現するシミュレーションソフトだ。工程や設備配置、作業員や搬送装置などの動きを可視化し、待機時間やスループットなどの指標をチャートで出力できる。これによりボトルネックの特定や最適レイアウトの検証が可能になる。新規工場の立ち上げから既存設備の増設・変更まで幅広く対応し、計画段階で複数の選択肢を効率的に比較できる点が特徴だ。

photo FlexSimの概要[クリックで拡大] 提供:オートデスク

 FlexSimには3つの強みがある。1つ目が直感的な操作性だ。標準ライブラリから工程や設備をドラッグ&ドロップするだけで、短時間でモデルを作成できる。ノーコードでフローを組み立てられるため、専門知識のない担当者でもすぐに運用できる。また、ダッシュボードも標準ライブラリを使って簡単に作成でき、シンプルなモデルであれば作成からグラフ化まで最短で5分ほどで完結する。一方で、作業員の習熟度や設備の特殊挙動を設定する高度なカスタマイズも可能で、初心者から熟練者まで幅広く利用できる。

 2つ目が、大規模データを軽快に処理できる点だ。イベント駆動型の手法を採用しており、工程数や設備数が膨大でも効率的に計算できる。複雑なモデルでも高速に動作し、実用性を確保している。さらに、作業員数や設備条件など複数のシナリオを設定してシミュレーションできる「Experimenter」機能を備え、最適な運用条件を効率的に導き出せる。

 3つ目が、他のオートデスク製品とのデータ共有や円滑な連携だ。FlexSimには「AutoCAD」で作成したDWGデータを下書きとして取り込める。また、「Autodesk Inventor」や「Autodesk Revit」のデータをそのまま取り込むことも可能だ。さらに、最新バージョン「FlexSim 2025 Update 2」では「Autodesk Factory Design Utilities(FDU)」との連携が強化されている。

 この点について黒柳氏は「FDUとの連携により、設計変更や属性情報を各ソフト間でシームレスに共有できるようになりました。設計データをそのままシミュレーションに活用し、さらに結果を設計へフィードバックできるのはFlexSimならではの特徴です。この2D(設計)、3D(設計詳細)、シミュレーション(検証)を一連の流れとして統合できることが、他社にはない大きな強みです」と強調する。

FlexSimの役割[クリックで動画再生] 提供:オートデスク

現場を変える、多彩なFlexSimの活用例

 FlexSimの活用シーンは幅広い。新規工場や生産ラインの立ち上げ、既存設備の変更といった場面では、シミュレーションによりボトルネック解消やプロセス最適化を実現し、効率的な生産ライン構築や工程改善を支援する。多品種少量生産や需要変動にも対応し、人員配置や工程の柔軟な変更に貢献する。現場で発生する生産停止や欠員などの突発的な事象にも即応でき、代替策を迅速に検討できるため、被害やダウンタイムを最小限に抑えられる。

 また、コンベヤーやAGVなど新設備の導入提案にも有効で、データに基づいたエビデンスを提示できる。工程全体を3Dで可視化することで、図面や表では伝わりにくいイメージを直感的に共有でき、説得力のあるプレゼン資料作成にも役立つ。さらに、熟練者の知見をモデル化し、シミュレーションに組み込むことで、技術継承の支援にもつながる。

 導入事例も世界中で数多く存在する。例えば、米国のクレーンシステムのメーカーであるSKARNESでは、既存コンベヤーの混雑解消と新規導入の有用性を検証し、ピッキング処理能力を1時間当たり70パレットから100パレットに改善し、スループットを43%高めることに成功したという。

 また米国の電子部品メーカーであるMolexでは、人員削減とAGV導入の有効性の検証でFlexSimを導入した。作業員を14人から10人に減らしつつ、適切な仕様のAGV2台を導入することでスループットを20%向上したという。

