映像系サービスやコンサルティングを行うマウントキュー株式会社の協力の下、映像制作ソフトウェア「DaVinci Resolve Studio」とデル・テクノロジーズの最新モバイルワークステーション「Dell Precision 5690」を用いて各種処理パフォーマンスを徹底検証した。
今やYouTubeをはじめとする動画コンテンツは生活やビジネスに深く浸透しており、プロアマ問わず多くのクリエイターが活動している。彼らは普段どのような機材を使っているのだろうか。撮影から編集、アップロードまで全ての作業をスマートフォンのみで完結させているYouTuberも多いと聞くが、ビジネス分野の本格的な映像制作に関してはデスクトップ型ワークステーションが主流だ。
ところが今、映像制作の環境に大きな変化が起きている。長年にわたってTV番組制作などに携わり、現在は自ら創業したマウントキュー株式会社のテクニカルディレクターとして映像業界にさまざまなサービスを提供し、またDaVinci Resolve認定トレーナーでもある山本久之氏は次のように語る。
「最近、処理能力の観点から懐疑的に見られていたモバイルワークステーションを積極的に活用するクリエイターが増えている。これまで主流だったMacではなくWindows搭載マシンを選択するケースも目立っている」
Windows搭載のモバイルワークステーションは映像制作の現場で通用するのか。昨今の映像制作のトレンドを裏付けるべく、山本氏の協力を得て検証を行った。
検証に用いたのは、2024年5月に発売された16型モバイルワークステーション「Dell Precision 5690」と2022年4月に発売された17型モバイルワークステーション「Dell Precision 5770」だ。両モデルともOSに「Windows 11 Pro」を採用している。
Dell Precision 5690は、CPUにAI(人工知能)演算能力に優れたNPU(Neural Processing Unit)を搭載する「インテル Core Ultra プロセッサー」を採用し、GPUは「NVIDIA RTX Ada世代」を選択可能なメインストリーム向けのマシンだ。最大構成では「NVIDIA RTX 5000 Ada世代」を搭載できる。今回の検証ではCPUが「インテル Core Ultra 9 プロセッサー」、GPUが「RTX 4000 Ada世代」で、メモリが64GB、SSDが2TBのマシンを用いた。
Dell Precision 5770の検証マシンは、CPUが「第12世代 インテル Core i9 プロセッサー」、GPUが「NVIDIA RTX A3000」で、メモリが32GB、SSDが480GBだ。
検証に用いたソフトウェアは、映像制作の現場でデファクトスタンダードとなっているBlackmagic Designの「DaVinci Resolve Studio 19.0.1」(以下、DaVinci Resolve)だ。「検証では、CPUとGPUにとってかなり高負荷で過酷とも言える7つの処理を実施した。これらは、われわれが映像制作用の環境を評価する際に普段から行っている内容とほぼ同じものだ」と山本氏は補足する。
検証の条件は以下の通りだ。
また、以下のセッティングポリシーに基づいて各マシンを設定した。
1つ目の検証はタイムラインでの再生能力だ。XAVC形式の4K解像度の映像素材を用いて、コマ落ちを軽減する処理がかからないColorページで最大再生フレーム数を確認したところ、Dell Precision 5690とDell Precision 5770は59〜60fpsの性能を示した。「この検証ではCPUの処理性能を確認した。一般的な動画再生のフレームレートは30fps程度なので、どちらも必要十分な処理能力を発揮している」と山本氏は評価する。
2つ目の検証では「スーパースケール」処理を実施。1つ目の検証で読み込んだ映像素材を4倍サイズに拡大する際の性能を測るもので、Dell Precision 5690もDell Precision 5770も1fpsの性能を示した。「解像度が低い過去の映像などを単純に拡大すると品質が低下してしまうため、AI処理で高品質な状態を維持して拡大できるスーパースケール処理を施すことがある。GPUとNPUの性能に大きく依存する処理で、どちらも実務に十分堪える性能を発揮できた」(山本氏)
