村田製作所が研究開発拠点に“動くセンサー”となる点検ロボを導入した理由巡回点検ロボット導入事例

労働力人口の減少が進む中、現場の効率化や省人化を目的として、設備点検業務の自動化を図るケースが増えている。その先進的な事例として、自社の研究開発拠点にロボットを導入した村田製作所、点検用巡回ロボット「ugo mini」を開発したugo(ユーゴー)および同拠点の総合設備管理を担うTMESの3者に、導入の効果や今後の展望を聞いた。

» 2025年01月22日 10時00分 公開
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 少子高齢化を背景とした労働力人口の減少による人手不足の深刻さは増している。1人当たりの業務効率化や人に頼らない働き方の必要性が高まっており、従来は労働集約的だった設備管理についても自動化や効率化を目指した取り組みが進められている。

 その先駆けとして注目を集めているのが、神奈川県横浜市にある村田製作所 みなとみらいイノベーションセンターだ。

管理面積の「倍化」を掲げ、設備管理DXを推進する村田製作所

横浜市にあるみなとみらいイノベーションセンター 横浜市にあるみなとみらいイノベーションセンター 提供:村田製作所

 2020年12月に開業した同センターは、村田製作所の基盤事業である通信、自動車市場に加え、エネルギー、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)といった新規市場向け製品の基礎研究、企画、デザイン、設計力の強化を目的とした関東最大規模の研究開発拠点だ。

 施設内には、同社初となる車載向け専用施設「MURATA みらい MOBILITY」や、子ども向け科学体験施設「Mulabo!」などを備えており、技術革新や新規事業の創出のみならず、地域社会への貢献も図っている。

 加えて、同社は設備管理の現場における効率性と管理品質向上を目指した設備管理DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しており、同センターはその実証拠点にもなっている。

みなとみらいイノベーションセンターの設備管理を担う村田製作所の芳賀勝海氏 みなとみらいイノベーションセンターの設備管理を担う村田製作所の芳賀勝海氏

 同センターの設備管理を担う、村田製作所 みなとみらいイノベーションセンター 管理部環境安全課 チームリーダーの芳賀勝海氏は「延べ床面積6万5000m2のセンターをこれまでのやり方で管理するとたくさんの人手が要ります。やみくもに人員を増やすことはできないため、1人当たりの管理面積を広げる必要があります。『管理面積の倍化』を目標に掲げ、先進的な施設管理の実現に向けて設備管理DXを推進しています」と述べる。

 IoT技術の導入により検針作業などの日常点検に要する時間を大幅に削減する取り組みが評価され、同センターは2023年に第17回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)で優秀FM賞を受賞している。

点検業務に特化したDXロボット「ugo mini」を採用

 村田製作所とともに同センターの設備管理を担っているのが、設備総合管理サービスを提供するTMESだ。1966年に東通メンテナンスとして設立された同社は、2014年に高砂熱学工業の子会社であった高砂エンジニアリングサービスと合併し高砂丸誠エンジニアリングサービスとなった。その後、2020年の社名変更を経て現在に至る。

ロボット活用の背景を語るTMESの鈴木基氏 ロボット活用の背景を語るTMESの鈴木基氏

 同センター以外にも村田製作所の設備管理を担っているTMESは、人手不足への対応や業務効率化、サービスの質向上を目的にロボット活用の検討を始めた。複数のロボットを比較した結果、ugo(ユーゴー)が開発する自律走行と遠隔操作が可能な業務DXロボット「ugo」シリーズに白羽の矢が立った。

 TMES 執行役員 技術本部長の鈴木基氏は「高価で高度な機能を持つものよりも、使いやすさや現場への導入のしやすさを重視しました。将来的には複数の拠点への展開や1つの現場で複数台のロボット導入を視野に入れており、そうした点でugoさまと考えが一致しました」と語る。

 ugoは2018年に創業した、業務DXロボットの開発企業だ。「人の負担を減らすロボットを開発したい」という思いを原点に、国内でロボットの開発から量産、アフターサポートまでを一貫して対応できる体制を整えている。これまでに主に警備用途の「ugo Pro」などを開発し、その技術を点検業務に応用してほしいという顧客の声に応える形で、より小型で安価な「ugo mini」の開発に至った。

