完成から40〜50年以上経過した国内の石油/化学プラントが、設備の高経年化や導入されたレガシーシステムへの対応という問題をDXで解消するケースが増えつつある。中には、HexagonのソリューションによりDXを実現し、大きな成果を挙げている石油/化学プラントがある。
国内の石油/化学プラントでは、運転/保全の現場で構造的な課題が山積しており、解決策としてデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められている。しかし、運転/保全現場のDXはスムーズに進んでいない。Hexagon ビジネスバリュー・コンサルタント プリセールスの仙 洋太郎氏は、その原因を次のように指摘する。
「日本では40〜50年にわたって稼働している石油/化学プラントが多く、数十年前に導入されたレガシーシステムからの脱却が困難な状況にあります。こういったプラントでは、熟練作業者の経験や勘、スキルに依存した運用が定着しているケースもあります。さらに、設計、運転、保全といった部門ごとにサイロ化されたシステムのデータ統合やビジネスプロセス全体の最適化が難しいだけでなく、IT(情報技術)とOT(制御技術)の双方を理解したデジタル人材不足といった問題も抱えており、目先の設備改修などに終始しています」
これらの課題を解消するために、円滑にプラントの運転/保全のDXが行えるソリューションが必要とされている。そのニーズに応えるのがHexagonだ。
仙氏は、「Hexagonでは、業務分析を通じて顧客の課題を客観的に洗い出し目標設定を共同で行い、スモールスタートで段階的にソリューションを導入するアプローチを採用しています。これにより、成功事例を積み重ねながらDXを推進します。国内の250以上の製造拠点、120以上の事業所で業務分析の実績があり、蓄積された知見を生かして、対象となる石油/化学プラントが運転/保全で抱える課題も提示できます。提供しているソリューションは、オンプレミス、クラウド、SaaSなど、多様な導入形態に対応可能です」と強みを話す。
同社は、石油/化学プラントの運転管理向けソリューション「j5 Operations Management Solution(j5)」や運転手順書ソリューション「AcceleratorKMS」を展開している。
j5は、日本の石油精製業界で85%以上、エチレンプラントでも約70%のシェアを誇り、国内の106事業所で導入されている。主な機能として、現場への運転指示やその実施状況の管理、シフト間の申し送りと引き継ぎ、連絡事項の共有をデジタル化するフレームワークを搭載。現場の巡回点検やパトロール、トラブル報告、設備/機器の不具合管理などをシステム化するアプリケーションも備えており、現場におけるコミュニケーションの円滑化/効率化やトラブルの未然防止に貢献する。
加えて、現場で利用してきた申請書やレポートをj5上で使えるツール「j5 IndustraForm」や、スマートフォンおよびタブレット端末でインストールできるアプリケーション「j5 Mobile」を活用することで、モバイル端末を介してオペレーターに対してリモートで指示を出し、リアルタイムな情報共有と作業の効率化を図れる。また、AcceleratorKMSと連携することで、現場の運転手順書も同モバイル端末上で閲覧、参照しながら作業を安全に進めることが可能だ。
AcceleratorKMSは、現場のベテランの知識やノウハウを手順書としてデジタル化し、共有することで、作業の属人化を防ぎ、熟練者の技能継承を支援する。これらにより、新人従業員のスムーズな作業習熟や高い業務品質を保てる。
主に、手順書を電子化する「コンポーネント・コンテンツ管理システム(CCMS)」、作業手順書のオーサリングから現場までの使用まで各フェーズで管理できる「作業手順ライフサイクル管理(PLMS)」などを備えている。AI(人工知能)のサポートにより、画像やテキストなどを組み合わせた手順書を作成できるオーサリング機能と運転員からのフィードバック機能も搭載。手順書の変更管理や承認フロー、改訂履歴の可視化にも応じ、マルチデバイス対応でモバイル端末でも使える。
化学品事業を展開するある素材メーカーではj5を導入することで、プラント運転管理業務の標準化/効率化を実現し労働生産性を高めるとともに、データに基づいた意思決定も行えるようになった。
具体的には、j5の状況管理機能を活用することで運転の指示や報告の抜け漏れを防止できる体制を構築した。「この素材メーカーでは、『j5 IndustraForm』を活用することで、紙ベースの帳票類を電子化し、電子ファイルへの転記作業も不要としました。j5 IndustraFormは、作業中に撮影した動画や写真を添付し、帳票類を電子化可能なため、現場作業の進捗を分かりやすく共有できるようにもなりました。これらの取り組みにより、申し送り事項の作成時間が短縮されました」(仙氏)。
j5を活用することで、運転現場の状況把握、ミーティング、申し送り事項の作成、運転指示の時間も短縮され、1つの製造課につき1日当たり5時間30分の作業時間を削減した。
このメーカーではj5導入以前、部署ごとに業務手順が存在し、属人的な管理体制のもと、データが統合管理されていなかった。そのため、プラントの運転に関するデータの収集や解析が困難で、経験や勘に頼った意思決定になっていた。この問題を解決するために、運転一括管理システムを構築するに至った。
仙氏は、「j5運転管理ソリューションは、製造部門に必要な運転や品質、設備の管理機能を統合するシステムです。このメーカーでは運転一括管理システムの根幹にj5を導入し、業務の標準化、効率化、他のシステムとの連携による一元化を実現しました」と述べた。
