国産CAE「Femtet」で検証 ワークステーションの違いで解析時間はどう変わる?検証レポート

CAEを活用した解析業務をストレスなく行うには、必要な性能を備えたワークステーションの選定が欠かせない。だが、数多くの製品から最適な1台を見極めるのは難しい。設計環境に適したワークステーション選びのヒントとして、ムラタソフトウェアの「Femtet」を用い、デル・テクノロジーズの複数機種で性能を比較検証した結果を紹介する。

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» 2025年10月16日 10時00分 公開
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 CAEを最大限に活用するには、高精度な解析を短時間で実行できる環境が欠かせない。設計段階で製品の性能や耐久性を事前に確認できれば、試作回数を減らし、開発期間を短縮するとともに品質も高められる。その鍵を握るのが、解析を支えるワークステーションの性能だ。ここがボトルネックになると、どれほど優れたCAEツールを導入しても本来の力を発揮できず、製品開発全体の効率を大きく損なうことになる。

 しかし、最適なハードウェアの選定は容易ではない。市場にはローエンドからハイエンドまで多様な製品が存在し、性能も価格も千差万別だ。最高スペックを選べば解析速度は確実に向上するが、その分コストも膨らむ。限られた予算で最大限の効果を得るには、業務内容や使用するCAEツールとのバランスを踏まえた選択が重要となる。

 そこで、設計者CAEツールとして広く利用されているムラタソフトウェアの「Femtet」を用い、デル・テクノロジーズのワークステーション ――ローエンドからハイエンドまでの複数機種(Intel製CPUおよびAMD製CPU搭載機種含む)―― のパフォーマンス検証を実施した。本稿ではその結果を紹介し、設計現場における最適なワークステーション選定のヒントを提示する。

約40年の実績を重ねてきた設計者に優しいCAE「Femtet」

 Femtetは、大手電子部品メーカーである村田製作所が約40年前から開発と改良を重ねてきた有限要素法解析シミュレーションソフトウェアだ。もともとは社内エンジニアが日々の業務で使いやすいように設計され、社内ニーズを満たすために進化を続けてきた。2008年に外販を開始し、そのタイミングで販売と技術サポートを担うムラタソフトウェアが設立された。現在は同社がFemtetの提供を一手に担い、設計現場におけるCAE活用を幅広く支えている。

 ムラタソフトウェア 営業企画部 部長の原孝一氏は、Femtetのコンセプトについて次のように語る。

「Femtetは、モデリングからメッシュ生成、解析、結果表示までを“電卓”感覚で簡単に実行できるのが特長です。Femtetを使用するメリットは、設計者自身が解析を行うことで、その結果をすぐに設計へ反映できることです」

ムラタソフトウェアのCAEソフトウェア「Femtet」の画面イメージ 図1 ムラタソフトウェアのCAEソフトウェア「Femtet」の画面イメージ[クリックで拡大] 提供:ムラタソフトウェア
ムラタソフトウェア 営業企画部 部長の原孝一氏 ムラタソフトウェア 営業企画部 部長の原孝一氏

 Femtetの強みは3つに集約できる。1つ目は「簡単操作」だ。解析ツールにありがちな複雑な設定を極力削ぎ落とし、解析を専門としない設計者でも短期間で操作を習得できる仕様とした。これにより、ツールの習得に費やす時間を最小限に抑え、解析結果の理解や設計への応用といった本来の業務に集中できる。日々の業務で「すぐに使いこなせる」という特長は、時間に追われる設計現場において大きな価値を発揮する。

 2つ目は「多分野」への対応だ。Femtetは、応力、熱伝導、流体、音波、電磁波、磁場、電場、圧電という8つの分野を1つのプラットフォームでカバーし、分野をまたいだ連成解析にも対応する。Femtetを活用すれば、設計者自身が複数分野を横断して解析できるため、解析専任者とのやりとりの手間を削減し、開発効率を高めることが可能だ。

 そして、3つ目が「低価格」である。高額なハイエンドCAEツールと比べて非常に低コストで利用できるため、中小規模の企業でも導入しやすい。8分野の解析機能と連成解析を含む基本パックに加え、より高度な解析ニーズに応える拡張オプションもそろえており、多様な使い方にも柔軟に対応できる。

 これら3つの特長が高く評価され、Femtetは国内外で急速にユーザーを拡大している。ムラタソフトウェア 営業企画部 販売推進課 チームリーダーの伊勢智之氏は、「電子部品業界に加え、自動車業界や大学、研究機関などでも採用が広がり、累計導入実績は1200社を超えました」と説明する。

