組み込み/IoT分野で多数のソリューションを持つDTSインサイトが新規事業として立ち上げた建設業界向けのデジタルツインダッシュボード「サイトダイバー」。その新機能に求められるAI開発の早期立ち上げに貢献しているのがハイレゾのGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」である。
AI(人工知能)技術の進化はとどまることを知らない。生成AIの登場によってそのスピードはさらに加速しているといっても過言ではない。
このAI技術に対して、特に期待が高まっているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の後押しだ。多彩なアイデアを打ち出したスタートアップの起業、あるいは伝統的な企業における新規サービスの創出など、AI技術はビジネスに新たなチャンスをもたらす。生産年齢人口の減少に伴う地方経済の衰退や、あらゆる業界で深刻な問題となっている慢性的な人材不足など、閉塞感に包まれた日本国内の産業活動にも活力を生み出すと考えられる。
そんなAI技術の大きなポテンシャルに着目し、新規事業の立ち上げに果敢に取り組んでいるのがDTSインサイトのソリューションビジネス部※)である。同社は組み込み技術を強みとし、車載や医療、放送などの分野における機器/システム開発を主事業としてきた企業だ。近年ではIoT(モノのインターネット)システムソリューションに力を入れ、製造業やサービス業のさまざまなビジネスをトータルにサポートする体制を拡充してきた。
同社 事業本部 ソリューションビジネス部 営業の谷垣信介氏は「2024年4月設立の当部は、既存の事業領域とはまったく異なる建設業界のお客さまに向けたソリューションを開発/提供し、ゼロベースで市場を開拓していくことをミッションとしています」と語る。
※)部署名は2025年3月時点のもの
現在、ソリューションビジネス部が開発に取り組んでいるのは、「サイトダイバー」という建設業界向けのデジタルツインダッシュボードである。
谷垣氏は「もとより現場作業者の高齢化や人手不足が慢性化していた建設業界ですが、2024年4月1日に施行された働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる『建設業の2024年問題』により、悩みはさらに深刻化しています。一方で国土交通省は、建設現場をオートメーション化する『i-Construction 2.0』構想を推進し、2040年度までに建設現場における3割の省人化、生産性1.5倍向上を実現し、人手不足を解消するとともに働き方改革を推進していこうとしています。端的に言えばサイトダイバーは、こうした建設DXの新たな潮流に対応するためのソリューションです」と述べる。
サイトダイバーを用いることで、建設物のBIM/CIMのデータや3Dモデル、現場に設置した監視カメラのリアルタイム映像を1つの画面内に表示し、計画と実績との差を一目で把握することができる。その他のIoTシステムを通じて収集したセンシングデータや、天気情報サービスと連携した現場周りの状況なども集約することが可能だ。「現場の熱中症指数を管理するアプリケーションなど別途導入済みのシステムがあれば、それらのデータをAPI連携で取り込めます」(谷垣氏)。
このように現場が知りたい、必要としているあらゆる情報を一元管理し、集約するのがサイトダイバーの特徴だ。複数システムの画面を切り替えることなく、必要な情報をダッシュボード上で俯瞰することができるのだ。
また、サイトダイバーはカスタマイズ性も非常に高く、DTSインサイトは顧客の要望をヒアリングした上で、さまざまな現場ごとに適したダッシュボードを作り込んで提供する。
もちろんこのダッシュボード画面は遠隔地の関係者とも共有することも可能だ。本社にいる施工部門の上長や、複数の現場を掛け持ちしている監督者は、その都度現地に赴くことなく、どこからでも現場の進捗状況や作業状況を把握できる。
なお、サイトダイバーの初期バージョンは2024年8月にリリースされたばかりだが、既に準ゼネコンを中心に採用が進んでおり、各社の配下のさまざまな現場で活用が広がっている。
DTSインサイトは、サイトダイバーのさらなる拡販に注力するとともに、さまざまな現場がより便利に活用できるダッシュボードへのエンハンスに向けた、新機能の開発も加速させている。その一環として検討を進めているのが、AI機能の提供だ。同社 事業本部 ソリューションビジネス部の森寛文氏は、「まずはカメラ映像に対して認識や判断を行う画像系AIを実装したいと考えています」と方針を示す。
前述した通り、サイトダイバーは建設現場に設置されたカメラの映像をダッシュボードにリアルタイム表示することで見える化はできているが、その見える化された内容に対して何らかの判断を下すためには人間が目視している必要がある。そもそも画面をずっと見続けているわけにもいかず、現場の課題解決や生産性向上に十分に貢献できているとは言い切れない部分もあった。