用途を設備点検業務に特化して開発した「ugo mini」 用途を設備点検業務に特化して開発した「ugo mini」。伸縮自在なテレスコピックポールを備えている[クリックで拡大]提供:ugo

 ugo miniは製造工場やデータセンターなどの機械室や電気室、空調設備などの設備点検業務に特化したモデルだ。コンパクトながら、62〜186cm(伸縮機構初期位置〜延伸位置)まで伸縮自在なテレスコピックポールを備えており、カメラの向きも上下に調整でき、広範囲のモニタリングが可能だ。

 さらに、ギアを使用しない高出力なダイレクトドライブモーター駆動を採用し、スムーズかつ静かな走行を実現している。

 ugo miniは、GMOグローバルサイン・ホールディングスが提供する画像解析AIでメーター値を読み取る「hakaru.ai(ハカルエーアイ) byGMO」と連携し、カメラで読み取ったアナログメーターとデジタルメーターの数値をデジタルデータとして記録することも可能。そのデジタルデータはugoが提供するロボット統合管理プラットフォーム「ugo Portal」上でいつでも確認できる。

ugo miniの特徴を説明するugoの中川健太氏 ugo miniの特徴を説明するugoの中川健太氏

 ugoの執行役員COOの中川健太氏は「TMESさまにはプロトタイプの段階からugo miniを現場で運用いただき、さまざまなご意見を製品開発にフィードバックしてきました。コンパクトでありながら多機能かつ柔軟性に富んでおり、人の負担が多くなりがちな点検業務の効率化を支援します」とugo miniの特徴を説明する。

 レポート自動生成機能を利用すれば、必要な業務報告をロボットから自動的に受け取ることもできる。さらに、2024年8月にはLiLzと業務提携をしており、今後はクラウドベースの点検AIサービス「LiLz Gauge」との連携により異常検知機能も実装予定だ。

人間の五感点検を補完する手段も同時に思考

 現在、ugo miniは同センターの設備機器が集約されている地下の機械室で活用されている。1日1回、午前10時に自動で起動し、機械室内を自動走行して約1時間の巡回点検を行う。

 点検内容は、搭載カメラを用いたアナログメーターおよびデジタルメーターの数値読み取り、異常の有無を見るための設備機器の撮影で、点検箇所は約50カ所に及ぶ。

テレスコピックポールを伸ばして機械室を巡回するugo mini。点検箇所は約50カ所に及ぶ テレスコピックポールを伸ばして機械室を巡回するugo mini。点検箇所は約50カ所に及ぶ[クリックで拡大]

 撮影された画像はリアルタイムでクラウドに送信され、ugo Portal上で確認できる。防災センターに常駐するTMESの担当者は、ugo Portal上で画像や数値を確認し、異常を発見した場合は即座に現場に向かう。

 メーターの位置など撮影ポイントはそれぞれ異なるが、あらかじめ走行ルートやテレスコピックポールの高さを設定することで自動対応が可能だ。これらugo miniの業務フローや自動化プログラムの作成、変更は、ugo Portalを通じてノーコードで簡単に行える。

搭載のカメラでメーターを読み取るカメラからの映像はリアルタイムで確認可能だ 搭載のカメラでメーターを読み取る(左)、カメラからの映像はリアルタイムで確認可能だ(右)[クリックで拡大]
ロボットによる五感点検の代替について語るTMESの南平修二氏 ロボットによる五感点検の代替について語るTMESの南平修二氏