 このように国内外でFemtetを展開する中、「CPUは何を選ぶべきか」「CPUの違いによって解析時間にどの程度差が出るのか」「GPUはどのクラスが適切か」といった、ハードウェアスペックに関する質問がしばしば寄せられるという。

 そこで今回、こうした疑問に答える指針を示すべく、ムラタソフトウェアはデル・テクノロジーズと協力し、複数のワークステーションを対象にFemtetを用いた比較検証を実施。その結果を公開した。

「Femtet」で新旧ワークステーションを徹底比較

 今回の検証では、デル・テクノロジーズが提供する最新ワークステーション3機種(図2)と、旧モデル1機種の計4台を使用した。それぞれの仕様は表1表2の通りである。

新機種としてムラタソフトウェアが検証したワークステーション3モデル。左から「Dell Precision 7875 Tower」「Dell Precision 7960 Tower」「Dell Precision 3680 Tower」 図2 新機種としてムラタソフトウェアが検証したワークステーション3モデル。左から「Dell Precision 7875 Tower」「Dell Precision 7960 Tower」「Dell Precision 3680 Tower」[クリックで拡大] 提供:デル・テクノロジーズ
製品名 Dell Precision 7875 Tower Dell Precision 7960 Tower Dell Precision 3680 Tower
CPU AMD Ryzen Threadripper Pro 7965WX
(24コア/48スレッド、350W)
Intel Xeon W7-3545
(24コア/48スレッド、310W)
Intel Core i7-14700K
(20コア/28スレッド)
GPU NVIDIA RTX 2000 Ada NVIDIA RTX 2000 Ada NVIDIA RTX A1000
メモリ 512GB(64GB×8) 512GB(64GB×8) 64GB(32GB×2)
発売時期 2023年Q4 2023年Q2 2024年Q1
表1 【新機種】の主なスペック

製品名 Dell Precision 7920 Tower
CPU Intel Xeon Gold 6128×2基
(24コア/48スレッド)
GPU NVIDIA Quadro RTX 5000
メモリ 256GB
発売時期 2017年Q3
表2 【旧機種】の主なスペック

 以下、日常業務で頻繁に行われる「応力解析」「熱伝導解析」「流体解析」の3つの分野を対象とした検証内容を紹介する。

 解析モデルは、設計初期の簡易検討と試作前の本格解析を想定し、規模の異なる2パターンを用意した。具体的には、応力解析は100万要素と400万要素、熱伝導解析は100万要素と600万要素、流体解析は40万要素と190万要素という設定だ。計算時間は相対値で比較し、各ワークステーションのパフォーマンスを分析した。

 まず、新モデル同士を比較した結果を見てみよう(図3)。「AMD Ryzen Threadripper Pro 7965WX」(24コア/48スレッド、ベースクロック:4.20GHz)を搭載する「Dell Precision 7875 Tower」と、「Intel Xeon W7-3545」(24コア/48スレッド、ベースクロック:2.70GHz)を搭載する「Dell Precision 7960 Tower」では、AMDが優位という結果となった。この2モデルは、CPUコア数/GPU/メモリを同一条件にして比較した。

「Dell Precision 7875 Tower」(CPU:AMD Ryzen Threadripper Pro 7965WX)と「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545)の検証結果 図3 「Dell Precision 7875 Tower」(CPU:AMD Ryzen Threadripper Pro 7965WX)と「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545)の検証結果[クリックで拡大] 提供:ムラタソフトウェア
ムラタソフトウェア 営業企画部 販売推進課 チームリーダーの伊勢智之氏 ムラタソフトウェア 営業企画部 販売推進課 チームリーダーの伊勢智之氏

「今回のベンチマークテストでは、全体的にRyzen Threadripper ProがIntel Xeonを約20%上回りました。特に要素数が増えるほど、また応力解析や流体解析といった計算負荷の大きい分野で、解析時間の短縮効果が顕著に表れました」(伊勢氏)

 次に、新旧Xeonの比較結果だ(図4)。新モデルのDell Precision 7960 Towerと、「Intel Xeon Gold 6128」(24コア/48スレッド、ベースクロック:3.40GHz)を搭載した旧モデル「Dell Precision 7920 Tower」を比較した結果、当然ながら最新世代Xeonが圧倒的な性能を発揮した。特に流体解析では、CPU2基構成の旧モデルに対して、CPU1基構成の新モデルが計算時間を半分以下に短縮している。