3つ目の検証は「オプティカルフロー」と「スピードワープ(画質優先)」処理だ。読み込んだ映像素材に対してスローモーション処理を行うもので、スーパースケールと同様にAI処理を施すことで高い映像品質を維持できる。この検証ではDell Precision 5690が6fps、Dell Precision 5770が3fpsという結果を示した。「GPU性能による差が出た。この処理は本来撮影時にカメラで行うものだが、後処理で対応するケースもある。NVIDIA RTX Ada世代を選択できるDell Precision 5690の優位性が結果に表れている」(山本氏)。なお、「Apple M3 Maxチップ」を搭載した「MacBook Pro」で同じ検証を実施したところ、結果は2fpsだった。
4つ目は「UltraNR」を使ったノイズ除去処理の検証だ。DaVinci Resolveで最も重いといわれている処理で、結果はDell Precision 5690が2fps、Dell Precision 5770が1fpsとなった。ここでもGPU性能の差が示された。「UltraNRは夜間やライティングのない所での撮影などでノイズが混入してしまった映像からノイズを除去するもので、使用頻度が高い機能だ。大量の撮影素材が対象になることもあり、できるだけ高速な処理が求められる。NVIDIA RTX Ada世代を搭載できるDell Precision 5690の強みが結果に結び付いた」
5つ目と6つ目の検証はEditページで背景となる4Kの映像ソースを4枚配置し、その上にそれぞれテロップを追加するというもので、合計8ソースを再生した際のパフォーマンスを確認した。5つ目の検証ではGPU処理を伴うText+モジュールで文字要素を追加。6つ目の検証ではGPU処理を使用しないTextモジュールで文字要素を載せている。
5つ目の検証結果は、両マシンともに59.94fps(コマ落ちあり)。6つ目の検証結果は、Dell Precision 5690が11.5fps(コマ落ちあり)、Dell Precision 5770が9fps(コマ落ちあり)と差が出た。「リアルタイム性を確認するためのかなり過酷な条件での検証だが、いずれの結果も実務で十分に使えることが分かった。特に、CPUだけを使用した6つ目の検証で、インテル Core Ultra 9 プロセッサーを搭載するDell Precision 5690の実力が発揮された」
最後、7つ目の検証が4枚のテロップ背景/4ソースでのメディアファイル書き出しだ。5つ目の検証で使用した要素を画面合成した後、Deliverページからファイルに出力されるまでの時間を測定した。Dell Precision 5770は84秒だったのに対し、Dell Precision 5690は49秒と大幅に処理時間が短くなった。「成果物をファイルに書き出す処理は映像制作で必ず行われるため、パフォーマンスは重要な指標になる。GPUによるエフェクト処理、CPUによるデコード/エンコード処理など多岐にわたる処理を実行しており、Dell Precision 5690の総合力の高さが実証された」と山本氏は評価する。
高負荷処理を実行した際のファン音や熱については「ほとんどストレスを感じることはなかった」(山本氏)という。Dell Precisionシリーズのモバイルワークステーションは高度な熱設計と最適化ソフトウェアによるパフォーマンス制御によって処理内容に応じた快適な作業環境をもたらしてくれる。
検証を通じて、山本氏はモバイルワークステーションに対する印象が大きく変わったという。「Dell Precision 5690でのDaVinci Resolveの操作感はデスクトップ型ハイエンドマシンと遜色なく、ストレスを感じることはほとんどなかった。映像制作、編集といった用途でもWindows搭載モバイルワークステーションが十分に選択肢になり得ることが分かった」
Dell Precision 5690の魅力について、山本氏は「質感や重厚感といった意匠に加えてキー入力のしやすさ、剛性や堅牢(けんろう)性といったモノとしての品質の高さに驚いた。約2kgというスマートな筐体ながらThunderbolt 4ポートを2つ搭載するなど拡張性に優れている点も見逃せない。16型液晶パネルも高品質で、アスペクト比16:10の表示領域の広さは映像を扱う上で非常に役立つ。Dell Precision 5690を開けば、いつでもどこでも、そこが自分のスタジオになる」と太鼓判を押す。
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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月27日