 さらにフィールドテストの一環として、外付けのサーモカメラを活用した異常検知にも取り組んでいる。

 TMES 理事 DX統括部長 兼 データサイエンス室長の南平修二氏は「人間の五感点検をどのように代替するのかは、点検業務にロボットを導入する上で大きなテーマです。例えば、過負荷によるモーターの発熱などは、これまで人が実際に手で触れて検知していましたが、サーモカメラを使うことで可視化できるようになります。五感点検をそのままロボットで再現することは難しいため、視点を変えて補完する手段を考えることが重要です」と述べる。

ugoの白井謙友氏 ugo miniは動くセンサーと話すugoの白井謙友氏

 これに関して、ugoの執行役員 CCOである白井謙友氏は「ugo miniにはさまざまな点検環境に対応できるオプションを用意しています。ugo miniに環境センサーを搭載することも可能ですし、将来的にはBluetooth連携でさまざまなセンサー機器からデータが取得できるようになる予定です。ugo miniを『動くネットワークカメラ』や『動くセンサー』と考えていただくことで、活用シーンも広がります」と語る。


ugo miniの導入で7割程度の省人化を達成

TMESの遠藤氏はお客さまがugo miniを見て喜んでくれると話す TMESの遠藤氏は、お客さまがugo miniを見て喜んでくれると話す

 同センターでugo miniの運用を担当するTMES 事業本部 横浜支店 副支店長 兼 みなとみらい事業所長の遠藤浩一氏は、導入後の効果について「7割程度の省人化が図れた」と述べる。「人間が点検すると感覚的な違和感からチェックが長引いてしまうこともあります。ugo miniなら、1回の点検ごとに30分程度の時間短縮が図れています。データの転記作業やレポート作成なども不要です。何より、センターに来たお客さまがugo miniの働きを見て本当に喜んでくれるので、われわれも張り切っています」と実感を語る。照明の明かりがなくても走行できるため、省エネにも貢献する。

 これらのフィールドテストを通して、蓄積した時系列のデータを利用した異常検知や環境の最適化の可能性も感じられたという。

 鈴木氏は「従来の点検頻度はあくまで人間が行うことを前提としたものであり、今後、ロボットを活用することで頻度を高めることも可能になります。より詳細なデータを得られれば、これまで点でしか見えていなかった情報が線でつながり、不具合の兆候を捉えたり、将来的な予測を行ったりすることが可能になります」と述べる。

目指すは現場の負担減、他拠点や工場への横展開が目標

 村田製作所としては、同様の取り組みを各地の工場にも横展開していきたい考えだ。自身も工場勤務経験のある芳賀氏は「仲間たちはビルとは比較にならないほど過酷な工場の機械室で設備点検業務を行っています。ここで得られた知見をそのような現場にも反映して、ugo miniを導入していきたい。後輩たちには機械の点検に代わる、もっと高度で楽しい仕事に挑戦してもらいたいです」と述べる。

 南平氏は「われわれが重視しているのは、人が行っていた業務を単にロボットに置き換えることではありません。ロボットを活用することで業務を効率化し、より高い付加価値を持つサービスを提供することが重要だと考えています。それが結果として、お客さまに提供するサービスの質向上につながります」と強調する。

 これらを受けて中川氏は「ugo miniは2025年1月から本格的に展開を進めますが、われわれも皆さまの期待に応えるため、自動走行やメーター撮影など、基本機能の作り込みにさらに磨きをかけていきます。同時に、日々のフィールドテストを通じて現場で必要だと判明した機能は、ソフトウェアのバージョンアップで迅速に対応していきます。この2つを着実に進めることで、現場で本当に役立つ製品を確実にお届けできると確信しています」と抱負を語る。


 労働力不足が進行するなか、限られた人材をより高度な業務に割り当てたいという思いは、どの現場においても共通だ。設備点検業務における省力化を目指すのであれば、現場の要望を反映した点検業務ロボット「ugo mini」が心強い味方となってくれるだろう。

左からugoの白井氏、中川氏、村田製作所の芳賀氏、TMESの鈴木氏、南平氏

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提供:ugo株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月21日