「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545)と「Dell Precision 7920 Tower」(CPU:Intel Xeon Gold 6128×2基)の検証結果 図4 「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545)と「Dell Precision 7920 Tower」(CPU:Intel Xeon Gold 6128×2基)の検証結果[クリックで拡大] 提供:ムラタソフトウェア

 一方で、意外な結果が得られたのが、Xeon搭載の新モデルであるDell Precision 7960 Tower(メモリ:512GB)と、「Intel Core i7-14700K」(20コア/28スレッド、ベースクロック:3.40GHz)を搭載する新モデル「Dell Precision 3680 Tower」(メモリ:64GB)の比較である(図5)。

 大容量メモリを必要とする大規模解析ではXeonが優位となるものの、中規模程度の解析ではその差が想定以上に小さいことが分かった。伊勢氏は「Intel Core iシリーズでも最大192GBまでメモリを拡張できるモデルがあります。もしその容量で十分であれば、Xeon搭載機を複数年使い続けるよりも、最新のCore iシリーズ搭載機を毎年更新するという考え方も1つの選択肢になり得ると思います」と評価する。

「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545、メモリ:512GB)と「Dell Precision 3680 Tower」(CPU:Intel Core i7-14700K、メモリ:64GB)の検証結果 図5 「Dell Precision 7960 Tower」(CPU:Intel Xeon W7-3545、メモリ:512GB)と「Dell Precision 3680 Tower」(CPU:Intel Core i7-14700K、メモリ:64GB)の検証結果[クリックで拡大] 提供:ムラタソフトウェア

 実は、ムラタソフトウェアは今回の検証結果を踏まえ、デル・テクノロジーズの最新ワークステーション3機種を実際に購入し、技術サポート業務で活用している。原氏は「デル・テクノロジーズの豊富な知見により、検証をスムーズに進めることができました。今回の結果を踏まえ、新機種の導入を決断しました。Femtetの技術サポートでは、お客さまをいかにお待たせしないかが常に課題ですが、ワークステーションを刷新したことで対応スピードが格段に向上しました」と語る。

 以上、主にCPU性能に注目した検証結果をお届けしたが、モデルや解析結果の表示にはGPUパワーが必要となる。今回は「NVIDIA RTX 2000 Ada」および「NVIDIA RTX A1000」にて検証を行ったが、いずれもストレスなく操作することができた。

 コスト重視であればNVIDIA RTX A1000を、将来のシステム拡張に備えるならNVIDIA RTX 2000 Ada以上を視野に入れて選択するとよいだろう。最大で「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition」まで選ぶことができる。

広範なワークステーションをより選択しやすく

 デル・テクノロジーズは2025年1月以降に発売されるモデルから、製品ブランドを「Dell」「Dell Pro」「Dell Pro Max」という3つのカテゴリーに再編した。ワークステーションのPrecisionシリーズはDell Pro Maxに統合され、ユーザーが用途や業務負荷に応じて自然にステップアップできる製品体系となった。これにより、設計現場のエンジニアが自分の業務に適したマシンを直感的に選べるようになり、製品選定の迷いを大幅に軽減できる。

 注目したいのは、Dell Pro Maxに最新GPU「NVIDIA RTX PRO Blackwellシリーズ」を搭載できるモデルが含まれている点だ。AI(人工知能)処理や高度なビジュアライゼーションはもちろん、CAEの解析結果を3D表示する場面や、大規模なCADモデルをスムーズに操作する際にも、その圧倒的なパフォーマンスを発揮する。CADとCAEを両方使いこなす設計者にとって魅力的な環境といえるだろう。

 今回の検証結果を振り返り、原氏はCAEとワークステーションの重要性について次のように語る。

「近年、『フロントローディング』を掲げて設計品質や開発効率を高めようとする企業が増えています。しかし、これはあくまで“組織の論理”にすぎません。最終的な成果を左右するのは、現場で実務を担うエンジニア一人一人です。これからは、自分のアイデアを即座に形にし、それを解析/検証して提案する力がより一層求められます。CAEをエンジニア個人の価値を高めるためのツールとして積極的に活用していただきたいと考えています。そのためにも、CAEがストレスなく動作する高性能なワークステーションは不可欠です。デル・テクノロジーズの最新ワークステーションを用いた検証を通じて、その重要性をあらためて実感しました」

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