森氏は「そこで新たに画像系AIを提供すれば、建設現場のさまざまな持ち場ごとに、何人の作業者が配置されているのか、あるいは導入されている建設機械の動線がしっかり確保されているのかなど、ヒトとモノの検知や解析に役立てることができます。他にもアイデアは数多くあり、お客さまのニーズも調査しつつ、サイトダイバーの機能拡張に向けた検討を進めています」と説明する。
ただし、実際にこうしたAI機能の開発に臨むためには、乗り越えなくてはならないハードルがある。立ち上がってからまだ1年余りの新規事業組織であるソリューションビジネス部にとって、AI開発で必要となるハイスペックなGPUを搭載したサーバやワークステーションを自前で取りそろえることは予算的に厳しい。
メガクラウド各社がIaaSやPaaSなどのサービス形態で提供しているAIリソースを利用する手もあるが、それらは従量課金が一般的で、使えば使うほどコストが膨らんでいく。大量の画像データを学習させたAIモデルを完成させるまでに、どれくらいのコストを費やすことになるのか、見込みを立てることもできなかった。
そこで同社の目に留まったのが、ハイレゾが提供している「GPUSOROBAN」である。
「GPUSOROBANで驚いたのが、リーズナブルな料金です。通常、NVIDIA A100クラスのハイスペックなGPUリソースをメガクラウドから調達すると利用料が跳ね上がってしまいます。これと比較してGPUSOROBANでは、50〜70%も安い費用でGPUリソースを利用できるのです。そして決め手となったのが、月額の定額プランが用意されていたことです。これならば、あらかじめ立てた予算の範囲内で、技術者は誰にも気兼ねすることなく存分にAIモデル開発に取り組むことができます。また国内企業であるハイレゾならではの、日本語のサポート対応がしっかりしている安心感もありました」(谷垣氏)
こうして導入されたGPUSOROBANは、狙い通りにフル活用されている。
同社 事業本部 ソリューションビジネス部の西田翔馬氏は「GPUSOROBANは十分に満足できるパフォーマンスを提供してくれています。AIモデル開発には長時間を要するため、土日も含めて1週間連続で学習/検証プロセスを回すこともあるのですが、定額プランのおかげでコスト増を気にする必要がないのが助かります。メガクラウドと比べると機能が限られている分、価格に転嫁されており、フットワーク軽く試行錯誤しながらAIモデルを開発したいと考えるわれわれにとって、GPUSOROBANは最適なサービスだと実感しています」と強調する。
これを受けて森氏も、「おかげでAIモデルの開発は順調なペースで進んでいます。現時点では詳しい内容は明かせませんが、画像系を中心としたAI機能をいくつか検討中です。2025年度の早い段階でサイトダイバーに実装したいと考えていますので、ぜひご期待ください」と訴求する。
一方、より高度なGPUの処理性能を求める企業のニーズに応えるべく、ハイレゾではGPUSOROBAN自体の強化を進めている。2024年12月から提供を開始した新サービス「AIスパコンクラウド」がそれである。
DTSインサイトが導入したGPUSOROBANの現行サービスである「高速コンピューティング」では、NVIDIA RTX A4000やNVIDIA A100を搭載したGPUインスタンスを提供してきた。これに対してAIスパコンクラウドは、LLM(大規模言語モデル)やマルチモーダルAIなどの開発にも対応可能な、より高いAI処理性能を備えたNVIDIA H200を搭載したGPUインスタンスを提供している。
もちろんAIスパコンクラウドについても、メガクラウドの同等サービスと比べて70%以上もリーズナブルに月額の定額プランで利用できるのが魅力である。
ハイレゾは、2024年12月にAIスパコンクラウド用のデータセンターを香川県高松市に新設したが、これは香川県の「せとうち企業誘致100プラン」に基づく積極的な誘致活動の下、経済産業省からも「特定重要物資供給確保計画」の認定を受け、元々研究施設として使用されていた建物を改修し再利用したものである。
データセンターの建設コストを抑えるこうした取り組みも、高付加価値なGPUインスタンスを安価に提供できる背景となっているわけだ。石川県志賀町で運営している既存のデータセンターに、この香川県の新データセンターが加わったことで、GPUSOROBANのサービス提供体制は大きく増強された。また、ハイレゾは「AI計算力が世界で一番安い国・日本」を目指しており、新たなデータセンターの稼働はその実現に向けた重要な一歩となっている。
そんなハイレゾに対してDTSインサイトも高い信頼を寄せている。「ソリューションビジネス部として、今後もGPUSOROBANを最大限に活用することで、サイトダイバーを建設業界のメジャーなソリューションに発展させていきます」と谷垣氏は語り、今後の市場開拓と事業展開に向けた意気込みを示している。
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提供:株式会社ハイレゾ
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年6月6日