他の化学メーカーではj5を導入することで、それ以前と比べて、申し送り事項の記入で生じる時間を年間で2200時間、情報検索で発生する時間を年間600時間減らした。運転管理に関するデータの電子化も実現し、年間で1万5000枚の紙とプリンタのインク代を削減。さらに、運転現場の従業員が回覧情報や運転指示などを容易に確かめられるようした他、リモートワークに対応する環境を構築し、場所を選ばす運転状況を確認できるようになった。
「j5で構造化された運転データとプラントのヒストリアンデータ(圧力や温度などの時系列データ)をAIで分析し、異常の予兆を検知するという高度なデータ活用を行う化学メーカーも存在します」(仙氏)。
Hexagonは、石油/化学プラント向けの設備保全ソリューションとして、設備資産管理ソフトウェア「HxGN EAM」とアセットパフォーマンス管理ソフトウェア「HxGN APM」を提供している。
HxGN EAMは、SaaSで提供される真のマルチテナント・クラウド・ソリューションであり、設備の情報登録から予防保全計画、作業管理、コスト管理、保全評価まで、設備保全のPDCAサイクル全体を支援するソフトウェアだ。SaaSでありながら、コンフィギュレーションが容易で、ユーザビリティが高く、ネイティブモバイルにより、現場作業を強力にサポートする同ソフトウェアは、設備に関するあらゆる情報(仕様、保全履歴、コスト、作業指示書など)を一元的に管理でき、部門間の情報共有を円滑にするため、保全作業の効率化だけでなく、戦略的な意思決定や予算の管理にも生かせる。属人化した保全作業を標準タスク計画やチェックリストを用いてデジタル化することで、作業の標準化と技術伝承にも役立つ。
HxGN EAMでは、“Evergreen”というコンセプトの元、常に最新の機能を利用することが可能であるため、今後新たな技術が登場しても、そのメリットをすぐに享受できる。最新バージョン12.2では、HxGN EAMのための生成AI(HxGN Alix)やAcceleratorKMSやHxGN APMでのリスク評価機能(Asset Risk Analyzer)との連携機能が提供された。最新機能を利用することにより、DXプロジェクトを一過性のものではなく、継続的に遂行することが可能となる。
Hexagonのソリューションコンサルタント プリセールスの袴谷 悠矢氏は、国内で従来から広く利用されてきた設備管理台帳を主体としたシステムについて、「データの断絶とExcelなどでの別管理、部門間の情報共有、設備稼働状況や異常のリアルタイムでの把握、蓄積したデータの有効な利活用、拡張性などの課題が浮き彫りになってきており、これまで保全業務の最適化が困難となっていました」と触れた。
HxGN APMは、設備保全戦略とベストプラクティスの標準化により、リスクに基づく保全作業の実施、変化する運転状況と設備の健全性の早期把握を行うソフトウェアだ。同ソフトウェアは、使いやすく、実践的で、有効性が高いことを特徴としており、設備保全戦略を運用化する次世代のソフトウェアとして2024年に発表した。設備の稼働/故障履歴からリスクが高い設備を特定し、センサーで取得したデータから、対象設備の故障リスクを評価し定量化し、設備の健全性を監視することが可能である。
対象設備の保全や運用、故障防止の戦略構築も行える。設備の運用状況の変化に合わせて、保全の戦略を継続的に評価し、最適化する機能も備えている。対象設備の運転データやセンサーから得られた情報に基づく状態監視保全、ならびに、機械学習をはじめとするAIで分析し、将来の故障を予測する予知保全も可能だ。
HxGN APMが有する「アセットツインライブラリ」は、200種類以上の機器タイプに関する故障モード、分析、アクションが定義された保全戦略テンプレートであり、対象設備への保全戦略の展開や、独自の保全戦略の組み込みを容易に実行可能である。これまでのAPMソフトウェアでは非常に時間を要していた設備保全戦略の構築が短縮化されるため、すぐに効果を確認することができる。
袴谷氏は「石油/化学プラントはHxGN APMを導入することで、予期せぬ設備の故障を未然に防ぎ、計画外のダウンタイムを最小限に抑えられる。このような緊急保全費用の削減のみでなく、設備の状態に基づく保全活動の実施により、過剰な定期メンテナンスを減らせる」と効果を説明した。
また、Hexagonは、対象のプラントと設備の3Dモデルや点群データを活用し、リアルタイムでプラントの状態を可視化/管理できるデジタルツインを構築する技術も有している。「この技術で構築した対象プラントのデジタルツインと、HxGN EAMやHxGN APMを組み合わせて利用することで、配置された設備の位置や状況をより分かりやすく見える化できる」(袴谷氏)。
Hexagonは今後も、石油/化学プラントの課題を解消するために、DXを実現するソリューションを積極的に展開する。
石油/化学プラントのDXに向けた情報発信にも力を入れる。2025年10月15日には、東京都港区の品川ザ・グランドホールでセミナー「Hexagon運転・保全DXカンファレンス」を開催する。
Hexagon運転・保全DXカンファレンスでは、石油化学プラントでDXを推進する企業が導入事例や成果を紹介するとともに、セッションや展示エリアを通じてHexagonの最新ソリューションを紹介する。袴谷氏は「今回のセミナーでは、デジタルアセット管理の重要性、プラントDX推進における課題と解決策、スモールスタートでの段階的DXアプローチ、AIの活用事例など、幅広いプログラムを用意しています。石油/化学業界におけるDXの最新動向とHexagonの具体的なソリューションについて、より深く理解できる絶好の機会となります。ぜひご参加ください」と呼びかけた。
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提供:Hexagon
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年10月7日