 導入企業の多くは製造業と物流業だが、データセンターや病院、空港など非製造分野でも活用されている。オートデスク テクニカルソリューションマネージャーのジョン・ウォンジン氏は「FlexSimのユニークな点は、人やモノの“流れ”さえあれば何でもシミュレーションできることです。また、現実の不確実性を再現できる柔軟さを備えており、作業員の動作時間のばらつきなど、実際の現場で起こりうるランダムな要素をシミュレーションに組み込むことができます。これにより、生産工程が常に一定時間で進むのではなく、現実に近い変動を伴うシナリオを検証することが可能です」と語る。

photo FlexSimにおいて複数シナリオのシミュレーションを行えるExperimenter[クリックで拡大] 提供:オートデスク

導入から運用まで寄り添う「Digital Factory FlexSim支援サービス」

 このFlexSimの導入を支援する「Digital Factory FlexSim支援サービス」を展開しているのが応用技術だ。1984年に設立された応用技術は「課題を価値に変えるイノベーションカンパニー」を理念に掲げ、製造業や建設業を中心にソリューション事業を展開している。オートデスクとは40年以上にわたり強固なパートナーシップを築き、国内に3社のみの「プラチナパートナー」認定や国内初の「Autodesk Platform Services 認定パートナー」などの実績を持つ。

 応用技術の強みは、単なるソフトの導入にとどまらず、現場データの収集からモデル化、改善案の検証、運用定着や効果検証までを一貫して支援できる体制にある。応用技術 DX事業統括 コンサルティングサービスグループ シニアマネージャーの梅西正訓氏は「われわれはIT支援企業としての強みを持ち、特にオートデスク製品のカスタマイズで力を発揮してきました。長年のパートナーシップにより、オートデスク製品やITでのテクノロジートレンド、製造業や建設業のワークフローを深く理解していることが強みです」と語る。

photo 応用技術のDigital Factory FlexSim支援サービスの全体像[クリックで拡大] 提供:応用技術

 これらの強みを生かし「Digital Factory FlexSim支援サービス」では具体的に、現場調査を通じてモデル要件を定義し、装置や人員配置、生産ラインの関係を可視化して課題を抽出する。さらに運用段階でもデータを収集し、改善を繰り返すことで継続的な最適化を実現する。梅西氏は「大事なのは、まず“現実(Real)”をきちんと知ることです。実際の作業を数値で把握し、そのうえで“最低限必要な機能(Must)”と“本当にありたい姿(Will)”を再検討する。この3つのステップを考えていくことが必要です」と訴えている。

 より精緻な現場データの取得については、応用技術の親会社であるトランスコスモスとの連携を生かし、同社の持つ工場での経験やノウハウを生かす。トランスコスモスには工場経験やシミュレーションのノウハウを持つ人材が在籍しており、その知見を生かすことで作業時間や工程の正確なデータ化を進める。

“真の”デジタルファクトリー実現へ

 今後、オートデスクではさらに製造と建築の知見を生かしながら「デジタルファクトリーの実現」に注力する方針だ。ジョン氏は「応用技術は、製造だけでなく、建築分野で高い専門性をもった数少ないパートナーの一つです。そのため、FlexSimを起点にBIM(Building Information Modeling)へ拡張し、設計、施工、運用を統合して工場の資産価値を最大化することに取り組んでいます。中国や韓国の企業は非常に早く製品開発を行い、短い期間で製品投入を進められるように自己変革を重ねています。この差を埋めるには、工場を資産としてデジタル技術を適用することが不可欠です。デジタルファクトリーの実現を後押しすることで、工場という資産価値の最大化を提案していきたいです」と語っている。

photo デジタルファクトリーのイメージ図[クリックで拡大] 提供:応用技術

 一方で応用技術は、新たな取り組みを次々と展開するオートデスク製品を、現場で“使い続けてもらう”ための支援を着実に継続していく姿勢だ。

 「オートデスク製品はサブスクリプション型が中心であり、手軽にお試しをしたり、必要なときにだけ利用したりすることもできます。当社では、ご利用いただいたあとも定着、活用していただけるようなサポートを目指しています。例えば、カスタマイズでオペレーションを簡素化したり、定型業務を自動化したり。そうした工夫を加えることで、無理なく一歩一歩使いこなしていけるよう伴走していきたい」と梅西氏は述べている。

 人やモノの流れをデータに基づいて“見える化”し、確かな根拠に基づいた改善を可能にするFlexSimは、現場のDXを着実に前進させる有力な選択肢となるはずだ。

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提供:応用技術株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年11月29日